独り占め
♢49♢
ふわふわに言ったようにエッグは全部貰う。
取りにくいだろうと、宙に浮かせたことが間違いだったと思い知らせてやる。
エッグは常に移動している。風の流れは一定。
シャボン玉は同じところを通って流れていく。
流れるスピードはそれなり。身体能力の上昇しているプレイヤーなら追いかけられる速度。
下の人たちはこれを追いかけて新宿周りを一周してきたらしい。全員でマラソンしてきたとか、みんな馬鹿なのかな……。
でも、身体能力はかなり向上してるね。
先頭グループのプレイヤーたちは疲れもほとんど感じられない。1時間くらい全力で走って、バトってきたようには見えない。
そして、ふわふわの作った足場。
この上からなら直接取れる人もいるだろう。
まったく余計なことしやがって。
さっきまでは撃ち落とせば下で奪い合い。
プレイヤーたちが1つのエッグに群がったのが見てないけど想像できる。アレにはそれだけの価値がある。楽して強くなれるからね。
だけど高いところから取ろうとする人は少なかったらしい。超高いビルとかからジャンプすれば、エッグには届くかもしれないけど、その後は地上に真っ逆さまだから。
ユッキーに言ったけど、パラシュートなしのスカイダイビングはただの自殺。ただし、地面に叩きつけられようとここでは死なない。死ぬくらい痛いのは明らかだけど死なない。
そこまでの勇気はないけどエッグは欲しい。
楽して強くなりたいとはダメ人間共め。やはり貴様らにはやらん!
「しかし、足場には一番乗りしたけど、ジャンプしてエッグを取るのは得策ではなくなってしまった。1回では全部は取れないし、ふわふわが足場を作るとか余計なことしたから。そうなると……」
まずはあの風の流れを破壊しよう。
エッグは散らばってしまうが、固まっているよりはマシ。とりあえずは何個か回収して強くなりましょう。
「姉のカードを使って風を生成。それを靴に集めて一時保存。ユッキーがいないので、次も姉のカードで代用。赤いカードで爆発ではなく炎だけを……出せよ……爆発すんなよーー」
イメージが形になる仕様だが、この赤いカードには爆発のイメージが強い。志乃ちゃんと姉のせいだ。
ダメだぞあたし。こんなことでは大爆発するぞ!
火を、炎だけを生成。
しかし、本当に必要なのは熱だけ……。
「……合わせたらいいんじゃね? これ」
何も、わけて使うことないんじゃない?
雲母さんは合わせて使ってたし、2枚同時に使えばよかった気がする。ですが、もう風は出してしまったので、今度チャレンジしてみよう。
よーし、今ので少し意識が逸れた。
今ならいける。炎。炎。炎……。
「──よし、火付いた!」
後は足元に設置して、ユッキーがやったみたいに炎を発生させて、渦にして自分を囲う。
そんでもって温かい空気を靴で捕まえて、蹴り上がって空へ──。
「おぉー、上がる上がる! 昇ってしまえばこっちのもんだけど、それには一工夫必要。タダでは空へは行けないのです」
そしてシャボン玉発見! 取り放題だ!
