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7話 VS獣魔王決着!

 魔力はスキルを使う力であって、スキルではない。

 スキルという術式に魔力という力を流し、初めて真の効果を得られる。


 魔王とは自身の身体を術式へと作り替え、唯一無二のスキルを使う人類種である。




「死ぬなよ挑戦者!」


 魔王相手では俺の個人スキルも役に立たない。獣魔王は武器を作るスキルこそが主力だと思っているだろう。

 そう思わせるためにここまでスキルを使わずに戦ってきた。


 しかし魔力を解放した獣魔王相手にどこまで太刀打ち出来るか分からない。

 どんな大きな切り札を持っていたとしてもそれを使用する前に殺されれば終わりなのだ。

 仕事してくれよ、俺の反応速度。


 消えた。

 音が一切聞こえなくなり、地面から舞う砂塵が空中に停滞している。


 超集中、極地に至った者だけが一瞬だけ引き出せる神の領域の力。危機察知能力が警報を鳴らし、俺をその極地まで無理矢理引き上げた。

 見えたのは残像。

 直線的に、俺と獣魔王が元いた場所を繋ぐように残像が連なっていた。


 直線的かつ正面からの拳1つでの突撃。無謀のように見えて勝利への最適解。

 獣魔王は俺を侮った故の攻撃ではない。初撃で最短で決める。時と場合によって、これこそが最強の一撃に成り得るのだ。


 槍を構える時間はない。例え防御に間に合ったとしても、獣魔王の拳を防ぐことは不可能だ。

 左右に退避するという選択。俺が後1メール横に動き間に獣魔王は方向転換を済まし、追撃してくるだろう。それも必勝の一撃で。


『力を使え。これはお前が選んだ、お前の罪の力だ』


 心の弱さに付け込んで求める力を与えようとしてくる意思。手を出せば望むものを与え、人を幸福にする存在という看板を背負った闇。甘くどこまでも沈んでいきそうな、力の快楽へのいざない。

 つい楽な方へ出しそうになった手を噛みちぎる。


 使わない為の力は手に入れた


 俺の魔力量は種族的な特徴としてほぼ無限にある。本来、俺の個人スキルはその特徴を持ってすれば最強であり、魔王レベルの実力者相手でも引けを取らないはずだ。

 しかし、これは後手の力。獣魔王がスキルを発動しない限り俺のスキルも発動しない。


 そんな俺は魔王共と対等に戦う為の手段として別次元の力を求めた。【無限】を冠する種族へと至った俺にしか扱えない兵器。神がこの世に忘れた異界異次元の力。

 それが対魔王用の切り札だ。


「聖遺物、神刀フォルアンサラー



 世界が現実に引き戻される。刀を鞘から抜く時間はない。手の中に包まれる凍てつくような気を持つ神刀の感触を感じ、そのまま盾のように拳の軌道に合わせる。


 バシュッという音を最後に静寂が訪れた。

 勝負は決したのだ。



「け、けっちゃぁぁくぅぅーー! このコロッセオに立つ男こそが勝者、クロディーだァァ!! ついにチャンピオンがその地に伏せたぁ!」


 力を抜くと神刀を維持する力も消え去り、神刀は空気に流されその姿を隠した。

 軽くめまいがし、全身の力が抜け、ガクッと膝を着いた。神刀を扱う時はそれなりの覚悟と代償がいるのだ。


 会場は歓声に包まれ、久しく感じていなかった熱狂の嵐が渦巻いている。


「ハハハハハッ! 完敗だ! まさかそのような隠し球を持っていようとは思いもしなかった。何者だ? 先程の刀、例え魔王でも存在を保つことすら出来ないだろう」

「答えねぇよ脳筋野郎。まだそこまで騒げる力が残っているのか」

「無論、この体は分身なのでな! 本体の我は余裕というわけよ!」


 獣魔王(分身らしい)は刀を殴った右腕を肩まで爆散させ、地に伏せた。1分くらいは伏せたまま気絶していたのだが、今となっては血も止まり、隻腕の男にしか見えない程まで傷口が塞がっていた。

