見放されたどころか、忌み嫌われていそうなほどでした
「あなた……」
「あぁ、とりあえずは大丈夫そうだ」
マリッサが心配そうに彼らのほうを見つめている。彼女は優しい。境遇を思って心を痛めているのだろう。
「お父さん、お母さん、すごく悲しそうだけど……、他に何かあったの?」
「うん? いや……」
「あなた、リーオには、伝えましょう。本当はあの子達にも伝えたほうがいい気もするけれど、あの落ち込みようだから心配だし」
「……そうだな」
娘には、隠し事をしていることがわかってしまったらしい。マリッサの提案を受け、口に出さないようにリーオに言うと、先ほどの木の棒で、続きを書いていく。
STR 1
VIT 1
DEX 1
AGI 1
INT 1
リーオが口に手を当て、目を見開いて絶句する。そう、彼らの能力値だ。まるで赤ん坊のようなステータス。しかも彼らは神に見放されたもの。それが今後もずっと上がることはない。成長と共に自然と上昇し、成人となると頭打ちとなるのが通常だ。リーオですら全てのステータスは10を超えている。これはどうみても異常な数値だ。
「イヴさんとアダムさん、良い人だよ……。一緒にいちゃ……ダメかな……?」
忌子と言われ嫌われるリーオや、獣人である俺に忌避することなく接してくれる彼らは貴重だ。咄嗟に相手を守ろうとする姿勢や人柄にも好感は持てる。だが、出自が不明すぎるのだ。無知と言ってもいい程な上に、簡素な服とは言え皺ひとつなく綺麗すぎる服。厄介事の臭いしかしない。答えあぐねていると、肩に暖かくやわらかな手の平が置かれる。
「あなた、私達と似てないかしら? あの子達」
「うん? ……そうだな」
お互いに励まし合うように話し合う彼ら。色々な事情があり逃げ出してきた俺達の昔の姿とダブってみえないこともない。……ふぅ、妻と娘にこんな顔をされて、私が酷な事を言えるわけがない。
「わかったよ。どうせ俺達も似たようなものか、出来る限り面倒は見よう。彼らが望むならだがな」
「ありがとうお父さん! 大好き!」
「素敵よ、あなた」
これもまた何かの巡り合わせだろう。少なくとも、常識や生きる術ぐらいは身に着けてもらえるようにしようじゃないか。
それから日が7度は落ちるほどの時間が経った。彼らは俺達が同行の提案をすると、喜んでくれ、積極的に生活の協力をしてくれている。正直、予想だにしないことが起きている。
「そっちにいったぞ!」
「任せてくれ!」
初日はまるで扱えなかった矢を、追い込んだ鹿へとアダムが射る。狙いが甘く胴体へと刺さるが、動きが鈍くなった獲物を逃がす程俺は甘くはない。すぐに追撃することで仕留める。
「すいません。やっぱりまだまだですね」
「いや、筋がいい。当てられただけでも上出来だ」
最初の数日はお世辞にも狩りなど無理じゃないかと思ったほどだった。しかし、アダムは野営へと戻っても貪欲に弓の練習を続け、時折考え込んだかのように動きが止まると、その動きをどんどんと良くしていった。血抜きする鹿を見て、目を反らしているところを見ても、元々狩りをやっていてブランクがあったという感じでもない。帰り際ふとアダムが歩みを止め、目を凝らすようにして矢を射る。
「どうした?」
「いや、当たるかなって思ったんですけど、まだ早かったみたいです」
一体何を、と思って視線の先を見ると、鳥が飛び立つところだった。いや、ちょっと待て、鷹の目を使用しないと見れる距離じゃないぞ……?
「スキルを覚えたのか?」
「えっ? 全然違いますよ。ちょっと良く見えたぐらいです。そもそも俺使えないんじゃ?」
ちょっとどころじゃないはずだが、嘘をついているような感じも見受けられない。了承をとり鑑定をかけても何も変わらなかった以上そうなのだろう。
「弓の才能があったのかもしれないな」
「それならいいんですけどね。狩りぐらいできないと生きてけないですから」
腑に落ちないものの、日が落ちつつあることに足を速め、自分自身を無理矢理納得させつつ帰路へとついた。