#12
投票日当日
「誰に入れたって? どれも酷いけど、消去法でジミンにしました。たかねねはあの件でないなって思いましたね。」
「たかねねに入れましたよ! 彼女ならきっと日本を変えてくれる。もう騙されるのは懲り懲りですから。」
「白票ですよ。うちの選曲、ジミン、パワハラ、赤ですよ。投票はするけど、票はどこにも入れませんよ。」
「日本人民党です。あなたはジミンを許せるのですか?」
「というやりとりがなされてたよ。」
「ありがとう大林さん。」
投票所出口で各報道陣が待機し、そこで受けてるインタビューを聞いてきたようだ。
俺に入れてくれている人もいるようだが、やはり選挙結果は厳しいか。
「開票速報が出るのは夜8時、それまでは何もできることはないしね。」
*
「こんにちは、白咲さん。」
「これはこれは、高峰さん。私の事務所にどうかなさいましたか?」
なぜこの女は俺の事務所に来たんだ。
「いやいや、言われなきゃわからないのかしら。」
「???? 申し訳ありません。察しが悪くて。」
分かるわけねぇだろ。何?この人。
「あなたが、元気なうちに顔を見ておこうかと。だってあなたは落選するんだから。」
「はあ。」
あれだけ炎上しても当選できるということだろうか。
まあ、そんなに票は覆らないか。
「そういう言葉はまだ結果も出ていないのに相応しくないかと。」
「それもそうかしら。おほほほ。」
「おほほほ、、、、」
いちいち突っかかってきやがって。なんなんだこいつ。
「実は私、沢渡様に選挙協力してもらっているの!!!」
とうとう何を言っているのかわからない。
大丈夫か。
「私に直接会いにきてくださって、田舎側の票は任せろって!!!」
「それで、白石や名取から出られなかったのですね。」
「ってそんなわけないでしょ!!!」
「本当ですよ。沢渡様、私に仰ってくださいました。選挙が終われば浅倉党へ流れるつもりだって」
「うそ、だろ、、、」
これは嘘だ。
嘘だよな。しかし彼女のいうことが本当なら選挙期間に全ての区域を回らなかったのにも合点はいく。
「そういう冗談は笑えないですよ。」
仮に録音していたとして、こちらがボロを出すのを狙ったいるのか。
それならわざわざ挑発するような真似をする必要はない。
冷静であろうとしても、どうしても焦りはたまらない。
自身への選挙の影響か、沢渡への信頼の揺らぎか。
どちらであっても状況は良くない。
目まぐるしい日々がすべて茶番だったとでもいうのか?
ちがう、あの時あの瞬間に、俺に投げかけてくれた人々の言葉は紛れもなく本物だった。
こんな虚言癖女に心を揺さぶられるな。
心を強く持て。
「どうであれ、私には関係ないですよ。」
「ッチ、あっそー。せっかく種明かししてあげたのに。つまんないなー。」
「、、、、」
タネも仕掛けもない選挙などない。そんなことすれば落選する。
わざわざ手の内を明かしたとは見ないべきだろう。
単身で、俺にだけ会いにきたのだから。