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#4



 「今日は趣向を変えて俺のザ・地盤に連れてってやる。」

 「なんだよ、いきなり。」


 父は白石・刈田の選挙区で、白石で強い地盤をもち、刈田では日労の県議が強い地盤を持っている。


 白石の方は俺に任せとけ、と言われたので素直に従っていたのだ。


 「なぜお前の倅は挨拶に来ないのだと怒られて、、、」

 「全然まとめれてねぇじゃねえか!!」



 「皆様、自由民衆党から出ることになっております、父和義の息子、白咲義隆です。」

 「かえれー!!」

 「世襲が、かえれー!!」

 「どうせ金目当てだろ、かえれー!!」

 「七光が、かえれー!!」


 おいおいおやっさんよお。こいつはちと話が違うってもんよぉ。


 父は間違いなくここ白石で強固な地盤を持っている。

 それは間違いないだろう。父の呼びかけに集まってくれた人が何人いるんだろ。わからないけどたくさんいるんだ。


 「貴様、何のために国会議員になるんだ!!」

 「そーだ!! 中身がないのならたかねねと一緒だぞ!!!」


 会場に少しの笑いが生まれる。


 「私は、最初は、父に出馬しろと言われて出ることを決めました。」


 そういうと、会場の空気は一気に重たいものへと変化する。父の表情も、とても焦っているのだろう。

 そんな馬鹿正直に答えるバカがいるのか?

 このバカ息子が!? ってところか。


 「結局金か!」

 「呆れた。本当に呆れた。」

 「少しは期待してたのに。」


 「連日有権者の皆様から厳しいご指摘を受け続け、心が折れかけていたところでした。」


 「この程度で折れるようならやめてしまえ!!」

 「能無しボンボンが。金のための政治をするなら帰ってくれ。我々はそんな奴を国政の場に送りたくない。頼むから帰ってくれ。」


 「メディアに取り上げられている高峰候補に絶望していたのも事実です。」


 「ほーら、解散解散。聞く耐えんは。」

 「和義さんの息子だからきてやったのに。こんな倅で可哀想なこと。」


 「ですが、先日とある女性がこう言ってくれたんです。応援している。と。この言葉で、私の中に火が灯りました。」


 「遅いだろ!」

 「出馬決める前に覚悟決めろや!!」

 「今になってやる気が出たとか言うつもりか!!」

 「私たちをバカにしてるわけ?」


 だれもが怒る理由はわかる。

 これは全て俺が招いた結果だ。

 父に言われたから選挙に出ると決めたのも。

 地盤があるから落選することはないとたかを括っていたのも。

 全て俺が悪い。


 「どうか、どうか私に皆さんの票を預けてはくれないでしょうか。」


 「ほら、結局票としか思ってないぞこいつ。」

 「死ねやめろゴミ野郎クソゴミ世襲の七光バカが。」

 「ほーらやめだやめだ。」


 席について、話を聞いていた人が続々と出ていく。

 父は顔を真っ青にしたまま立ち尽くしている。

 ごめんよ。自分の地盤を削ることになるかもしれないんだもんな。


 「頑張ってね。」

 「ああ、頑張れよ。」


 「、、、え。」


 「確かにまだまだ未熟だと思うし、言ってることも不安が残るというか、本当に投票して大丈夫か? とは思うが。それでも、応援しようと思うよ。」

 「俺たちがあいつらには言ってやるからさ。まあ、あいつらだってお前が嫌いなわけじゃないと思うぜ。ただ、どうしようもない感情をお前にぶつけてるだけだ。」

 「怖かったよな。あれだけの人数にあれだけの罵詈雑言を浴びせられて。よく耐えたよ。その忍耐力はきっと君の武器になる。」


 「本当に、ありがとう、ございます。」


 「バカなやつだよこいつは。ちょっとは嘘つけるようになれよ。よしバカ!」

 「よしバカ、義隆だからよしバカか。よしバカ頑張れよ。」

 「よしバカ、応援してるよ。」


 政治家というのは不思議な仕事だ。

 どうしてあれだけ文句を言われ、嫌われ、それでも続けるのかと不思議に思っていたものだ。


 ムカつくこともあるだろうに、どうして反論しないのだろうと思ったものだ。


 高級取りだからだろうとも思っていた。


 だが、違ったんだろうな。こりゃあ、やめられないわけだ。

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