夕焼けで赤く染まった空を過る一筋の流れ星
幼馴染と最後に遊んだ小二の夏。
別れ際に見上げた空。二人して同時に声を上げた。
「「流れ星」」
赤く染まった空を横切る流れ星を一緒に見た。それが遊んだ最後の思い出だ。
幼馴染とは疎遠になった。
父が家を購入して引っ越し、近所だったときと違って物理的に距離が離れてしまったのだ。引っ越しは同じ学区内ではあったが、同じクラスになることはなかった。理由は同じ音の名前だ。彼女が『竹田 晶』、僕が『武田 晃』で漢字は違っていても読みが同じだから紛らわしいために一緒のクラスにはならないのだろうと教えられた。中学も同じだったのに部活動でも委員会でも一緒になることはなかった。同じ学校にいることすら忘れるほどに会わなかった。
その幼馴染と再会を果たしたのは高二なってだ。そのときまで同じ高校に入っていたとは気づいてもいなかった。
高二で文理などでクラス分けが行われた結果、理系のクラスに彼女もいたのだ。看護師になりたいという理由で理系になったようだった。
一目で彼女だと分かったにも拘らず、それでも綺麗になったと思えるほど見違えていた。
意識しているのは僕の方だけなんじゃないかと思う。授業中、気付くと視線が彼女を捉えていた。
彼女より後ろ席に座っていたので、その姿を視界に収めていた。ノートを取る時に俯く度に髪が垂れ、それを耳へと掛ける様に手で払う仕草に目を奪われる。
そんな時、高校になってから初めて声を掛けられることがあった。
「武田君」
先生に頼まれた用事を伝えただけのこと。そしてそれは僕に絶望を味合わせた。確かにこの年であだ名で呼び合うというのも恥ずかしい。だが幼馴染の口から苗字で呼ばれるとは思ってもみなかったのだ。
――あーちゃん。
――あっくん。
そう呼び合っていたから落ち着いた感じの声音に変わってもどこか変わらない思い出の中の声で、あの時とは違う言葉が紡がれると違和感が激しい。
「ちょっと聞いてる?」
「あ、ああ。ごめん」
久しぶりで思い焦がれているのは自分だけだったようで、なんとも冷たい感じに聞こえる事務的な用件を聞いたのだった。
それでも一緒に居られるだけで満足していたのだ。
だが友人が同じクラスの子と付き合うことになり、焦りが再び首をもたげた。
もしかしたら彼女も誰かと付き合うようになるかもしれない、と。来年は受験だ。僕は進学だし、彼女はたぶん看護学校だろうから、一緒にはいられない。
だから呼び出した。幼馴染の彼女を告白するために。
「竹田さん、来てくれて、ありがとう」
「武田君、用事は何?」
「たけ、いや。あーちゃん。僕と付き合ってください」
「……あっくん、遅いよ」
彼女の頬が夕焼けのように染まり、幼い日に見た一筋の流れ星のように目から涙が零れた。
※友人の状況はあらすじに記入。気になる方はご笑覧ください。
【告白の結果】
返事してなったことに気付いた。
A.「もう彼氏がいるの。ごめんなさい」
B.「待っていたよ。お願いします」
どっちがいいだろうか?