#2
「親父いいい!!!」
「んだ、うるさい奴だな。」
「聞いてないぞ。日本労働党の宮城3区の候補者がたかねねって。」
「俺もさっき聞いた。」
よりにもよってどうしてたかねねなんだよ。
告知とかも事前にされてなかったよな。
それであの人気っぷり。
「手強い敵だな。頑張れよ。」
「頑張れよじゃねぇよ! ふざけんな。俺落選するかもしれないんだぞ。」
「あ、メールがきた。なになに、宮城3区状況困難。敗色濃厚。候補者には混乱を避けるため伝えるのは避けてくれ、、、、、。」
おそらく選挙戦略チームからの連絡だろう。
目の前で読み上げたため後の祭りである。
「だ、大丈夫。地盤が頑強で」
「今、自分で困難って言ったよねぇ!? 言ったねぇ!? 聞いてた話と違うんですけど!?」
「そんなこと俺に言われたってなぁ、、、」
ここにきて焦りが生まれてきた。
どうしてこんなことに。本当に落選するんじゃないか。
たかねねは過激な政治層にはドンピで効きそうな人材だ。
とんでもない人間を擁立したな日労、、、。
「先に刈田郡の後援会に顔を出すことにしよう。」
「なんで、そっちで日労が強いんじゃって」
「しょうがないだろ。都市部で票が取れないかもしれないんだぞ。切り替えてかなきゃ仕方ないだろう。」
いったいどうしてこんなことになったのか。
応援演説に来てくれる現職の議員もいない。
今回の選挙は自分の選挙で皆精一杯なのだ。
対して野党は党首クラスが全国行脚中。
「いったいどうすればいいんだ。」
*
「こんにちは、新人議員の白咲義隆と申します。どうかこのしろさきよしたかに清き1票をよろしくお願いします。」
選挙カーの中から街を回る。
たかねねのように知名度もない俺は地道に名前を売るくらいしかできない。
こうして街を回っていても、誰も聞いてはくれない。
かなり、心にくるものがある。
「お前、新人か!?」
「あ、そうです!!!」
「ッチ、クソ与党が。死ね。」
唾を吐かれものを投げられ散々だ。
後援会場に入ると、それは卒倒してしまいそうだった。
「死ね!!」
「地獄に堕ちろ!ジミンが!!」
「かーえーれ!!」
「かーえーれ!!」
「かーえーれ!!」
「かーえーれ!!」
話をしようにも、後援会がこれだと、落選は待ったなしかな。
俺の人生はこれで詰みかな、、、。
「申し訳ありません。申し訳ありません。」
「謝るなら金をだせ!!!」
「そうだ!!」
「申し訳ありません。申し訳ありません。」
*
「親父、ありゃ無理だよ。」
「そんなこと言ってたら落選するぞ。」
「んな、そんなこと言ったってあんなに死ね死ね言われたのは生まれて初めてで。」
途中から、涙を堪えるのでやっとだった。
「これからも厳しい選挙戦は続くだろうな。」
「ふっざけんな。はあ、会社に帰りたくなるなんて。」
まだまだ選挙戦は続くのに、絶望的なスタートを切ることになった。