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長田桂陣 短編集

無人島におけるイケメンランキング

作者: 長田佳陣
掲載日:2022/05/24

「ねぇ、アヤノ」

「なに? ハルカ」

「アタシの雑誌どこに行ったかな?」

「雑誌ってイケメン特集の?」

「そうそれ。あたいらがさ、この島に流れ着いてもう1年になるじゃん?」

「そうね。最初の頃は絶望的かと思ったけれど、なんとかなってるわね」

「そいでさ、あのクソ豚いるじゃん?」

「豚先輩ね」

「ちょっと気になる事があってさ、あの雑誌見たいんだけど」

「えーっと、あ、あったわ。はい、イケメンを特集しているファッション誌」

「これこれ」



「あの豚さ、ほんとに役に立たなかったじゃん?」

「何をさせても、ブヒブヒ言って泣いてたわね」

「見ているだけでイライラしてさ、もう何度罵倒したか覚えてないわけ」

「尻を蹴り飛ばしたこともあったわね」


「最近さ、なんか罵倒してなくない?」

「そうね」

「やっと、クソ豚からただの豚に進化したのかと思ってさ」

「あなたが何を言いたいのかさっぱり分からないわ。私達がなにか見落としてるっていうの?」


『できる男の条件特集』


「あった」

「それがどうかしたの?」

「いやさぁ、なんかもうあの豚しか見てないっしょ?」

「三人しかいないものね」

「男の基準が豚になってないか心配になってさ」


『管理がスマートで仕事が早い』


「どう?」

「まぁ、言われる前に出来るようにはなったかもね」

「あの豚さ、なんか最近うまく仕事してる気がするわけ」

「少なくとも力仕事については、私たちよりは効率いいわね」

「これは、○っと」


『レディーファーストが出来る』


「これは躾の問題よね」

「アタシらに怯えているだけっしょ」


『相手を立てる事ができる』


「毎日、美人だとは言うわね」

「それは、挨拶として必ず褒めろって強制したからっしょ」


『周りの人をかばえる』


「こないださ、拠点に野犬が入ってきたじゃん?」

「あれは怖かったわ」


『できる男は土壇場や修羅場から逃げない』


「でも、あの豚が追い払ってくれたじゃん?」

「教育の成果が出たわね」


『即座に行動できる』


「躊躇なく飛びかかったわね」

「ちょっと怖いくらいで、笑ったっしょ」


『やさしい、気遣いが出来る』


「怪我は無いですか! って。お前のほうが危なかったてーの」

「意外と強かったわね」

「それなんだけど、全然負けてる感じじゃなかったじゃん?」


『この夏は細マッチョできめろ』


「豚さ、なんか細くなったというかデカくなったというか、なんか違くね?」

「そうかしら?」

「あんた、マッチョ好きだったじゃん?」

「そうね。男は頼りがいが大事だわ」

「この雑誌のマッチョはどう?」

「え? うーん、イマイチというか、ただのガリガリね」

「タイトル見てみ?」

「夏に向けて筋肉を鍛え上げろ、理想の細マッチョ……いや、こんなの豚のほうがまだマシでしょ」


『180センチ以下は人権なし』


「あら、以外ね。豚って人権ありそう」

「いやいや、一年前はアタシらとかわんななったっしょ」

「そういえば、そうかもね。いまさら伸びるとか豚は違うわ、ウケる!」


『ワイルドでシャープな魅力』


「あなた、ワイルド系好きでしょ? こんなのとか」

「え? そうなんだけど、おかしいなぁ。このモデルってワイルド?」

「都会の甘ったれ坊っちゃんに見えるわ」

「これならまだ、豚のほうが10倍はマシっしょ」


「ここまでで、一度まとめてみましょう。ブタ先輩の人物像をどうぞ」

「えーと、長身マッチョのワイルド系。仕事が早くイザというときは頼りがいがあって、そのくせアタシらには超優しい?」

「なにかおかしいわね」

「おかしいしょ?」

「まさか、あの豚が?」

「いや、ないない、超ウケるんですけど」


『イケメン、トップ10』


「こ、これと比較してみよ」

「既に嫌な予感しかしてないけれど、やるの?」

「だ、大丈夫っしょ。相手は芸能人だし」

『10位』

「どっち?」

「豚?」

「あいつの勝ちね」

「まぁ、所詮は10位だし。あいつが勝つこともあるっしょ」

『9位』

「こういうのは、ほら。好みの差もあるから」

「で、どっちなの?」

「まぁ、あいつ……かな?」

『8、7、6、5、4、3、2』

「視力落ちたかも」

「私は無人島生活のおかげで裸眼で生活できるようになったわ」

「顔面だけなら敵わないけどさイケメンって、外見だけじゃないと思うんだよね」

「まぁ、雰囲気イケメンとかいるわね」

「そりゃね、顔面だけなら芸能人と比べるのはおかしいっしょ」


『1位』

「ほら見ろ! 1位! 流石は1位、これは確定っしょ」

「そうね。流石は1位ね」

「はい、これでおーわり!」

「それで、あなたの好みはどっちなの?」

「え?」

「どっちがイケメンなの?」

「ほら、せっかく決勝まで来たわけじゃん? 身内びいき? みたいな?」

「義理ってこと?」

「そう、義理。義理チョコみたいな感じで義理投票」

「じゃ、無人島イケメンランキング一位は彼ってこと?」

「大げさっしょ、だって男がアイツしか居ない島じゃん」



「私、こんな話を聞いたことがあるの。男女のグループに銃が一丁。最初は仲間だったのに銃を持つ男が恐怖でグループを支配するの。そうしたらね、女達は我先に銃を持つ男に媚びを売って、寵愛を得たものは女王のように振る舞い、選ばれなかった女は奴隷のように扱われたそうよ」

