1話目
その日はよく晴れていて、
いつも通り普通なでも幸せな1日の…はずだった。
アルタニューム暦1月の4
守りの森
「 もうすぐ春ですねぇ。」
この森の守人であるマルシェ=フェアリーレンは
楽しそうに周りを見渡しながら車椅子を
風の魔術で押していた。
「 おや? 」
ふとマルシェの目に入ったのは三人の人影。
うち1人は子供のようで他の人影に寄りかかっていた。
「 この森に人とは…珍しいですね。
ですが、どうしたのでしょうか? 」
マルシェは小首を傾げ、その人影の方へと
車椅子を進めた。
近づくにつれ三人の様子が分かってくる。
一人は黒髪の男で剣を腰に携えている。
もう一人は薄桃色の髪の男で魔術師の様である。
どちらもまだ二十代のようでマルシェとそう歳は離れていなさそうであった。
その二人が心配そうに支えているのは
淡い翠の髪を持った少年のようで遠くからでもわかるくらいに具合が悪そうであった。
「 大丈夫ですか? 」
マルシェは三人へと近づき声をかけた。
「 …誰だ。」
黒髪の男が鋭い金眼でマルシェを睨みつける。
「 この森の守人を勤めている者です。
その子、具合が悪そうですが…。
よろしければ、私の家へといらっしゃいな。
薬があったはずですから。」
マルシェは柔らかく微笑んだ。
「 守人?君が?
…そう、それなら頼もうかな。」
桃色の髪の男がどこか安心したような顔を
マルシェへと向ける。
黒髪の男は難しい顔をしていたが少年を見やってから頭を下げ、マルシェへと礼を告げた。
「 いえいえ、この森では助け合いがルールですから、お気になさらず。
私の家は近くですから、もう少し辛抱してください。」
そう言って、マルシェは三人を家へと案内した。