SFC フロントミッション
SFCのレトロゲームをやってみた感想文です。
このゲームは一言で言ってしまえば『タクティクスオウガの簡易版』。ストーリーに分岐が無い一本道のタクティクスオウガといった感じのゲームです。
ただ、これはこれで良いんです。一度クリアするだけでストーリーを隈なく見ることが出来るので『やり残してる感』が無く、最後、全てを堪能した達成感を存分に味わえます。エンドロールを見ながら『いやぁ面白いゲームだったなぁ』と呟きたい人にはオススメです。
ストーリーが一本道なだけあって、本編のストーリーは二転三転しながらの長尺な話ですし、仲間になる人物も多い。さらにそれらの仲間が乗るロボット(バンツァー)の改造パーツや装備品もメチャクチャ多くて、まずノーマルの車体(本体)を買って、そこに細かい改造パーツを買って取り付けて強化して、それでも出力不足になってきたらお金を貯めてワンランク上の車体を買って、また改造して強化していってを繰り返す。それを十数人分という、当に車の整備工場のような作業と資金繰りを繰り返さなければならない『面白いシステム』もあるゲームなので、ゲームクリアまでにそれなりの時間はかかります。
また、ストーリーの内容も本当の子ども向けというよりは少し大人向けのハードボイルドなテイストになっている。
ストーリーはネタバレ含みザッと以下のようになります。
第三次世界大戦後、世界はヨーロッパ、ロシア、中国、日本、アジア諸国、オセアニアが一体化した『OCU』と、カナダ、アメリカ、南米諸国が一体化した『USN』という東西二大大国に分かれています。
ゲームスタート時、主人公のロイドはOCU軍の中尉で、自分の部隊を引き連れてハフマン島にあるUSN軍のラーカス基地という化学兵器工場も兼ねた場所を偵察に来ています。
その時、同じ部隊に所属していたロイドの婚約者でもあるカレンが斥候として一人で工場に潜入を試みていたのですが、工場の内部を見たカレンから『うっそ!なにこれ!?ヤバイ!みんな今すぐ逃げて!』といった具合の通信が入ります。
そんな報告を聞いても意味が分からないロイド隊は、とりあえず急いでカレン救出に向かいますが、ロイド隊が到着する直前のところでカレンは謎の黒いバンツァー部隊に襲撃されロイドの目の前でバンツァー諸共爆破されてしまいます。
その時、婚約者を目の前で爆破されたロイドはショックで気を失い、隊長を失った部隊は壊滅。さらに極秘の偵察作戦も世間にバレてしまった事で、ロイドはその事件で生き残ったものの責任をとる形で自ら軍を除隊したのでした。
ロイドは、この時の記憶が曖昧だったものの、ロイド隊が無力化してしまった後に謎の黒いバンツァー部隊はカレンが内部を見た化学兵器工場に火をつけ工場は焼失。世間ではそれを実行したのはロイド率いるOCU軍だとされていて、それを機にOCUとUSNは第二次ハフマン紛争というのが勃発してしまったというのがエピローグとなります。
ゲームの舞台となる、このハフマン島というのは現実の世界地図でいうとイースター島がある辺りに位置しており、ゲーム内の世界では第三次世界大戦後にハフマン島周辺の海域地下に膨大な量の原油や天然ガスが埋蔵されているのと判明した事で、ちょうど両国の国境に位置するハフマン島の領有権を巡ってOCUとUSNが激しい争奪戦を起こし(第一次ホフマン紛争)、ゲーム中の時期にはホフマン島は丁度真ん中に国境線が敷かれてOCUとUSNとに東西に分裂している島です。
先の事件でOCU側の主人公がUSN側の軍事基地に潜入して、しかも基地に火を点けて焼失させたという疑惑まで掛けられた事で紛争にまで発展してしまったというのがストーリーの始まりとなります。
