ホール班
文化祭三日前。いよいよ学園全体でお祭りの雰囲気が漂いはじめる。
「おらそこー。そこの装飾少なくないかー? もちっと増やせー」
「おい。なんでお前は工事の現場監督みたいになってるんだよ。おじさんみたいだぞ」
「何だね園山工作員」
「俺工作員なの!? つか意味分かってて言ってる!?」
そして俺達のクラスも、準備を始めていた。
「うーむ……」
「どうした北崎」
「いやさ。重大かつ致命的な事項を決めてなくてね……」
「何かあったっけ?」
「メニュー」
「……あー」
確かに決めていない。というか、北崎に決める気はなかったらしい。
「あ、でも調理班が決めてるんじゃないのか?」
「あーそうか。聞いてみよ」
そう言って調理班の集まっている所に向かっていった。
「……つーか……」
ホール班って何すりゃいいの?
「で、メニューは決めてあったと。ていうか、決めてくれたと」
「うん。と言うわけで、ミソラ達ホール班は前日に買い出し……」
北崎が俯いて考え込む。
「どうした?」
「いや、……うん、加工品は明日、野菜類は明後日買ってきて貰うよ。特に一日中準備となる明後日は混むから早めに行くこと!」
「へいへい。で、他にすることは?」
「接客の練習してなさいよ」
「あー……はいよ。ホール班、集まってーっていうかなんで俺リーダーになってんだろ。まあいいや、接客の練習するぞー」
ホール班の連中が集まってくる。因みに、鳴神は装飾班。
「なんでキリアがホール班なんだろうな……」
「そりゃミソラ。キリア顔いいからね。そういう面ではセイラもいいんだけど、あの子接客無理だしね」
「おい。俺も無理だと思うんだが」
「男はクールでもいいんだけどね、セイラがホールやると特定の層しか来ないから。私そういうの狙ってないし」
「はぁ……。まあいいだろ。で、ミソラ。具体的に何するつもりだ?」
「ん? ああ、じゃあまずは挨拶からなー」
「やべぇ。なんで俺完全に班長になってるんだ……」
班長とか決めてないのに。
「いいだろ別に。それよりホラ。さっさと帰って夕飯作れよ」
「偉っそーに……」
キリアと下校し、夕飯を作る。
「うーむ……」
「なんだ」
「いや、最近椎名見てないじゃん? 大丈夫かなーと思って」
「休んで四日だろ? 風邪だってたまにそれくらい休む奴いるぞ」
「まあ、そうかな……」
悩んでも仕方ないので、携帯から椎名のアドレスを呼び出す。学校に来るまでは止めておこうかと思ったが、ちょっと心配なので掛けてみた。
『あい。何の用かしら?』
「おう。椎名か、ってまだ微妙に風邪声だな。大丈夫か?」
『熱自体はもう下がったんだけどね。ちょっとまだ喉痛くて。学校には行けると思うわ』
「そうか……あんま無理すんなよ」
『あんたに言われるとは心外だわ。まあその言葉、ありがたく受け取っておくわ』
「おう。じゃあな」
『学校でね』
通話が終了した。
「学校には来られるようだな」
「ああ。まあそろそろ出てこないと生徒会もまずいだろうしな」
「確かにな」
キリアは早々に夕飯を食べ終えると、さっさと部屋に行ってしまった。どうせ寝るのだろう。
「明日も準備で疲れるだろうし、俺も寝るかな……」
食器を片し、部屋へ入って軽く明日の準備をする。
そんな時、一件の着信が着た。
「ん? 北崎からか」
メールを確認する。
『ねーもう一個決めてないのあったんだけどさ。店名どうしようか』
それも決めてないのか……。
『いや俺そういうの苦手だし。てかそれくらいお前が決めろって』
するとしばらくして返信が来た。
『つれないなぁー。ま、いっか。セイラ辺りにも聞いてみるよ』
『おう。一応決まったら教えてくれよ』
『はいよ。じゃまたね』
携帯を閉じ、机の上に置く。
「……寝るか」
少し早いが、布団に潜る。