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20代最後のゲイのエッセイ  作者: 湊 俊介


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初恋を拗らせたゲイの話④

いつの間にこんな所まで来たのか自分の選択なのに不思議に思う事がある。


全部を手に入れようと必死になってもがいていたのにいつの間にか馬鹿らしくなった。あんなに執着していた物が、無くても大丈夫なんだって気づいた。


そして全部手放した。手に入らなかったんじゃない。失ったんじゃない。自分の選択で手放した。


住み慣れた森の街を離れて、海の見える街に引っ越した。その海を見るとあの水平線の向こう側に何があるのか、どんな人が住んでいるのか、その人もこっち側の世界をそうやって見ているのかと想像する。


そんな事を何度かしているうちに、僕を縛り付けていた執着心とか見栄とか思い出とかそういったものが少しずつ水平線の向こうに流れていった。


そうして身も心も軽くなった。


不要な物だったとは言わない。無駄だったとは思いたくない。大切な思い出だ。


ただ、無くても大丈夫だっただけ。


無くても大丈夫だった物たちが無くなる事で僕の中にスペースができた。そこに置いた新しい物たちで今の僕は形成されている。


それはとてもシンプルな物たちで僕を疲れさせずに共存してくれている。


思い切って手放すことも人生においては大切だ。物でも、人でも、持ちすぎると余裕がなくなってしまう。


だけどこうしてたまに思い返して寂しい気持ちにもなる。あんなに僕を縛り付けていた[もの]たち。

そこに未練はきっと無くて、残るのはノスタルジックな気持ちだけ。

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