三つ巴 ④
ふわふわに注意しつつ、黒ブタマンを攻撃。
立場的に考えれば、ふわふわは味方だし、あたしからちょっかいかけなければ、攻撃はされない……はず。
しかし、ふわふわの黒ブタマンへの攻撃は防がなくてはいけない。ユッキーが到着するまで、ふわふわに勝手させるわけにはいかんのです。
だけど、今のところは、ふわふわに動きはない。
そのまま黙って見ていてくれないかなーー。
まぁ、無理だろうなーー。
「そうだ! もっと強い魔法プリーズ!」
そして黒ブタマンは無駄に魔法を使ってほしい。
こいつの黒い風の魔法は、分類は風の魔法に違いない。元がどうであれ手元を離れたら風は風。
そのコントロールを得るのは簡単。後はこれを使って攻撃をしよう。だが、黒い魔法を取り込むのは危なそうだから、そのまま跳ね返す感じで攻撃。時間を稼ぐのが安全。
しかし、この黒ブタマンの魔法なら、こいつ自身を倒せそう。ちょっと試してみようかな……──って、ダメだ、ダメだ! そんなことしてはユッキーに嫌われてしまうぞ!
「私が手を出さなければ、ユッキーが来るまでいけそうね?」
「えっ──、もしかすると、ふわふわは協力してくれる感じ?」
実はそうなんだろうか?
やっぱり、なんやかんや優しいのだろうか?
「……そんなわけないでしょう。そいつの脅威度は計り知れない。檻から出た獣なんて即射殺よ!」
「一瞬、期待したのに! 結局は敵か!」
大人しく、ゆるふわお姉さんしてればいいのに。
ぶりっ子して、『みんな〜』とか言ってればいいのに!
「雅がいたから、面倒な準備も楽に済んだわ。じゃあ、いくわよ? せいぜいソレを守るのね」
大人しかったのは準備とやらのせいか。
姉もだけど本当に大人気ない大人が多い。
「自分だけ悠々と準備してズルいぞ。あたしにも準備タイムください!」
「いいわよ。代わりましょう。その間にソレは死ぬけどね?」
「それじゃあ意味がないだろうが!」
黒ブタマンの魔法を分解。再構築。
だいぶ力の運用に無駄が出てるけどしょうがない。
取り込まずにやるのはこれが限界。でも威力は十分。
こないだ自分で味わった折り紙つきだ。
「くらえ! 黒式・太刀風! どうだカッコいいだろう!」
来ると分かったなら先手必勝。
遥か彼方まで吹っ飛んで行け!
「へぇ……そんなことも出来るの……」
ふっ、避ける暇もなく風に巻かれよった。
今のが捨て台詞になってしまったな。ザマァ!
「おぉー、想像以上の威力。これでは、ふわふわは果てまで飛んでいったな。さらば」
予想を上回る結果。この感じなら軽自動車くらいなら飛んでいくと思う。
あと技名だけど、黒い魔法を使ったやつには、全部この黒式って付けよう。簡単だし、黒いからカッコいいし。
「その色は雅には似合わないわよ。可愛くないし」
馬鹿な……どうして普通に立っている。
間違いなく直撃したはずなのに。
人間などゴミのように飛んでいくはずなのに。
「実は体重が1トンくらいある?」
「今は、あるかもね?」
飛んでいかない理由があるなら、それは重いからだ。太刀とは言ったけど今の魔法には刃がなかった。
怪我させないためとか考えたのが間違いだったな。切り刻むつもりで撃つんだった……。
「ふわふわな服で分からなかったけど、ふくよかな体だったんだね。胸だけでなく他もかなりデ──」
──ブ。と言いたかったのに、黒ブタマンがこちらに向かってくる。ふわふわから視線を離したくないのに。
だが、寄られるのはマズい。対処しなくては。
「鉄・刀源郷」
「──なにっ?! ふわふわ。貴様、何するつもりだ! そして、おまえがやられないようにしてんだから、邪魔すんな!」
あたしにばかり来やがってー。
ふわふわもいるんだから、やつにも行けよー。
ふわふわは何て言った?
とうげんきょうって言ったよね。
とうげんきょうって、ところで何?!
スマホはあるのに検索している暇がない。
起きる現象を見て対応するしかない。
くろがねは鉄。とうげんきょうは不明。
何が起きるのかも現在不明。
「再現・和泉守兼定。更に複製」
兼定。それってユッキーが持ってるやつ?
あの刀がなんとか兼定って名前だった気がする。
「ユッキーが持ってたのを見たかしらね……。今日はこの子にしたわ」
ふわふわの手元に刀が生成される。
材料は鉄。手持ちに鉄があったわけではなく、辺りの鉄を使用しての魔法。
「自らを鉄と化すのも鉄の魔法だけれど、鉄を利用するのも鉄の魔法よ。そして今の時代……鉄なんてそこら中にあるわよね」
──これはヤバい!
複製と言った意味も分かった。辺り一面に刀が生えてくる。手に持ってるやつと同じ形のが。材料は鉄だけど……。
ビルも鉄。車も鉄。あれもこれも全部、──鉄!
材料は無尽蔵だ。ふわふわの魔力の続く限り生成できる。
「そ、それはさぁ……手に持って使うんだよね? 刀が飛んできたりは、──するんだ!」
生えてきた刀が黒ブタマンに飛んでいって貫通した! ヤバいぞ。これが全部飛んでくるのはヤバい。
「射殺と言ったでしょう。再生が不可能になるまでまずは力を削ぐ。巻き込まれたら死ぬわよ?」
刀が舞い黒ブタマンを斬り刻む。
あいつだって不死身じゃない。
再生には限度がある。止めなくては!
「やめ──にゃ?!」
飛んできた刀が頬をかすった……。
気のせいでなければ血が出ている。
ここにきて今日の中で一番死にそう。
ふわふわはプレイヤーではないので、あの攻撃にフィールドの加護とやらは適用されない。
……刀が刺さったら死ぬよね? 少なくとも血が出る。血が出続けたら死ぬよね……。
「逃げ道もなくすから、逃げるなら今よ?」
「逃げませんー」
それでも逃げはしない。
逃げたら死ぬほど後悔しそうだし。
「あら、残念」
この女は本気で黒ブタマンを殺すつもりだ。
土は風に相性が良くないけど物量差で押し切れる。
刀の材料を無くすのは不可能だし、刀を折ったところで意味もない。鉄に戻ったところで再利用される。
「鉄・鳥籠」
鉄が空を覆う。地面から鉄が伸びていく。
そして、トゲトゲがついた鉄が網目模様を形成していき、あっという間に籠が出来上がった。
「相性が悪くとも地の利は私にある。恨むなら鉄に満ちた街を恨みなさい。雅、空がなくては鳥は飛べないわよね? 小鳥ちゃんはそこで大人しく見ていなさい」




