1話 ゴミってそれはないでしょう!?
あーーれ? まーーーーっ暗?
あ、あ、ああ。
やっと呂律が回るようになってきたな。
わたし、いや俺か。
えっと、何してんだろ?
真っ暗で何も見えないし感じない。
……なんかポケ○ンの進化を思い出したな。
『【進化】を取得、出来ませんでした』
ん? 今のはなんだ?
『システムコードにアクセス中です。あなたの全てを構築中』
まじかっ! まさか生まれるその前に意識があるとは思ってもみなかったよ!!
じゃ、じゃあ……ゆ、勇者!
男のあこがれ、勇者になってみたい!
『【勇者】を取得、出来ませんでした。すでに取得者がいます。代わりに【勇気Lv1】を取得しました。【進化】の取得をリトライ、取得しました。その効果で【無限の可能性Lv1】を取得、代償により体を失いました』
ちょっっとぉぉー!!!?
なんか体を失ったとか聞こえたんだけど? どうしてくれんのさ!
『タイムアッーープ!』
いや、ノリノリだなおい。
結局誰なんだよ!
『○+36955+○82569382:850569<×○2565○×828÷96958×0÷850=62^2々828¥5〆28282828281」145々々+々×々〆|\||』
いや、分かんねぇし、いきなりバグるな。
あっ、光が出てきた。お目覚めかな?
なんか【無限の可能性Lv1】とかもあったし何とかなるだろ。
よっしゃー! はりきっていくぜニューライフ!!
☆
「何だこのゴミは、処分だな」
「スライムの次はただの布切れかよ。しっかりしろよ」
「うるさい。ほら、これで成功だろ」
「おぎゃー!」
ちょっとまてぇい!
今、俺捨てられたよね? そうだよね!?
召喚されたらモンスターみたいなやつらが俺を囲んでて、いきなりピンチ。
と思ったらひょいと持ち上げられて床に捨てられた。
そして、俺の召喚された場所には赤ん坊が召喚さていた。どうやら、それが勇者らしい。
「これで闇の勇者が誕生した! 光の勇者に負けんように仕込んでやる」
「って言ってもまだ人間だけどね」
「何を言うか、半身魔王、半身勇者の身体を持つのがこの赤ん坊よ! 煉獄からそれぞれの魂を抜き出して融合したのだからな!」
待ってください。
お前らは勝手に魂操ってただの赤子にそれを植え付けただと?
許されるわけねぇだろ。
『【憤怒Lv1】を取得しました』
でも、体が動かねぇ。赤子の所まで動いて、抱きかかえて逃げられたらいいのに。
どっからどう見ても俺じゃ周りにいるヤツらに勝てそうにない。
悔しいが、俺は……ただの布切れのようだ。
どうやれば動けるのかもわからない。
目の前の赤子一人救えないゴミだ。
『【自虐Lv1】を取得しました』
嫌味かシステムコードさんは。
「で、この勇者を誰が育て上げるかだが」
「私が請け負いたい。人型でなければ不便であろうからな」
「確かにお前ならば育てやすいだろう」
「まっ、俺っちも子育てなんかキョーミないね! グレモリーに任せればいいんじゃない?」
「余り物のスライムと布切れも私が貰おう」
やばい、やばい、やばい!
このままじゃ俺は処分、赤子も連れ去られてしまう。ついでにスライムも処分かな?
「よし、では闇の勇者が成熟すれば人間に戦争を仕掛けるとしよう。……20年後、あと20年後に人間を根絶やしにする!」
やっべぇーっ! 想像以上にヤバそうだ!
前世が人間だったのかなんなのか微妙に人間に愛着がある。
それを滅ぼされるのは耐え難いな。
「20年後までに死んでないことを願っておるぞ」
「お前がな」
「バイバーイっす」
次々に真っ暗なところに消えていったモンスターみたいなやつら。最後まで残ったのは人型。
というかどっからどう見ても普通の女の人にしか見えない。
「行きましょうか」
ひょいと赤子を持ち上げ、俺で赤子の体を覆う。スライムと俺で覆った赤子を腕に抱えて歩き始めた。
こいつの手の中でうずくまってるだけじゃ、何も好転しねぇ! 絶対抜け出してやる!
☆
「ここが私の城よ。綺麗でしょう?」
「きゃぁ? きゃあ!」
何も出来なかった。
目の前に広がる白銀の世界と立派な城。それを見て赤子は楽しそうに騒いでいる。
『これが魔王様のお城か! ここに仕えることが出来るなんて、なんて幸せなんだ!』
隣のスライムさんは思考が向こう側だった。さっきから、心の声が筒抜けである。
『【無限の可能性Lv1】が【無限の可能性Lv2】に上昇しました』
おおっ! 何故かは知らないがラッキー!
これで動ける、動ける動ける、動ける!
「おや? 布切れが動いた? 安心しなよ、とって食ったりしないからさ」
うっ、そんなに優しそうな笑みを向けるなよ。そんな顔してその赤子に洗脳教育をする役目をかってでた癖に!
「勘違いしているようだけどね。私はこの子を洗脳しようとか考えてないよ。普通に過ごして物心がついて、教養も十分に与える。そして20歳になった時に初めて選択を迫るよ」
そんなことをしたら他の奴らに何を言われるか分かんないぞ?
「あいつらも強いからねぇー。それでも、負ける気は無いよ。なんて言ったってこの子は私の子だからね!」
ニカッと笑ってそう言った。その笑顔が偽物だったら素直に上手いと褒めるしかないな。
彼女に任せても酷いことにはならない。なぜだかそう思えた。
『経験値を10000取得しました。Lvが上昇しました。現在のステータスを表示します』
◇名無し◇
種族:アンリミテッド・マテリアル(SS+)
レベル:20/20
ランク:D-
特殊スキル:【進化】
個人スキル:【無限の可能性Lv2】【勇気Lv1】【憤怒Lv1】【自虐Lv1】【システムコードLv0】
お、おう、ゴミじゃなかったが、案の定人間ではなかったな。
『【進化】を発動しますか?』
もちろんイエスだ!
あんな怖い奴らに一方的に殺されないように力が欲しい。
その前に……自分で動けるようになりたい。
『【進化】の可能性を検討中……【無限の可能性Lv1】の干渉により再検討……、進化先を表示しますか?』
イエスだ。
『進化先を表示します』
▽
アンリミテッド・ヒューマ(A)
▽
アンリミテッド・スライム(A+)
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アンリミテッド・リザード(S)
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アンリミテッド・スカル(A+)
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アンリミテッド・シャーク(A+)
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アンリミテッド・ドラコ(SS)
▽
アンリミテッド・ブラッドマテリアル(???)
いや、人間弱!!
読んでくださってありがとうございました!