(5)
三限目は体育で、私の体調は急降下していた。朝は大したこと無かったのに、想定していたより全然体調か悪い。雨は未だ降り続いている。さすがは梅雨だ。まあいいや、とりあえず着替えよう。ダメそうだったら大人しく見学すればいいことだ、変に意地を張って周りを困らせるのは気が引ける。そんな考えでいたのだが、ななちゃんと雑談しながら着替えるためにシャツのボタンの三つ目に手をかけたところで目眩がして、ゆるゆると床にしゃがみ込んだ。これはただの低気圧による不調では無い。姿勢を低くしないと倒れてしまう程なのだから、いつもの立ちくらみとは比にならなかった。ななちゃんが少し驚きながら大丈夫?と背中をさすってくれている。私の呼吸は、そんなに荒れているだろうか。穴があったら埋まりたい。心配されるのはやはり苦手だ。なんとも言えない感情に襲われて、背中がぞわぞわする。周りにいた女子数人が駆けつけ、なにやら騒いでいる。状況は悪くなる一方だ、はやく立ち上がって心配しないでって言いたいのに、頭のてっぺんが冷たくて、視界は真っ白なままだ。これが小説でよく見かける「血の気が引く」と言うやつだろうか。人生初貧血。視界は一面真っ白なのに頭が回っている感覚に酔って、咄嗟に口元を手で覆った。二十秒くらい気分の悪さで動けずにいたが、その間も野次馬は増え続け、ななちゃんは背中をさすり続ける。ななちゃんの手が背中をなぞる度、逆に吐きそうだったので、私の背中を往復して戻ってきたななちゃんの手をどうにか掴んでみたものの、その思いは伝わらず、手を握り返されて逆の手でまたさすり始めてしまった。しばらくすると目が見えるようになったので、机に体重をめいっぱいかけてどうにか立ち上がり、「大丈夫」と微笑んだつもりだが、思ったより声が情けなかったせいで信憑性が全くなかった。




