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#3



 本日も炎天下の中外へ繰り出し演説を続ける。

 マイクを握って必死に訴えかけるも、誰一人として耳を傾けてくれない。


 たまに近づいてくれば、吐かれるのは暴言ばかり。


 「どうぞ、白咲義隆をよろしくお願いします。」


 「よしたか君。君には本当に申し訳ないと思ってる。厳しい選挙になるが、頑張ってくれ。」

 「大林さん。正直俺もうやめたいです。楽に勝てるって聞いてたのに。こんなの詐欺だ。」

 

 ただの八つ当たりだと分かっていても、選挙チームやボランティアの方にあたってしまう。

 日に日にたかねねの人気は上昇し、とうとう地方メディアがインタビューに来るまでになった、


 「票読みはどんな感じですかね。」

 「高峰が90420票、よしたか君が55040票。」

 

 とてもひっくり返せる票数じゃない。

 差が30000票近くあるのに、一人も話を聞いてくれなくてどうしろと言うんだ。


 空気は選挙が始まって以来重い。

 明るい空気になったことはない。


〜「終わらせましょうよ! 私たちの声を国会に届けましょう。極悪犯罪者集団の自由民衆党には未来永劫消えてもらって!!」〜


 テレビには高峰の様子が写っている。

 俺とは大違いで、初日に見た時とは聴衆の数も熱気も段違いである。

 

 「たかねね、どんだけ人気なんだよ。なんで俺の選挙区なんだよ。ざっけんなー。」

 「………」


〜「選挙に行けばいいです。あとのことは任せてください。大丈夫、悪が無くなれば自動的に生活も良くなるんですよ。

 だってあいつらは国民を苦しめて自分たちは私服をこやしていたんだから。それをやめるだけ!!!」〜


 「もっかい演説いきましょう。休憩もこんなとこにして。」

 「、、、そうだな。」


 この選挙は俺がどうこうという話じゃない。

 積年の恨みが爆発した選挙なんだ。

 

 足は鉛のように重く、喉は落ち葉のように枯れていて、頭の中は常に二日酔いしているようだ。


 「あんた、白咲義隆だろ!!」


 「あ、はい。」


 唇が震える。初老の女性が近づいてきて、俺の手を取った。


 「いつも頑張ってたよね。いろんな人があんたらのこと嫌ってるかもしれないけどさ、私はどれだけ文句言われても反論せず、悪くもないのに謝ってる、そんな健気なあんたを応援してるよ。頑張って。」

 「ありがとう、ございます。はい、がんばります。」


 初めて言われた言葉に、何度も反芻される。

 諦めかけていた希望に一筋の光が差した瞬間だった。


 「クソ野郎!!! 消えろ!!!」

 「選挙結果が楽しみだなぁ!!」

 「たかねねに入れるからな!!」

 「………」


 「いい目をするようになって、私は少し安心しているよ。」

 「そうですかね。」

 「ああ、絶望している人間の目をしていたからね。

 でも今は、少し良くなった気がする。」


 一票、これはきっと地盤によるものじゃない。

 俺の努力で成し遂げた一票だ。

 俺の活動を見て応援してくれている人ができたんだ。

 あの女性のためにも、負けるわけにはいかない。


 「少しは反論したらどうだ!!」

 「そーだそーだーー!!」


 「………ありがとうございます。」


 「……ッチ、行こうぜ。こんなゴミと関わる価値ねぇよ。」

 「そうだな。さっさと落ちろよ。結果は決まってるんだから。」

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