#15
「か、勝手にすれば。知らないっ!!」
可愛くないぞ〜。
「ありがとうございます。夢川さん。」
「いえいえ、困ってる時はお互い様ですよ。」
「えへへ」
「それに、高峰さんが騒いでくれたおかげで、白咲くんを見つけれたもの。」
「ずきゅきゅーん!!」
何その言い草。まるで俺を探してたみたいじゃぁないかい。
いかんいかん、勘違いしそうになった。
「ウチは惨敗で肩身が狭いですからね。」
「ねぇ、年上なんだから、その口調やめてよ。」
「えっでも。」
「この世界では当選歴が全てだよ。私たちはお互い一年生なんだから。ね?」
「は、はい」
今の俺はだっらしない、惚けヅラしてんだろうな。
だってなぁ、可愛いもんなぁ。
よおそこの日労の新人の兄ちゃん。夢川ちゃんチョー可愛いでしょ!?
でも話せませーん。あなたは自由民衆党の議員じゃないのでー。
「あ、白咲さんに夢川さんじゃないですか。」
「あなたは!!」
「福岡1区から当選しました。原祥太郎です。」
原祥宏元総理の長男。
今回の選挙で引退ということで出馬、見事当選。
オラと同じ世襲議員だってばさ。
オラ? オラの親ば宮城の県会議員だ⤴︎。
血筋が、格が、いろいろ違う人だ。
「二人とも、やっぱり若いね。若いっていいねぇ。」
ただ、中身は普通のおじさんなのかもしれない。
若いのは左の子だけやで。俺34の立派なおっさん。
「祥太郎さんもそんなに歳取ってないくせに!」
「いやいや、もう今年で40に乗るんだよ。時ってのは怖いねぇ。」
わかるよ、俺はあと6年でその歳だ。その頃には参議院選挙があるね。
あるよね?
「これで3人、あと1人は?」
「たしか三重県の」
「そう、三重1区、日宮明里です。」
「日宮さん! よかった、私夢川芳乃っていうの!!」
「僕原祥太郎!」
「わ、私は白咲義隆です。」
「白咲さん、また敬語になってる。」
「え、なになに、2人はもうタメ語で話すくらい仲良くなったの?」
「いや、そんなんじゃ」
「タメ語って、やだ祥太郎さんおじさんっぽい!」
な、なに!!!???
最近の子タメ語って言わないの!?
ウッソだろ。俺はおじさんなのか!!??
ほら、祥太郎さんショック受けちゃってるよ。
「よかったです。この世界って男の人ばっかりで、女の子少ないから。」
「本当にそう! 同年代で同性で、しかも同じ党で、これからよろしくね!」
日宮さんはいくつなんだろ。なーんて聞くことは流石にできないから後で調べとこ。
「2人とも二十代らしいぞ。」
「そうなんですか、私たちは三十路ですもんね。」
「はは、三十路も長くないけどね。」
なんだかんだ言っている間に午前8時。
国会議事堂の門が開かれ一斉に中に入っていく一年生議員たち。
先頭集団はやはり最大人数の日本労働党。
俺たち4人はそそっと脇から門を潜った。
本当は、真ん中を、最前線で歩きたかった。
どういうわけか、日本労働党の一年生議員の中のリーダー的存在に、たかねねがなっていた。
本当にその人でいいのかい?
その人ちょっと、思い込み激しくて、それに言っちゃ悪いが小選挙区俺に負けてるんだぜ?
目が合うとほら! 睨んでくるんだよ。
各メディアのインタービューはやはり日本労働党に集中している、、、ということはなく。
あんがい俺たちも取り上げられた。というかある人物が大いに取り上げられた。
もちろん祥太郎さん。なんせ、未来の‘総理大臣’候補ですから。
俺? 俺は地元じゃたかねねを破ったとしてそれなりにメディアに出ていたがやはり全国では知る人ぞ知る程度。
数秒とって、ガッツポーズして終わり!!
いいやい、別に拗ねてなんかないやい!!