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鑑定してもらったら、あるべきものがありませんでした

 ラトラさんの言葉に思わず私は絶句する。どうして、なぜ、あれは神様じゃなかったのか。招いておきながら見捨てるとはどうゆうことだ。アダムも同じ気持ちだろう。しかし、なぜそうゆう考えに至ったのかを確認しなければならない。異世界に飛ばされた挙句に見捨てられた状態だなんて冗談ではない。口の中が乾いていく嫌な感じに顔を顰めつつどうにか言葉を捻り出す。


「鑑定した結果にそう出ているんですか?」

「あぁ、そうだ」

「どうゆう結果が出てそういった判断を?」

「……俺達の娘、リーオと同じ結果だからだ」


 焦りからかどうしても言葉が問い詰める感じになってしまっている。リーオちゃんは俯き、マリッサさんも悲しそうな表情を浮かべているのが余計に焦燥感を煽る。いけないいけない。アダムも神妙な顔つきで今の状況を呑み込もうとしているし、冷静にならないと。


「えっと、いいかな?」


 私が言葉に詰まっていると、眉間に皺を寄せながら、アダムが手を上げて、全員の視線を集めると質問を投げかけた。


「その鑑定ってどういった情報がわかるの? 俺やイヴ、リーオちゃんと、ラトラさんとマリッサさんではどう違う?」

「おっと、そうだな。すまない。字は読めるだろうか?」

「たぶん、地面にでもいいから書いてもらってもいいかな?」


 なるほど、と私は思った。神に見捨てられたという判断基準が私達にはわからない。もしかしたらそういった記述が堂々とあるのかもしれないし、この世界ではそうというだけなのかもしれないから。がりがりと地面に木の棒でラトラさんが文字を書いていく。神様は最低限の知識は与えてくれていたらしく、アダムの予想通り文字を理解することができた。


・ラトラ

Lv12 狩人

弓術 Lv3

鷹の眼 Lv2

短剣術 Lv1

気配察知 Lv2


 レベル表記に職業のようなものが並ぶ。羅列されていくのはスキルのようだ。まるでゲームの世界のようね。その隣に、一瞬躊躇したような動きを見せたけれど、アダムの名前を書き、すぐに木の棒の動きがとまった。


「……ラトラさん?」

「……これだけだ」


 アダムが焦ったように声をかけるが、それ以上木の棒は動かない。


・アダム

Lv-


「わ、私は?」


 何故かしんと静まり返ったかのような夜の蚊帳に、がりがりと木の棒で地面をなぞる音が良く響き渡る。


・イヴ

Lv-


「こ、これだけなの?」

「あぁ……これだけなんだ……」

「で、でも俺達だってレベルがあがるんでしょ? そうすればきっと――」

「――あがらないの」


 静かだが、妙に脳に響く声でマリッサさんが嘆くように呟く。あぁ、きっと私の顔もアダムのように真っ青なのだろう。レベル表記も、職業と思われるものも、スキルさえもない。


「この鑑定結果をもつものは、レベルも上がらない。故にスキルを覚えることもない」

「だから……神に見捨てられし者と呼ばれているのよ……」


 そして、これから得られることもないのだという―― 


 すっかり意気消沈した私たちの様子を見兼ねたのか、今日は疲れただろう、ゆっくり休むといい。とラトラさんは私達を二人にしてくれた。寝床にと、床に敷く動物の毛皮まで用意をしてくれたけれど、気は重く、アダムと私は、無言で自分たちの鑑定結果を見つめていた。


「レベルとスキルがある世界で、両方がないってどんなくそげーだよ」

「さしずめ私達はNPCってところかしらね」


 お互い黙っているのが苦しくなったのか、軽口をたたいて自嘲ぎみに笑いあう。ちょっとだけわくわくして、一気に落とされた気分だった。でも、疑問は残る。頭の中に響いた声や、レベルとは違う数字、スキルとは認識されない隠密や交渉術とは一体なんなのか。アクティベートとは有効化したということ、少なくとも意味はあるはず……と思いたい。


「あー、もう、でもせっかく獣人にだって会えたんだ。今は考えたってわからないことは後回し。目の前にわかっていることだけ考えるか」

「そうね。少なくとも、鑑定ではわからないこともあるってことだろうし、今はアクティベートされるものや条件を探しましょ。効果だってあるのかもしれないし」

「そうそう、数字を上げていけば何かわかるかもしれないしな」


 無理矢理切り替えるようにしてアダムは明るい口調で言う。そうね。状況は悪化したとは言い難い。今日をしのぎ、良い縁に恵まれ、情報を得た。想定外の事態に混乱はしたけれど、私を不安にさせないように振舞うアダムに、ちょっとだけ勇気をもらった。


 立ち上がって両手を組んで頭にあて、夜空を見上げるアダム。直接言ったりしないけど、手、震えてるの隠せてないからね。手の震えを隠そうと頭に当てたんだろうけど、若干頭ごとぷるぷる震えるアダムを見ていたら、なんだか可笑しくなって緊張も抜けてしまっていた。

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