 そして立ち上がり、ニカッと口角を上げて話しかけてきた。


「まあ良い。我は獣魔王、名はまた相見えた時に告げるとしよう。だが、お前ほどの者が何の目的もなしにこの国に訪れるなどせぬはずだ。次はお互いに国を背負っているかもしれんな!」


 獣魔王は脳筋の野性怪物野郎。それは間違いないが、野生の勘とでも言うのか鋭いところもあるようだ。まあ本人的にはこの国を乗っ取るなどと考えてもいないのだろうが。


『【神気Lv3】が【神気Lv4】に上昇しました』


 おっ、神刀フォルアンサラーを使用した甲斐があったな。【神気】は聖遺物を扱う上で必要なスキルだ。

 聖遺物を扱うには【神気】で魔力を神力に変換する必要がある。聖遺物を扱う為の力は魔力ではなく神力なのだ。

 神力は本来、俺達人類種が魔力を扱うように神の一族が魔力の代わりに扱っているものだ。それをスキルを使って変換している。

【神気Lv4】では、魔力から神気への変換効率はまだ低い。おかげでほぼ無限の魔力を持つ俺でも一振りが限界なのだ。


「新たなチャンピオンがここに誕生ッ! 皆様、チャンピオンクロディーに大きな拍手をッ!!」


 司会の1人が降りてきて、俺にマイクを向けてきて一言求めているようだ。大きな拍手を俺に送ってくれていた観客達も俺の言葉を待っている。


「悪いけど辞退するよ」

「へっ!?!!!? な、なぜ?」


 何故も何もない。そもそも興味本位で出ただけの言うなら暇つぶしだ。

 なんてことを言えば大バッシングを受けるのは目に見えている。ここは一芝居売っておくか。


「俺は武者修行をしている身。世界の悲劇から人々を守るために修行している。例え敵が魔王でも負けないように! だから俺はまた旅に出るつもりだ」

「そ、それなら仕方ないですね。皆様、この崇高な目的を持つクロディーに尊敬を、そして称賛の拍手をもう一度お願いしますっ!!」


 一際大きい拍手が俺に向かって送られる。


「うぉー! 最高だぜクロディーっ!」


 様々な歓声が飛び交っている分、申し訳なさが募るが仕方ない。印象は悪いよりも良い方がいいからな。


 そして俺は一礼して会場を去った。後始末は獣魔王がしてくれるだろう。帰りは控え室を通らなくてよかったのはよかった。どんな反応をしているか分からないがあまり良い印象は受けなさそうだ。


 宿に戻る頃には深夜と言うべき時間になっていた。歓楽街以外の街は暗闇に包まれていた。

 俺は音を立てないように部屋に戻り、シャワーを浴びた。


「ふぅ、予想外ではあったが面白かったな」


 スキル無しの純粋な肉弾戦は久しぶりだったので楽しかった。

 最後は獣魔王に押し込まれ、神刀を使わざるを得ない状況になった。まだまだ精進しなければな。


「そう言えばスキルレベルも上がったし、ステータスでも確認するか」



 ◇無銘◇

 種族:ラスト・ノバ(ー)

 レベル:48/∞

 ランク:ー

 特殊スキル:【超越同調オーバーリンク

 個人スキル:【無限の可能性Max】【勇気Lv19】【憤怒MAX】【自虐Lv15】【システムコードLv7】【変形メタモルフォーゼLv7】【神力Lv4】【古代文字Lv3】【聖杯LvMAX】【使者LvMAX】【剣術Lv15】【槍術Lv17】【弓術Lv10】【武術Lv12】【魔力精製Lv1】【魔力変換Lv1】



いやー、強くなったもんだ!

獣魔王が闘技場に登録している名前は偽名です。


この作品で初めて激しめの戦闘シーンでした。感想お待ちしております!

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