王宮サバイバル ――女神は契約違反を許しません
「小説家になろうラジオ」大賞の「1,000字以下の短編」の応募用に書いた作品です。
聖女が現れたときは、王族と結婚しなければいけない。
だから王太子と結婚した。
彼は外見はいいが、中身がクズ。
結婚式の夜に、白い結婚だという誓約書にサインさせられた。立ち会いの司祭は、愛人の弟。
初夜の偽装もせず、愛人の元に行った。
私は王太子妃の部屋ですやすやと眠った。
朝、けたたましく駆け込んできた男がいる。
その顔には気味の悪い模様が浮かび上がっていた。私の呪いだろうって?
いいえ、それは女神の怒りです。
ご自分の前で宣誓した結婚を、蔑ろにされたから。
たかが聖女に、女神のお怒りを解けるとお思いですか?
神殿の古文書でも調べたらどうでしょう。
彼女の弟が司祭でしたね。頼んでみては?
子どもをどうするのか?
知りませんよ。
私とは閨をしないと、神聖誓約にサインさせたじゃないですか。
そちらを破ったら、今度はどんな神罰が下るでしょうね。
子孫を作れないから、王太子は辞退すべきでしょう。
王妃に呼ばれた。
なぜ、あなたの息子の尻拭いを私にさせようとするのですか。
私が心から許せば、女神の怒りが解けるはず?
本気で言っています?
ならば、一つだけ策を提供しましょう。
国王陛下もいるところで発表します。
さて。
王太子が私に白い結婚を強要して、愛人と子作りに励みました。
そこで女神のお怒りが二人に下りました。
二人が、痣が増えても励めばいいのです。激痛に耐える愛、素晴らしい。
それが嫌だとは、我が儘な。
王妃殿下は、私に「二人を許して」と女神に掛け合えとおっしゃいました。
そこで、提案です。
国王陛下が側室を迎えて、まともな子どもを産み、育てましょう。
王太子を見捨て、王妃には教育に口出しさせない。
そう、仕切り直すのです。
さあ、王妃よ。私に命じたように、お前も許すのです!
これで王妃と王太子妃、おそろいですね。
いえ、私は王子妃になるのかしら。
だって、「王太子」には、これから作る子どもが就くのですもの。
え、無理ですか?
許せないですか?
国王陛下、ぬか喜びをさせて申し訳ございません。
残念ですがこの血統は終わりです。
大公がいて、よかったですね。
女神と聖女の約束を軽んじるような、お馬鹿さんの繁栄なんて許されないんですよ。
大公が王位に着いたら、私はそのご子息と結婚しなくてはなりません。
そこの王太子と離婚はできませんから、お亡くなりになっていただく必要がございます。
ええ、離婚が許されないので、未亡人になって再婚です。
女神様はお厳しい方なので。




