イヴはキャンプで裁縫を、アダムは川へ狩りへ出かけました
こっちも断然進めたいんですがね。定期的にデスマーチが来るんですよね
サブタイが昔話のようだ
「今日も精が出るな」
「おはようございます。お邪魔させてもらってる身ですからね。少しでも努力しないと」
遅くに寝る習慣……、がだったと思われる感覚から、日が沈んだらほぼ寝るしかないこの生活だと、日が昇る少し前には目が冴えてしまう。正直不審者でしかない俺たちを受け入れてくれた家族の役に立ちたいという気持ちもあるため、朝一で弓の練習をするようにしているのだ。
ラトラさんが俺用に作ってくれた短弓で、遠くに置いた丸太に向かって矢を射る。はじめこそ飛ばなかったり、的から大きく外してしまっていたが、今ではある程度離れても当たるようになってきた。
――弓術が20になりました――
「おっ?」
「やるじゃないか、筋がいいな。これなら動物を狩ることが出来る日も近いだろう」
頭に響いたきりの言い声に意識をそがれ矢を放ってしまうが、それは見事に丸太の中心を射抜く。なんだかんだ気にしてくれているラトラさんが、肩を軽く叩き手放しに誉めてくれた。何を隠そうほとんど命中率の無いに等しい俺は、あくまで追い込んだり注意を惹く役なんだよなぁ。
「はは、たまたまですよ。早く大物を狩って恩返ししたいものです」
「まぁ、無理はするな。俺達も気持ちの上では救われている」
そういって優し気な表情を向けた先には、イヴがリーオちゃんとマリッサさんと共に、裁縫を習っているところだった。忌子故に他者との触れ合いを許されなかった反動だろうか、すでにイヴさんにリーオちゃんはべったりだ。
――イヴが理に触れたことにより、自動的に服飾がアクティベートされます――
っとまぁ、無粋なアナウンスは放っておいて、俺から見ても心温まる風景だった。ここ数日でわかったことは、俺かイヴのどちらかが、理……、何か技術的なものが必要なものに触れると、アナウンスが鳴るということだ。すでに料理や短剣術などがアクティベートされており、順調に数字を伸ばしている。アクティベートは共有だが、数値に関しては初期値も上昇も個別のようだ。俺が弓術をあげてもイヴがあがることはないし、イヴが料理をあげても俺があがることはない。ただ存在を認知した状態って感じだ。
「さて、その腕なら動物よりも狙いやすい奴がいる。丸太にあれだけ刺さる威力があるなら大丈夫だろうから、朝食の確保がてら狩りに行くぞ」
「実施練習みたいなもんですね。やりますやります」
「早朝じゃないと隠れてしまうからな。ちょっと出かけることを伝えてから行こうか」
「了解です」
マリッサさんとリーオちゃん、イヴに、俺と一緒に出掛けることを伝えに行く。基本的に狩りは男であるラトラさんがこなし、二人はお留守番だったらしいので、一応狩りの人手が増えた感じなのだが、今のところ俺が仕留めた獲物はゼロだ。この前は惜しかったので、今日こそは仕留めたい。その気持ちを察してくれたんだろう。本当にラトラさんはいい人だ。三人は俺たちの姿が見えなくなるまで見送ってくれていた。手を振るリーオちゃん可愛かったなぁ。
ラトラさんに後ろからついていく。ひょいひょいと川の岩場を危なげもなく移動するラトラさんはさすが獣人といったところだ。俺は足を挫かないように足元を気にして歩くのでちょっともたつくが、周りを警戒するふりをしながら、チラチラと後ろを気にしてペースを合わせてくれている。本当にラトラさんは以下略。
「よし、獲物を見つけた。あそこにリバークラブがいる。見えるか?」
「リバークラブ?」
「あぁ、川辺に生息する生き物でな。朝方は見つかるんだが、それ以外だとなかなか見つからない不思議な生き物だ。硬そうな見た目をしているが、しっかりと射れば矢で仕留められる。逆に近づくとあのハサミで指を切り落とされたりもするらしいから気をつけろ」
「こわ」
ラトラさんに促され目を凝らすと、一抱えぐらいありそうなサイズのカニが、つまつまと川をハサミでつついている。あのハサミはまじでこえぇわ。
「外した場合の保険として俺が構えておくから、思いっきり射っていいぞ」
「やってみます」
よし、あのときの感覚を思い出せ、リバークラブの眉間あたりに意識を集中して構える。矢を思いきり引いた瞬間、遠くのはずのリバークラブがまるでスコープでも覗いたかのように見え、矢を放ってから時間がゆっくりと流れるような感覚とともに、リバークラブの眉間を貫いた。
「やった!」
「……やるな」
俺はすぐに喜んでラトラさんの顔を見てしまったが、ラトラさんはリバークラブが息絶えるまで矢をつがえたまま油断なく見据えていた。残心ってやつだったかな。浮かれていた自分に少し反省し、笑顔を向けてくれたラトラさんと軽くハイタッチして喜びを噛みしめた。
イメージとしてはスカイ〇ムのキ〇ムーヴです(笑