「な、何の話だよ」

「私達にとって、権力の象徴は彼に他ならないわね。先に寵愛を受けたほうが全てを得るのよ」

「そんな、あいつがアタシ達から一人を選ぶってのか?」

「可能だって話よ」

「彼、モテたことなんて無いでしょ? 先に告白したら私達のどちらでも受けるんじゃないかしら?」

「ミスコン優勝者のアタシと、告白された回数ナンバー1のあんたを? アイツが好きに選ぶっての?」

「その地位にいるわね」

「だいだいさ、告白って何だよ、アイツのこと好きなのかよ?」

「女王か奴隷の二択なら選択の余地はないでしょ?」

「怖いこと言うなよ」

「それに、私達から言わなくても彼はもう、一人を決めているかもよ?」

「あいつが? 冗談でしょ!」

「私は、彼が好きなのは貴女だと思うわ」



「ねぇ、起きてる?」

「もう寝たわ。だから、こっそり彼のところに行ってもいいわよ」

「その話さ、なんか解決策はないのかよ?」

「感情や理性で抑えられるものではないわね」

「……」

「好きなのかよ?」

「秘密」

「……」

「……」

「いやだよぉ、そんなの、いやだ」

「私、ここを出てゆくわ」

「……」

「島の反対側にも廃村があったでしょ? あそこなら生活できると思う」

「狩りとか出来るのかよ」

「出来るわ」

「野犬の群れは?」

「秘策があるの」

「……どんな?」

「……」

「ねぇ! どんな方法だよ!」

「秘密」

「そんな秘策ないでしょ?」


「彼、責任感を持つようになったわ。私達から一人なんて選ばないわよ」

「それでもいい。ずっと今の三人で居ようよ」

「三人とも不幸なんて非効率よ」



「いないよ! 何処にもいない!」

「私たちの会話を聞かれたかもしれない」

「だからアイツが消えるってこと?」

「水路も完成して、畑も順調にいってる。野犬よけの柵だって強化されてた」

「だからアイツは自分が居ないほうが良いって思ったの?」

「狩りに出ただけかもしれない」

「探しに行こうよ」

「私たちじゃ外の土地勘がなさ過ぎる。死ににいくのと同じよ」

「秘策は!?」

「……」


「何か音がする」

「あれ! 飛行機。おーい」

「聞こえはしないわ。何か燃やしましょう」

「まって、アイツが居ないのに帰れない」

「帰れるなら、彼も出てくるはずよ。ここに居なければ問題はおきないもの」


「帰ったら、アタシたちどうなるかな?」

「簡単よ。虐げられていた男と、我儘で性格の悪い女」

「ねぇ、飛行機、気づかなかったことにしよう?」

「残念。もう、遅いみたい」

「煙が………」

「彼が救助隊に狼煙をあげたのよ」



『行方不明の高校生、男女三人発見される』

『女子二人は学校でも有名な美女』

『ハーレム王の実態に迫る!』

『若者の爛れた無人島生活』


「ネット。名前と顔写真、動画も流れてる」

「こんな面白い事、黙って見過ごすわけがないでしょ」


『美女と野獣』


「美女だってさ」

「まぁ、嘘では無いわね」

「野獣だってさ」

「大嘘ね」


『性犯罪者だ』

『少女達を救済しろ』


「一年だからね。何も無いってほうが信じられないでしょ」

「やめて、プライドが傷つくわ」

「アタシ等に伝わらないようにしてくれているけど、取材の申し込みが殺到しているらしいよ」

「会わせて貰えないしね」

「なんで私らが病院で、アイツは警察なんだよ」

「どうやったら誤解がとけるかしら?」

「……アヤノってフラレたことある?」

「ハルカは?」

「フラレようか? 一緒に」


「スマホのカメラ、これでいいかな?」

「問題ないわ」



『おい、例の無人島の奴が生配信してるらしいぞ』

『マジかよ!』

『おぉ、すげえ可愛い、クッソ美人』

『こんな娘とハーレムなんて羨ましい』

『なに、話すんだ?』

『さぁ? 被害の告発とか?』


「はーい、みなさんコンチャー。噂の無人島美少女、ハルカちゃんだよ」

「はじめまして、アヤノと申します」

「アヤノってば堅いよ!」

「今日は話題の彼に、伝えたいことがあって動画配信をしています」

「会わせて貰えないんだよねぇ」


「この動画が貴方に届くと信じています」

「まぁ、勝手に拡散されて嫌でも見るっしょ」

「それでは、さっそくこの島のイケメンランキングを発表します」

「なんじゃそりゃー、うける。島って何処?」

「ノミネートは何名ですか?」

「約1億2千万人ですがぁ、残念! 一名以外は惜しくも選考から漏れました!」

「そういうワケで、いきなり第一位からの発表です」


「先輩」

「アタシたちは」

「君のことが」


おわり

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