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料理マウントの夫を処す――家政婦は私の味方です(旧:あなたの料理は未完成です――浮気夫に捧げる最後の仕掛け)  作者: 紡里


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料理するなら片付けろ

小説サイトの宣伝で、翻訳された韓国の小説をいくつか読みました。

そういうテイストに挑戦したら、こんな感じに仕上がりました。

 夫が好きなホームパーティ。

 呼ぶのは夫の親友たち。準備も片付けも、やるのは妻である私。

 実際にはお手伝いさんにやってもらうにしても、指示を出さなければいけない。


「気が効かない嫁だな。ケータリングばかりで、手料理が一つもないなんて」


 夫は親友たちの前で妻をこき下ろす。


「先月の俺のアクアパッツァを見習えよ」

 先月は車で三時間ほどの距離にある、別荘でパーティーをした。


「ほんと、そうよね」

 夫の幼なじみだという女が嘲笑う。手土産一つ持ってきたことのない女が――。


「これから移動して、仕切り直すか」

 夫は運転手の田中を呼びつけた。

 私のことは当てつけるように、無視している。



「でしたら、この料理をお持ちになりますか?」

 私はため息をこらえ、妻として声をかけた。


「そんなのいらねぇよ」


「きゃー、貧乏くさい。本当にお金持ちなの?」

 女は夫の腕を叩き、優越感にまみれた顔で私を見た。


「奥さんも、もうちょっとこいつの心をつなぎ止める努力をしないとなぁ」

 馴れ馴れしく、女の恋人という男が私の肩に手を置いた。

 この男は高校で夫と知り合い、親友になったという。


 三人が仲良く騒ぎながら出ていった。


 私は男に触られた肩を手で払う。

「もう、無駄な努力なんてしないわ」

 そう呟き、スマホを手に取った。



 恋愛結婚は、熱が冷めたらどうなるのだろうか。

 家族になる人もいれば、別れを選ぶ人もいるだろう。

 他に恋愛を求めながら、結婚という契約をずるずるつづけて利益だけを享受する?


