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 人気者 ⑥

♢48♢


 志乃(しの)ちゃんがあたしを庇って撃たれた。

 撃ちやがったヤツは何かの建物の屋上。

 1発撃ったら姿は見えなくなったけど、ブッ殺す。


「やめろ……亜李栖(ありす)たちと、合流する方が先だ」


 まずはあの場所から叩き落としてやる。

 ここまで我慢して。我慢して。我慢してきてきたけど、もう知らない。このままにすることは出来ない。


「ちょっとまっててね。ブッ殺してくるから……」


 なんか、少しだけど魔法は使える。

 温存してきたけど靴も使って、姉のくれたカードも使って、あのスナイパー気取りをブッ殺す!


 建物ごと地面に叩きつけてやる。

 この靴の性能を教えてやろう!


「──やめろって言ってんだろ!」


「──いたい!? 何であたしを叩くのさ」


 よろよろと立ち上がった志乃ちゃんに叩かれた。

 なんであたしが。あのスナイパー気取りじゃなくて?


「痛くないの。撃たれたんだよ?」


 自分で立ち上がったけど痛くないんだろうか?

 血が出ないと分かりにくいけど、銃は銃だ。

 志乃ちゃんは土の属性だし、人より膂力は優れているけど、痛いものは痛いはずなのに。アイツを庇う理由もないし。


「死ぬほど痛てぇよ……涙出てんだろ。でも、そんな場合じゃないんだ。早く……」


「何をそんなに」


「ここは真上をエッグが通るんだよ! もうすぐ一周した連中が戻ってくる。こんなとこでもたついてると轢かれるぞ。もしくは、またお前が狙われる!」


 ──えっ


『さあ、新宿周辺を一周したわけですが未だエッグは半分にもなっていません。地上から落としたエッグは即奪い合いの対象になります。見ていて飽きないですが、みなさんもう少しスマートに取れないんでしょうか?』


 この声は……。


『おっ──、姿が見えなかった(みやび)選手です。待ち伏せて一気にかっさらうつもりだったようです! 流石は雅ね。わかってる〜』


 ふわふわの芝居がかった台詞の後に地鳴りのような音が聞こえてくる。足音。それもかなりの数が、ものすごいスピードで接近してきているようだ。


「ほら見ろ。言わんこっちゃない……」


 志乃ちゃんを抱えての移動は無理だ。

 かといって何人いるのかも分からないヤツらを相手にするのも無理。


「早くここから離れるぞ。急げ」


 建物の中に逃げるのがいいか?

 浮いてるのを取ろうとするヤツらに見つかるかな。

 いや……狙われるならあたしだ。


「何屋さんかは知らないけど、志乃ちゃんそこのお店にいてね。あたしもアレが欲しくなった。ふわふわも呼んでるし、ちょっと遊んでくるから!」


 肩を貸さなきゃ歩けない志乃ちゃんには、あたしを追ってくるのは不可能だ。

 自分で動けないとなれば、亜李栖ちゃんに連絡するだろうしユッキーもいる。今を乗り切ればね。


「勝手なこと言ってんな! やっと見つけたのに。また、1人でいなくなんな!」


「迷子になったのはあたしではなくみんなだと言ったではないか。大丈夫……すぐに戻ってくるよ」


「──雅!」


 あたしに注意を集めて志乃ちゃんから引き離す。

 別にいらないけどエッグも貰おう。というか、イベントとやらを終わらせてやる……。

 ふわふわの遊びに付き合っている暇はないのだ。


「まったー。ここからはミヤビちゃんも参加してやる。最初に言っておく。残りのエッグは独り占めするつもりだ。あたしから取れるなら取ってみろ」


『……あら、雅が遊んでくれるの? それじゃあ少し、難易度を下げてあげましょうか』


 地上から10メートルくらいの高さに、土色の足場が生成されていく。建物と建物を繋ぐように。どこまでもどこまでも。

 あの足場からなら届くヤツもいるだろう。足場の範囲はエッグが流れていくところ全部か。


『もう少し引っ張りたかったんだけど、本当に全部持っていかれそうだから』


「それでも全部貰うけどね」


『それならそれで構わないわよ。エッグを沢山手に入れれば、雅の調子悪いのも関係なくなるわよ?』


「……どういう意味?」


 調子が悪いのは気づかれてたか……。

 まぁ、あれだけ逃げ回っていたらバレるか。


『あぁ、雅は1つしかエッグを使ってないのね。2つ目以降のエッグはね。魔力量の増幅。主に器の強化が目的なのよ。器が優れていれば、より質のいい武器が出来上がるからね。そしてエッグによる力の増大は使用者の力が増えているようで、実は違う。増えているのは使用者とは独立している力なのよ』


 フウちゃんの言ってた、独立している力というやつだね。よく分からない部分があると言ってた。それはエッグによる部分のことなんだ。

 そして独立しているってことは、もしかしてリストバンドは関係ない?


「ふわふわ。参考までに聞くけどさ。エッグを大量にゲットしたとするよ? その場合、増えた力は魔法の才能とか関係なく使えるのかな?」


『そうよ〜。そうじゃなくちゃ素人に魔法を覚えさせるなんて出来ないじゃない』


 ──決定!


「ありがとう。どうすればいいのか分かったよ」


 黒ウサギがあたしに何をしたのかも分かった気がする。あいつはエッグの力が前に出るようにしたんだ。

 そして、それが答えだ。独立した力なら自己の制御は関係ない。


 あのエッグを1つ手に入れるたびにミヤビちゃんは強くなる。そういうことだろう?

 今までの魔法は使えないかもだけど、なら1から魔法を作るだけだ。


「ゲームを進めれば強くなると。なるほど、ようやくクソゲーではないと感じたよ」


 魔法を作るか……。

 少しわくわくしてきたよ。



 ♢



 正解だ。エースのお嬢さん。

 その呪いはすぐには解けない。


 呪いの肩代わりを望まぬお嬢さんが、それでも力を欲するなら、違う理論で動く力を手に入れるのが手っ取り早い。

 才の無い者に力を与えるためのエッグではあるが、才の有る者が使えないとは言っていない。


 すでに器としては完成しているお嬢さんではあるが、それを満たす方法がなかった。

 エッグを与えるのが最も簡単かつ確実な方法ではあったが、表だってそんな事もできなかった。


 しかし、それは達成される。

 アイリには感謝しなくてはいけないな。

 この件にオレは関知していないが、意図せずして思った方に物事は進んでいる。


「あとはジャックのお嬢さんをどうするか……」


 プレイヤーたちでは彼女を止められない。

 魔法抜きにしてもだ。困ったものだな。


「剣1つでああも立ち回られてはな。プレイヤーでない彼女には、こちらからでは何も出来ないしな」


 お嬢さん方が結束すれば新宿まで行かれてしまう。

 そうなった場合、エースのお嬢さんはボスキャラを譲るだろう。それでは元の状態に戻ってしまう。


 どうするか……──!


「……このまま眺めていろと? エースのお嬢さんに倒させる手筈では。成り行きに任せると……分かりました。そのように致しましょう」


 まったく。調整も容易ではないと言うのに……。

 勝手と言えばそれまでだが、お嬢さん方を試そうというわけか。


「お好きになさいませ。これは所詮遊戯(ゲーム)なのですから」


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