よいしょっと。手を突っ込んだくらいでは割れないな。
いちいち割るのめんどい……中身だけ抜き取ろう。
『──せめて割りなさいよ!」
「まだいたのか、ふわふわ。これは飛んでるわけじゃないから、あたしは忙しいんだ。話しかけてくるな」
上昇気流はすぐに終わってしまう。
空域の箱がないので空中では風の操作もできない。
炎の渦の上昇気流がなくなるその前に、回収するだけして、なるべく高いところに避難しなくては。
「いち、にい、さん、しい」
次からは高い建物を移動しつつ、ライン上にあるエッグを回収していこう。そんでもって強くなってきたら、残りはプレイヤーたちを倒しながらでも回収できる。我ながらいい作戦。
「ごー、ろく、なな、はち。おっと──」
これ以上は抱えきれないな。落っことしそう。
的にならないように近いところに……。
『一度に8つも?! 少しは遠慮とかしないの』
「しないよ。お一人様1つまでにしなかったのが悪いと思う」
この取った分だけ使いたいから、近くのビルの屋上に着地しよう。
見えてる風のラインに乗るだけで到着。後は割るだけ。
「えいっ、えいっ、えいっ、えいっ──」
エッグを握りつぶした分だけ、ミヤビちゃんは強くなる〜。だが、これだけじゃ力が増えているのか実感がないな……。つまり、もっと必要か。
『みんなー、急がないと本当に雅が全部取っちゃうよー。急いで足場に登ってきて!』
「足場に乗るのだって大変なんだよ? まぁ、これからもっと大変になるけどね」
邪魔者共にくれてやるエッグなど1つもない。
あたしが満足するまではあたしが貰う。
足場に登ってくるのは勝手だが、エッグは渡さん。
「技名はあたしだとダサいと言われるので、ひとまずそのままで。後日、姉にでも考えてもらおう」
早速、試してみよう。
実感は無いけど増えている魔力を。
「今日はいい感じに風も吹いてる」
『何するつもり?』
これまでは手でやってきたことを全て靴で。足先で行う。
この靴はあたしと一緒。羽根の部分と、つま先と踵は風に触れられる。これを使って風を集める。
立ってるだけだと効率悪いので、自ら動く。
軸足と蹴り足を入れ替えながら足を振って……。
「こっちを手でやればいいのかな? オマケだった靴がメインになったわけだから、これからは手がオマケ。あたしは武器とか使わないし手が暇をしているな」
『そうね。演舞もいいけど効率を求めるならそうするべきね。今までと逆のことをするわけだしね』
「ふわふわ。説明してないのになんか詳しいね」
『ナイショよ。何も教えない。けど、アドバイスくらいはしてあげる。新たな事に臨む子は嫌いじゃないからね』
ふわふわは悪いヤツではないんだろうか?
こいつも、なんやかんや優しい。怪我も治してくれたし、今だってアドバイスしてくれるらしい。
それが必要かは分からないけど1人よりはいい。
『雅の一番稀有なところは風を操るところじゃない。それは風使いなら出来て当たり前。雅が人と違うのは、視えてるところよ。風を。視えているから触れるのよ? 触れるから視えているわけじゃない』
「……言ってもいない秘密を知っているだと?」
『秘密も何も、それが風神でしょ? 風の神様なんだから風が視えなくてどうするのよ。貴女は間違いなく風神の子よ。それもとびっきり特別なね』
「特別……」
『風神の家を継ぐなら間違いなく貴女よ。他は比べたら可哀想なくらいだもの。でも、あのジジイは雅を認めないでしょう。あの男は貴女が怖いのよ。どうしようもないくらいね』
こいつは何なんだろう……。
黒ウサギもだけど、いろいろと知りすぎている。
ふわふわという名前しかこっちは知らないというのにだ。
『喋りすぎたかしら……。他の人に言っては駄目よ? ──で・も! いい時間稼ぎにはなったわ! というわけなので、みんなも頑張ってーー!』
──しまった! ふわふわに気を取られている間に、足場にゾロゾロと集まってしまった!
気をつけていたのにふわふわ感に騙されてしまった……。
「貴様、謀ったな! せっかく用意したのに今更になってしまった」
『嘘では雅は誤魔化せない。だから、それなりに真面目に話しただけよ? あはは──、何でも思い通りにいくなんて考えちゃダメよ』
「ふわふわめーーーーっ!」
予定より風が集まってないけど仕方ない。
ある分だけ風を叩きつける。
「──圧砕! 足場に押し付けられろ。あわよくば足場ごと下まで落ちろ!」
くそー、足場ごと一網打尽にする予定だったのに。
しばらく上から負荷を掛けて、動けなくするだけになってしまった。やるな、ふわふわ。




