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料理マウントの夫を処す――家政婦は私の味方です(旧:あなたの料理は未完成です――浮気夫に捧げる最後の仕掛け)  作者: 紡里


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2/3

別荘の中

 俺に通話が切れたスマホを押しつけ、親友は噛みつくように言った。

「おい、鍵開けろ」


「え、いや……。今、既に臭いのに、開けたらもっと……」

 妻が言っていた「サプライズ」とは何だろう?

 嫌な予感がする。特に、親友に見せてはいけないような――


「開けろって言ってんだろ」

 親友の声が大きくなる。


 こうしているうちにも残照が消え、いつもなら庭を照らす灯もつかない。

 これ以上暗くなったら、鍵穴も見えなくなる。


 仕方なく鍵を差し込み、暗証番号を入れる。開けたくないのに……。


 息を止め、思い切って扉を開ける。

 もわっと異臭が漂い、大量のハエが飛び出してきた。

「うわぁ!」


 案の定、耐えられないほどの臭気に襲われる。

 手で口元を覆っても、何の役にも立たない。

 異臭にやられたのか、目が痛くなってきた。


 管理人が空気の入れ換えと簡単な掃除をしているはずだった。

 たまに来ても、締め切った家の湿っぽさや埃臭さなど、感じたことがなかったのに――



 足元を照らす常夜灯がついていないため、中も真っ暗だ。

 玄関にスイッチがあるはずだが、いつも使用人がやってくれるから場所がわからない。

 勘を頼りに手探りで探す。

 途中で何か妙なものを触った気がして、背筋に怖気が走った。


 なんで、こんな不快な思いをしなければならない?

 陰険な妻に怒りが積もっていく。金持ちで大人しいのが取り柄だろうが。

 俺をコケにするなんて許さない。


 何かに腕がぶつかり、それが落ちて割れた。思わず舌打ちしてしまう。


「ちょっと、何やってんのよ」

 幼なじみがキツい言葉を投げつけてくる。

 あれ? イライラしているのか……いつもなら、もっと可愛く怖がるはず。


「お前、馬鹿か。スマホのライトを使えよ」


 あ、確かにそうだ。

 だけど、そう思うなら、もっと早く言えよ。


 おしゃれな家は、スイッチも壁と調和して目立たない。

 くそ、分かりにくいんだよ。


 パッと玄関が明るくなった。

 暗い中で緊張していたからだが、ほっと緩んだ。


 親友は俺を突き飛ばすようにして、中に入った。ハンカチで口と鼻を覆い、土足で二階に駆け上がる。

 寝室に向かっているのだろう。


 慌てて追いかけた。

 妻は、一体、何をしかけたんだ?


 幼なじみは口元を腕で隠し、悪臭で入れないと泣き言を言って、玄関に立ち尽くしていた。



 廊下の電気もスイッチが見つからず、スマホを頼りに階段を上る。

 俺たちの主寝室の扉から明かりが漏れているので、階段の上の方は安心して歩けた。


 親友が寝室で声もなく、立ち尽くしている。


 その背中が、怖い。

 そもそも、なんで寝室に親友と幼なじみを入れようとする? 夫婦のプライベートな空間だろうが。



「ど、どんなサプライズだった?」

 場違いなのはわかっているが、明るく話しかける。そうすることしか、できなかった。


 部屋には、俺と幼なじみが絡み合っている写真が壁一面に何枚も、何枚も……。


 バレていたのか!

 なら、なんで言わない?

 どういうつもりで――


 のんきに階段を上がってくる足音がする。

「最悪ぅ。あたし、掃除なんか手伝わないからねぇ」


 あれ、キャラが違う……? しおらしく「皆でやれば、すぐきれいになるよ」とか言うところだろう?



「裏切ったのか!」

 振り返った親友は激怒していた。俺たち二人を睨みつける。


「はあ? いきなり何よ」

 幼なじみのはすっぱな口調に、俺は驚いた。

 なんだか、おかしい。


 妻は腹黒いし、幼なじみはアバズレのようだ。



 幼なじみは部屋をのぞきこんで、事態を理解したようだ。

「嘘!

 あ、あの、そういうんじゃないのよ。

 あの女の嫌がらせ。そう、フェイク写真よ、こんなの」


「そういえば、高いバッグを持っていたな。あんなの、お前の給料じゃ買えないんじゃないか?」


「それは――。あ、あんたが買ってくれないから……」


「だから体を使って、そいつに買わせたのか?」


「違うわ! あの女がいい気になっているから、ちょっと身の程をわきまえさせるために……」


 二人は俺を置いてきぼりにして、喧嘩をしている。


 だが、聞き捨てならない言葉があった。

「バッグ目当てだったのかよ。

 そいつより俺の方がいいって言ってたじゃないか」

 俺は親友の鼻を明かしてやりたかっただけだ。

 ほんの少しの優越感――


「そんなこと言ってない!」

 幼なじみは親友に向かって、俺を否定した。


 ああ。なんてひどい女なんだ。

「いいや、言ったね。学生時代から俺のこといいと思っていたって。

 でも、強引にアプローチされてほだされた。愛というより情だとさ」


「はあ? なんだお前ら。俺のこと二人して馬鹿にしていたのか」

 親友が割って入ってきた。


「ち、違う。私は悪くない。そう、襲われたのよ」

 俺を指差して、悪者にしようとしている。


「お前、なにを言い出すんだよ。お前が誘惑してきたんだろう?」

 ふざけるな。お前のせいで、妻を怒らせたんだぞ。


「どっちだっていい。浮気、したんだな」

 親友はドスの利いた声を出した。


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