第10話 TE☆TSU☆YA!
あらすじ
野盗達はいつでも村を襲えるようにアジトでスタンバっていた。
しかしながら、なかなか話が進まず、ずっと待ちぼうけを食らっている間に眠くなってしまい、ついつい昼寝をしてしまっていた。そして、野盗達が昼寝している傍らで、ペロタンはファミコンをしていたのであった・・・
本編 刮目せよっっ!!
「ああ〜、つい寝ちまったぜ・・・」
野盗達が次々と目を覚ましたのを見て、ペロタンが声をかける。
「クズ共、ようやく起きたか!」
「て、テメェは村にいた・・・
なんでここが・・・?」
「俺の嗅覚は人間の一億倍だ。村にいた時からテメエら悪党の臭いがここからぷんぷん臭ってたんだよっ!」
「ぐはぁっ!」
言い終るや否やペロタンの拳が火を吹いていた。
運悪くペロタンの一番近くにいた野盗の頭がぶっ飛ばされ壁に激突して倒れ込んだ。
ペロタンは怒っていた。
「悪党の本分を忘れて村も襲わずアジトでグースカしやがって・・・
俺の見せ場がねぇだろうが!
仕方ねえからこちらから出向いてやればこのザマだ・・・
俺はお前達が起きるまでずっとファミコンをしながら待ってたんだぞっ!
オラァ!お前ら正座しろっ!」
ペロタンの剣幕と迫力に気おされた野盗達はペロタンの前に正座した。
「ひいぃ・・・痛えよぅ・・・」
「死なない程度に加減してやったんだ。ありがたく思え。さっさと正座しろっ!」
「ひいぃ・・・」
野盗の頭もペロタンに無理やり起こされて正座させられていた。
「おい、お前らの代表は誰だ?」
「は・・・はい私です。」
先程の一撃で実力の差を思い知らされた頭が遠慮がちに手を挙げた。
「じゃあお前が代表して俺の質問に答えろ!」
「は、はい・・・」
「じゃあ聞くぞっ!
お前らが間抜け面晒して寝てる間に俺が“たけしの挑戦状”を何回クリアしたか分かるかっ!?」
「え・・・」
全く話が飲み込めない野盗達は呆気に取られていた。
「なんでそんなクソゲーを・・・」
野盗の一人がボソッと言ったその言葉をペロタンは聞き逃さなかった。
「おい、テメェ今なんつったあぁっ!?」
「ヒィッ!」
「俺だってなぁ、ホントはこんなクソゲーじゃなくてスーパーマリオを持ってきたかったさ!でもな・・・この前タロウ君にスーパーマリオ貸したらぜんっぜん返してくんないんだよぉぉっ!
どうしようっ!ゲオに売られてたらっ!
どうしようっ!ゲオに売られてたらっ!」
その頃村では
「くしゅんっ!
あれ?風邪かな・・・
そういえばペロタンどこいったんだろ・・・」
借りパク犯の濡れ衣を知らないところで被せられていたタロウであった。
話は野盗のアジトに戻る。
ペロタンはスーパーマリオを借りパクした邪悪なるイマジナリータロウを思い出して怒りがヒートアップしていた。
「いいから質問に答えろやっ!クソがあっ!」
「さ・・・3回・・・」
「答えは・・・0回だよっ!バカ野郎ッ!!」
「え、今ならクリア方法もいくらでも検索して分かるはずじゃ・・・」
「Ⅱコンのマイクが使えなかったんだよ!オラァ!
Ⅱコンのマイク使えなきゃカラオケ屋で宝の地図がもらえないでしょっ!!」
野盗の一人がファミコンのⅡコンが壊れてないかを調べた。
「あれっ別にⅡコン壊れてないですよ!」
「じゃあなんでⅡコンのマイクを使わなかったんだ・・・」
野盗達がざわつき始めてしばらくしてから、ペロタンがモジモジし始めた。
「だ、だってさ・・・」
「だって?」
「お前達が気持ちよさそうに寝てたんだもん・・・」
それはペロタンの寝ている野盗達を起こさないようにした優しさであり、野盗達が初めて受ける人の優しさでもあった。
野盗達はみな孤児で、親を知らず、優しさを知らずに生きてきた。優しさを知らぬ者同士肩を寄せ合い絡まるようにして野盗に身を落として生きてきたのだ。
野盗達はペロタンの思いやり、優しさに大いに感動し、その薄汚い顔に美しい真珠の液体を流すのであった。
「これが涙・・・」
「これが優しさ・・・」
野盗達が口々に言いあう様子を見たペロタンは野盗の頭の肩に手を置き、優しく野盗達を諭すように言った。
「そう、これが優しさ・・・
あの有名なバラクーダ先生がウォーズマンに唯一教えられなかったことだ・・・
危なかったな、お前達、このペロタン先生が来るのがもう少し遅かったら、お前達も血の通わない冷たいファイティングコンピューターになってしまっているところだったぞ。」
「ペロタン先生!」
「ペロタン先生!」
野盗達が口々にペロタンの名を呼び、ペロタンの周りに集まった。
「まったくお前達は、産まれたての仔犬のように懐いてきやがって…
よし、アレをやるぞ!
お前達みんな外に出ろ!」
「はい!先生!」
空を照らしていた太陽は高度を下げ、空をわずかに赤く染めていた。
ペロタンは全員が外に出たのを確認してから皆に声をかけた。
「お前達ちょっと俺を中心に円を描くようにちょっと離れてろ。
俺がアレを言ったらお前達はアレを言いながら俺の周りに集まるんだぞ!」
「はい!」
「OK!いい返事だ!いくぞ!」
ペロタンは天を見上げて声を張り上げた。
「さんねぇんびぃぐみぃ!」
「◯んぱちせぇんせぇいぃ!」
生徒もとい野盗達が金ぱ・・・もといペロタン先生の下に駆け寄っていく。
もはや野盗達の目は台所の流しの三角コーナーの中身のようなゴミ溜めではなくなっていた。
クリスタルの輝きの瞳に囲まれるペロタン先生。
「おいおい、誰か先生にサングラスをくれよ。お前達の瞳が眩しすぎて見えねえよ!」
「先生!」
「先生!」
皆、笑顔であった。そして泣いていた。
この後、改心した野盗達は村の一員として受け入れられ、農業に励むのであった。