ただ、この主人公、主人公なりに一見ちゃんとしているように描かれていますが、これだけの国際問題を引き起こしていながら軍を退役してから「思い出したくない」なんて個人の感情のみの理由で行方をくらまし、戦闘機操縦の元プロフェッショナルとしての腕を生かしてバンツァーによる地下格闘技賭博場で選手(操縦者)として大いに活躍しているって、結構なダメ男だと思います。
そんな地下のスター選手に成り下がっていた主人公の元に、ある一人の男が尋ねて来た事で本編ストーリーの前半が始まります。
この日、主人公の元に来たのは『オルソン大佐』。元OCUの陸軍大佐で、軍を退役した後に『キャニオンクロウ』という傭兵派遣会社を作って運営している人物でした。
オルソン大佐はロイドの噂を聞き付けて、傭兵としてロイドを自分の会社にスカウトしに来たのでした。
ロイドは始め「あの日の事を思い出したくない」と言って誘いを断りますが、オルソン大佐の「カレンはまだ生きている。傭兵として各地の戦場を廻っていればカレンを見つける事が出来るかもしれない。」という口説き文句に堕とされて、あっさりとキャニオンクロウに入社し、ここから傭兵として『各戦場に派遣されては敵の部隊を殲滅するだけのミッションを次々とこなしていく』というのが前半のストーリーとなります。そんなミッションの中でカレンの消息情報をちょっとだけ知る人に出会ったり、カレンを爆破した黒いバンツァーがチラチラ姿を現したりするのですが、基本的には戦争狂の荒くれた仲間たちと一緒に、その日の敵部隊を粉々に打ち砕いて壊滅させるだけの撃ちまくり爽快シミュレーションとなっています。ミッションを敢行して報酬を得てバンツァーを強化改造していくだけの冷酷な傭兵部隊の活動を淡々と繰りかえしていくだけの話が続きますが、ゲーム進行の中間地点で話が急転され、後半は話の流れが前半とは全く違う方向に向かっていきます。
話の中盤まで、ただ敵の部隊を殲滅する事だけを楽しみとしていたような主人公たちだったのに、まだ中間地点でいきなり第二次ハフマン紛争が終結となり、主人公たちも派遣先を失ってしまいます。しかし、このあまりにも『理由も結果も無い終結』に疑問を感じた主人公たちが、この『第二次ハフマン紛争』というもの自体がなんだったのかという調査を始めるというのが後半の流れとなります。
後半のストーリーは、最初にカレンが目撃した工場内部の考察や、ある意味感動のラストを含め、ほぼ全てがネタバレとなる展開なので、これからプレイしようとする人は以下は読まない方がゲームを楽しめると思います。
まず、後半の話の流れをスムーズに頭に入れるために、
このゲームに登場するバンツァーという乗車型の二足歩行型戦闘機は『サカタ』という日本の重機メーカーが開発したという設定があり、その製造においても世界一のシェアというか、もうほぼ独占しているような状態であるという世界設定にあります。
そのため第三次世界大戦以降、ホフマン紛争であっても国内の小さな内紛であっても、戦争によってバンツァーが大量に必要となれば、例えUSNからの注文であってもそれはサカタの収入であり、結局はサカタという企業を有するOCUの収入ともなっていました。そんな現状を打開するため当然、USNも自国でのバンツァーの開発と生産を既に始めてはいましたが、技術的にサカタのバンツァーには到底及ばず、戦場の第一線にはサカタのバンツァーを使わざる得ないといった状態が続いている。ただ、鉄工や機械開発の技術力ならばUSNだってサカタに負けていないはずなのに、なぜそんなにも性能に差が出てしまうのかといえば、それはサカタ製のバンツァーに搭載されていた半自動操縦AIと、そのプログラムを入れたICチップを作る技術の差だとのこと。
しかし、それも近年になってUSNでプログラムが解析され、同等の物も既にUSN国内で生産が可能になってるだろうと噂されている、と、このくらいのゲーム内の情報があってからの中盤以降のストーリーが始まります。