 それは、許せない。

 許せる人も、諦める人もいるだろうが、私は許さない。


 更に侮辱して喧嘩を売ってきた。

 もう容赦はしない。喧嘩上等。

 さあ、金持ちのお嬢様の喧嘩を体感せよ。




 昼過ぎに都心を出て、日が暮れる頃に別荘に着いた。

 途中、隠れ家レストランに寄り道をしたためだ。


 別荘に入る私道の前で、車から降ろされた。

「夕暮れ時の小道は、たいそうロマンチックでございます。

 どうぞ、散策がてらお楽しみください」

 丁寧にドアを開けて、お辞儀された。


 面倒くさいから別荘まで送れと言いたかった。だが、幼なじみがその気になってしまったので、物わかりがいいふりをする。


 幼なじみは建前上の恋人と腕を組んで歩き、俺は手持ち無沙汰になった。

 ちっ、面白くない。


 だが余裕のある俺は、こんなことでは嫉妬しないのだ。

 後日、この男を馬鹿にしながら、幼なじみを抱くのが楽しみだ。盛り上げるスパイスになるだろう。



 ふと、何か臭う気がする。

 それは別荘に近づくにつれ、強くなっていった。


「なんか臭~い」


 正直、玄関の扉を開けたくない。


 このあたりでは堆肥を撒いている農家がいるが、その比じゃない。

 金を掴ませてやめさせろと言ったのに、「その季節は来るのをやめましょう」と見当違いなことを言われたんだよな。

 まったく、役に立たない金持ちだ。



 管理人に電話をかけたが、つながらなかった。


 仕方なく、妻に電話をかける。


「……はい。どうしましたか?」


「どうしましたかじゃねぇよ。別荘に来たら、臭いんだ」


「あなた、先月の料理の後片付けはしましたか?」


「そんなのしてないよ。管理人かお前がやるもんだろう」

 何を勘違いしているんだか。作ってやったんだから、感謝しながら片付けろ。


「なぜ? あなたが『今回は自分が料理をする』と豪語されたのですよね」


「ってことは、掃除してないのか。

 図に乗るな。俺を怒らせるなよ」


「あなたは家事を軽んじ、料理の腕を自慢なさいます。

 ですが、後片付けまでして初めて料理をしたと言えるのです。

 私を家事もできない女と馬鹿にしたのですから、完璧な家事を見せてくださらないと」


 スマホ越しの妻の声は冷え冷えとしていた。ちょっと焦る。


「おいおい、俺があのとき、幼なじみを見習えって言ったから拗ねてるのか。

 妻はお前なんだから、どーんと構えて聞き流せるくらいじゃないと」


「……」


 返事が返ってこない。そろそろ「ごめんなさい」と言ってくるはずだろ?

「サークルで仲良くなったきっかけも、お前が冗談なのに泣き出して、俺が慰めたからだったよな」


「ネタにされた当人が笑えないものは、ジョークと呼ばないそうです」


 なんだかやばい雰囲気だ。マジで怒らせたか?

「ちょっと、からかっただけじゃないか。そんな本気に取らなくても……」


「私のことをジョークも理解できないと、何度も笑いましたね。

 わかった上でのご発言と見なして、全力で応じます」


「――つまり、あれから掃除していないということか?」


「あなたが片付けをしていないのであれば、そうですね」


「お前馬鹿じゃねぇの?

 一か月も放置するとか正気か。なんで早く言わないんだよ、性格悪いな」


「何度か話しかけましたが、その都度遮られて言えなかったのです」


 そんなの、くだらない世間話だと思うじゃん。


 言葉を失う俺に、妻は追い打ちをかけた。

「あなた方が残した料理は、確かにケータリングです。

 ですが、三つ星シェフに特別に作らせたものですよ」


 え、見るからに美味そうだったけど、そうなのか?

 早く言えよ。

 もったいないことをした。


「あなたたちが去ってから、使用人たちと昼食会をしました。

 たまには労いませんとね。美味しかったですよ」


 そんな感想は聞きたくない。

 俺だって隠れ家レストランに行ったんだ。いや、運転手が知っていたということは、妻も行ったことがあるかもしれない。


「ああ、今、この家の鍵とエントランスの暗証番号を変えていますので、ご帰宅なさらないでくださいね。

 エントランスで騒いだら、警備員が参ります」


「はあ? なんだよ、それ。俺を閉め出す気か?」


「堪忍袋の緒が切れましたので、あなたの有責で離婚します。

 引っ越し丸ごとセットで、あなたの荷物をそちらに運んでいます。

 二時間前に出発したので、あと一時間くらいで着くでしょう。そちらで待機していてくださいね。

 わざと受け取らなかったら、処分場に持っていってしまうかもしれませんよ」


「突然どうしたんだ? 俺を追い出す気かよ? 優しいお前には、そんなことできないよな」

 本気で離婚する気か。まずい。

 俺の有責ってことは、浮気がバレた?



「それから、鈴木さんに変わっていただける?」


 親友が怪訝な顔をして、スマホを受け取った。


「あなたもずいぶんと私を見下して、夫の浮気のアリバイ作りに協力なさっていたようね」


 やっぱり、バレていたのか。しかも親友に口裏合わせをしてもらったことまで……。


「い、いや、悪気はなくて。男には、そういう息抜きも必要っていうか――」

 親友は頭をかきながら、援護をしてくれる。


「夫婦の寝室を皆様でご覧になって。楽しいサプライズをご用意しましたわ。

 特に、あなた向けのメッセージに気合いを入れました。

 ――ご自分の行為がどんな意味を持っていたのか、思い知っていただきたくて」


「申し訳ないとは思っているが、頼まれたからやっただけで……」


「どうぞ、みなさま。ご自分の言動を振り返って、味わってくださいませ」


 ブツリと通話が切れた。

 薄暗くなっていく中、光を放つスマホを三人で見つめる。


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― 新着の感想 ―
おお、韓流ドラマのようなセレブのドロドロしたマウントですね。かつての日本のドラマは、嫁いびりにじっと耐えるパターンが多かったですが、意志の強い主人公が、自分の手できっちりやり返す所も韓国ぽいなと思いま…
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