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〜「ただいまの内閣不信任決議案に対する採決の結果、賛成245票、反対210票、棄権10票をもって、本決議案は可決されました。」〜
「可決されたのか。」
「あーあ、これで与党も終わりだな。ざまあこったない。」
日本人の与党自由民衆党への怒りは頂点に達していた。
内部からの造反票が30票ながれ、過半数を持つ与党は、野党第一党である日本労働党の提出した内閣不信任案を否決できず、衆議院の解散か内閣総辞職を迫られた。
「すまん、親父から電話だ。」
「仕事中だぞ。後にしろよ。」
「昼飯だろ。」
「飯を食らうのも仕事だって。」
「あの親だからさ、出なきゃ後で何言われるか。」
同僚からの小言を背に踊り場までやってくる。
『お前、ニュースは見たな!?』
開口一番、きっと先の速報のことを言ってるのだろう。
「見たよ。見た見た。こりゃ親父もとうとうやばいんじゃないの?」
父、白咲和義は俺の地元宮城県の県議をしている。
地方自由民衆党の県議だ。
『見てるなら話は早い。これから衆議院選挙があるだろう?』
「まだ決まってないけどね。」
『お前はその選挙に出るんだ。』
「は?」
〜「ただいま、内閣総理大臣から詔書が発せられましたので、朗読いたします。
日本国憲法第七条により、衆議院を解散する。」〜
「おお、よしたか! 親父さんからの連絡はなんだったんだ?」
「仕事辞めろってさ。」
*
「はあ、とんでもない親の元に生まれてしまった。」
「そう言うな。」
何が嬉しくて与党に逆風が吹き荒れる中選挙に出なきゃダメなんだ。
「現職の先生がいるんじゃないのかよ。」
「先生は今年で引退するそうだ。」
「だから俺なのかよ。他に候補者は。」
「今の与党に入りたい奴がいるのか?」
「いないだろうね。」
父はなぜ誰も立候補しない椅子に俺を座らせようとするのか。
不思議で不思議でおかしくなるぞ。
「大丈夫だ。お前が出る宮城3区は先生の地盤もある。俺の地盤もある。下手なことがなきゃまず大丈夫だ。」
その言葉にホッとする。
言われるままに仕事を辞めさせられたが、落選すれば当然路頭に迷うことになるのだから。
「………だから住民票移さなかったのかよ。」
「悪いか?」
「悪いよー!!」
しかし、後にも引けない。