ゲーム中盤以降のになって判明するのですが、このゲームのストーリーが始まった頃には既にサカタ社の社長は引退して会長となっており、新社長には長男の『サカタ』が就任していました(ロイド隊のエースであるサカタは新社長の弟)。
この新社長のサカタはAI搭載のバンツァーを作る技術は既にUSNに盗まれていると気が付いていて、そのさらに上を行くシステムを搭載した次世代バンツァーの開発を進めていました。その新型バンツァーに搭載する次世代の思考システムというのが『人間の脳ミソをそのままバンツァーに搭載した自立思考型戦闘機』という代物で、最初に登場してカレンを秒殺したあの黒いバンツァーが、そのプロトタイプの一号機でした。(このゲームが発売された1995年当時、AIの思考レベルはまだ本当に初歩的なものでしかなかったんだと思います。当時の発想では人工知能より人間の脳の方が計算能力や判断能力が遥かに優れていると思うのは当然の事と受け止めます。)
ただ、この黒いバンツァーは現行のバンツァーより性能は格段に良かったものの、サカタの研究開発部が予想していたほど性能の良いものではありませんでした。そこでサカタの研究チームが、なぜ新型の性能がそれほど良くないのかを解析した結果、プロトタイプに搭載した脳ミソが自らの脳ミソを提供した研究者の物だったからと結論付け、『研究者は戦場の経験が無いため戦場での判断能力に劣る』。もし、優秀な戦闘員の脳ミソを搭載すれば、戦場で最良な判断や動きを自動でしてくれるバンツァーになるに違いないだろうと報告したのでした。
それは理屈としては合っているので、ここからサカタ社の『優秀な脳ミソ狩り作戦』が始まりました。
これが、サカタ社の計画によって誘発された『第二次ハフマン紛争』で、この故意に始められた紛争によってサカタ社は大量のバンツァーの受注、一号機の走行テスト、優秀な脳の狩猟という三重得を得ることとなります。
紛争誘発のためにドリスコルの部隊はUSNのラーカス基地に潜み、OCU軍が侵攻してきた際に優秀な脳を奪取してUSNの基地を破壊。それをOCUの犯行であるように見せかけて紛争を勃発させるという作戦を成功させています。
この作戦の隊長を務めているのがドリスコルという人物で、ドリスコルはOCUでもUSNでもなく、ただサカタ社の指令によって動くだけのサカタ社の専属テストドライバーみたいな立ち位置となります。そのため、ロイド隊による第二次ハフマン紛争の残党狩り作戦などでは偶然居合わせたついでにロイド隊に加勢して一緒にゲリラを撃退したりもします。
しかし、元々ドリスコルという人物は先代のサカタ社で純粋に技術開発のためのテストドライバーをしていた人物であるため、新社長になっていきなり「脳ミソを集めろ」なんて仕事を命じられて少し嫌になってヤケクソで仕事をしている感を出しています。
そんな中での最初のステージです。ドリスコルの部隊はUSN軍ラーカス基地の化学兵器工場に潜んでいて、そこにたまたま斥候として一人で敵地に潜入してきたカレンを『一人で攻め込んできた超凄腕の兵士』だと思って瞬殺して脳ミソをサカタ社に持ち帰った。という、最初のステージの伏線回収があります。ここで判明するのは『カレンは確かにあの日死んだが、脳だけは生かされている』ということで、この時、ロイドは『カレンの脳は俺のことを覚えているかもしれない』という、淡いのかサイコパスなのか分からない思いに向かってストーリーを無理やりカレンとの再会という目的に向けて進めて行くことになります。
ただ、最後まで明かされない有名な伏線もあって、カレンが驚愕した化学兵器工場の内部がなんだったのかというのは最後まで明かされないまま終わります。
