合同訓練に向けて
Side 木里 翔太郎
【昼・竹宮高校・屋上】
マシ―ネンの戦いもヴァイスハイト帝国との戦いもやっている事は変わらない。
いわゆる時間稼ぎだ。
本当に存在するのかどうか、役に立つのかどうか疑わしい本隊。
やるのかどうかすら疑わしい反抗作戦。
皆懐疑的に思っていた。
そもそもにして戦争に無理矢理参加させられて地獄を見せられたのだ。
これで忠誠心を持てるのは精神異常者だ。
首都の方ではマシ―ネンの代わりに政府に恨みを持つ武装勢力と戦っているらしいし、この辺は日本政府の自業自得だろうと思った。
「こんなところにいたのですか」
「雪代さん――何か用ですか?」
軍服姿の雪代 マイナが現れた。
「近く行われる合同訓練についてです」
「合同訓練ねえ」
合同訓練。
相手は正規の軍人ではなく、自分達と同じ軍隊学校、桜庭学園だと聞いている。
こうして横の繋がりが出来た辺り、上の方も態度が軟化したように思う一方で何か裏があるようにも感じる。
「一応横槍が入らないようにが目を光らせていますが……」
「比良坂市や大阪日本橋の方からは何か情報は?」
その二勢力うぃ尋ねる。
今の日本で大勢力と言えるグループだ。
特に大阪日本橋は欧州の財団と言う都市伝説のような組織と繋がりがあるらしい。
「特にこれと言って――」
「そうか――」
大阪日本橋とも比良坂市(正確には比良坂学園)とも何度か共闘した仲であり、今も関係は良好であり、日本政府を牛耳っている連中相手に、一緒に目を光らせている間柄でもある。
「ともかく出たとこ勝負で行くしかないか」
「それはそうと桜庭学園の人達はどんな人達なんでしょう?」
「女学院で優秀なメンバーの集まりだとは聞いている。俺達と同じく学生国家防衛構想のテストケースの一つだってのは聞いてるが、実際は会って見ないと分からないな」
「そうですね」
ちなみに学生国家防衛構想と言うのは学生による富国強兵、本土決戦、本土防衛を想定して考えられたメチャクチャな構想である。
つまり学生の兵隊化計画の事だ。
実質的な徴兵制度と言ってもいい。
日本と言う国は常識外れと言うか何と言うか、とんでもない事を平然とやらかす国である。
これぐらいはやらかすんだろうなとは思った。
学生の俺達を前線送りにするぐらいだし。
「あ、これリストです」
そう言ってファイルを渡された。
まるで履歴書のように顔写真に細かい経歴などが書かれてていた。
桜庭学園もエース級が来るらしく、特に目をついたのは桜木 トモカ、園崎 アンナ、そして生徒会長と言う名の代表者の安条 ヨツバだった。
(あんまり女子の写真をジロジロ見てると手毬に愚痴を言われるな)
そう言ってパタンとファイルを閉じた。
女子のプロフィールを見るなら手毬と一緒の方が精神衛生的に都合がいい。
それに手毬は女性として、人間として自分に自信がないところがある。
それでいらぬ誤解は与えたくはなかった。
俺はファイルを片手に合同訓練の準備をすることにした。