1.工場内では既に人間の脳を搭載したバンツァーがUSN軍によって量産され始めていた。
2.侵攻してきた敵を殲滅する目的のためだけの巨大な自爆装置があるだけの無人施設だった。
3.敵を誘き寄せるためだけのハリボテで中身は空っぽだった。
などなど、いろいろな考察はあるみたいですが、まあ、私の最初の推測は3でした。ドリスコルが、待ち伏せしていたUSNの部隊の中から『優秀な脳』を捜していたのか、そこには優秀な脳が無かったためUSNの待ち伏せ部隊を殲滅して、OCUの『優秀な脳』が来るのを待ち伏せていたのか分かりませんが、カレンの脳をゲットしたらすぐに用無しとなった施設を燃やしてスッと消えていますので。
そんなこんなで話の途中、サカタ社の先代社長(現会長)はそこそこ倫理観を持っていて、「いくら超高性能次世代機の開発のためとはいえ、ロボット一台のために人を一人犠牲にするなんて事は即刻やめろ」といって息子(新社長)を叱りつけますが、逆上した息子はバズーカ砲で父を撃ち、父はグチャグチャに飛び散って死んでしまいます。この時、ロイド隊のサカタは、父を殺された復讐のため兄へと徹底交戦の宣告を突き付けます。
ストーリーは、そのままの流れでロイド隊がサカタ社に突入して、新社長が乗る次世代型のクソ強いバンツァー(ラスボス)を撃滅してエンディングとなるのですが、このエンディングのムービーが所謂『鬱ゲー』としてこのゲームを名高いものにした伝説のシーンとなります。
エンディングは夕焼けの中、ロイド隊それぞれの人の影。目的を達成して隊を解散。順々に別れを告げて画面の外にフェードアウトしていくのですが、結局みんな元々はただの荒くれ者のため、稼ぎやスリルを求めて何処かの紛争地域や傭兵の雇い主を捜すため不満タラタラな感じで去っていきます。みんな「楽しかったぜ。またどっかの戦場で会おう。」みたいに言って去っていくのがちょっとだけ感動すると言えば感動しますが。
そして、この後が問題のシーンで、最後に一人残ったロイドは、さっき戦った次世代型バンツァーの驚異的な動きに衝撃を受けたと同時に『ある確信』を抱いていました。あのバンツァーに搭載されているのは間違いなくカレンの脳であり、戦闘中にロイドへの攻撃だけ外れる事が多かった事に気が付いたロイドは、あれはカレンだと確信したのでした。
エンディングで一人になったロイドは「カレン…」と一言だけつぶやいて歩き出し、先の戦闘で半壊しているカレン脳搭載のバンツァーを爆破して終わります。
このラストシーンには人それぞれいろいろな解釈があると思います。
仲間が全員去ったのは『それは一人じゃないと出来ないだろう』と気遣ってみんな立ち去ったとか、ロイドはメンヘラのサイコパスで、イカツくなったカレンは自分の思い出を汚すから消しただけとか、逆に、こんな姿になってカレンは悲しんでいるだろうから消してあげたとか、カレンはあの時に死んだって受け入れたんだから、今さら脳だけ生きてたとか言うなって思って完全消去しただけとか。
多分、その後ロイドはカレンバンツァーに『乗って』今日も元気に戦場を駆け回っていました、みたいな物質間を超えた変態愛エンディングだってアリっちゃアリだったと思いますが、それを許さず、みんな立ち去って無言の圧力をかけた仲間たちの判断、優秀だったと思います。
このゲームの良いところは、ストーリーに分岐が無く、時間がかかってでもエンディングまで辿り着けば以上のようなストーリーを全部見て取りこぼし無く消化出来るというところにあります。解釈や考察は人それぞれ違ったとしても、とりあえず全部見て、全体のストーリーを良かったとか悪かったとか、みんなが同一の情報レベルから言い合える作品というのはリベートの対象としては優れた素材だと思いました。
一本道でストーリーの良く出来た作品だと思いました。