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 人気者 ③

♢46♢


 1人走っていってしまった(みやび)。残された志乃(しの)たちは追いかけたくても、まだそれが出来ずにいた。


(野郎共がゾロゾロと……鬱陶しい)


(モンスターも入り乱れてになったからな)


 浮かぶエッグを取るのを半分諦めたプレイヤーたち。

 彼らはエッグが手に入らないならせめて、モンスターを倒して経験値を稼ぐことにしたのだ。


「どこいった? ──やるだけやって逃すな!」


「わかってる。経験値もどっか行っちまうし、追いかけようにもモンスター共も集まってきやがる。けど、やられっぱなしで終わらせねーよ」


 そして大量の経験値を発見した。

 動画で高レベルなのは知っていた。

 運営が推すプレイヤーなのもだ。


「近くにはいる。あいつらもモンスターがこんだけいたら逃げられない。寄ってくんの消しながら探せ」


 それに手を出すのは普通だろう。

 何もおかしなところはない。

 しかし、それをさせない彼女たちがいただけだ。


(様子が変なのは気づいてたのに……くそっ──)


(志乃さんのせいではないです。早くこの野郎共を皆殺して追いかけましょう!)


 モンスターも入り乱れての大乱闘。

 何故だが乱闘に慣れている亜李栖(ありす)は上手く立ち回り、プレイヤーたちとモンスターをぶつけ自分たちは距離を取ることに成功している。


「亜李栖。大丈夫なのか? さっきから魔法を使い過ぎじゃないか?」


「そろそろキツいです。しかし、切り札は最後の隠しておくものです!」


 そして切り札を使う。

 ハンドバッグから真っ青なカードを取り出す。

 雲母(きらら)がくれた切り札を。


「目にもの見せてやります。雅さんを撃とうとした罪は重い。その命で償ってもらわなくてはいけません」


「……重い。想いが重いぞ」


「何を言いますか! 可愛い女の子にいきなり銃を向ける。正直100回殺しても収まりはつきません。それをたった一撃で許してやろうと言うのです。破格です!」


「…………」


 やれ、とあきらめ気味にハンドサインを出す志乃。

 破格の一撃は100回分に相当すると思ったが、もう何も言わないことにしたようだ。


「──唸れ聖剣! プレイヤーというクズ男たちに鉄槌を!」


 台詞と共に突如立ち上がる巨大な水柱。

 付近の誰もが回避のしようがない一撃。


「なんだ……」「水?」「おい、まさか──」


 真上から迫る水。それに押し潰され、それが終わった後も水柱は猛威を振るう。

 水は激流のように人もモンスターも巻き込む。


「これでせいせいしましたねー。やったぜ!」


 辺りには何も残らなかった。全部流されていったからだ。

 水の破壊力はかなりのもので建物への破損も多数確認できる。


「今のはアリスですか? 危うく巻き添えを食うところでした」


 その激流を回避したユウキが普通き歩いてくる。

 濡れた形跡もないことから、完全に避けたようだ。


「ごめんなさい。ユウキさんが近くにいるとは知らずに! しかし……流石ですわね。今のを避けるとは」


「……雅は?」


「──そうでした! 急いで雅さんを追いかけませんと。まずは電話して…………出ないです。なら、次はマップで…………」


 雅の携帯を鳴らすが電話にはです、起動したままのアプリのマップに目を通すが、どれが雅なのかの判別はつかない。

 それどころかどっちに行ったのかすら分からない。


「近くには無数にプレイヤーがいますが、どれが雅さんかは分からないです……。どうしましょう?」


「こっちだな──」


 志乃が指差す方向は、自分たちが進むべき方向とは逆。


「志乃さん? 何故こっちなんですか?」


「半分勘だ。後は付き合いからの経験則だな。あいつは考えてないようで考えている。あの取り乱しようでも、プレイヤーの多い方にはいかない。つまり脱出も可能な駅の方に戻るはずだ」


 その勘は当たっている。雅と付き合いの長い志乃は勘だと言ったが、単なる勘ではない。

 そこには間違いないと思うだけの確信があるはずだ。


「すぐに行きましょう。今日の雅は心配です」


「はい、行きましょう!」


 誰も必要ないだなんて思っていない。

 要らない子だとも。


「あいつは気にしすぎなんだよ。少しは信じてこっちに任せろって……。もう守られるばかりじゃないんだ。雅が無理なら、あいつ1人くらい守ってやるのに」


 仲間であるし友達でもある。

 助け合いもすれば想い合いもするのだ。


「きゃーーっ!? 今のは雅さんに聞かせませんと。志乃さん、もう1回言ってください。録音しますから!」


「──やめろ。そして余計な事は言うな。雅はすぐに調子にのるからな! あたしはムダに褒めたり甘やかしたりはしないんだ。絶対に言うなよ?」


「貴女たちは本当に仲がいいですね」



 ♢



 プレイヤーたちを避け、モンスターがいない事を確認しながら前進する。


「まぁ、雅の気持ちもわからんでもないけどな」


「……?」


「あいつはどうせ、『ユッキーにカッコイイところを見せたい!』とか思ってたんだろう。それは出来ないし、ウチらは自分無しでやってしまうしで、ヘコんでたんだろう」


「それは嫉妬ですか?」


「──違う違う。そんなんじゃない。雅は何でも自分で出来るからな。そして世話焼きたがるヤツだ。今日だって、自分が一番魔法を使えるから自分が一番頑張らないといけないんだ。とか考えてたんだろ」


 角では立ち止まり様子を見てから、また前進する。


「1人で頑張りすぎですわよね」


「頑張りすぎですか……」


「公園での一件からずっと。魔法を手に入れた時から、私たちは雅さんに守られてきたわけですし、今でも追いついてはいないでしょう。しかし、もう私たちも戦えるんです。雑魚くらいなら任せてくれていいんです。そうして後ろで、ドーンと構えてくれていいのです」


「あの子には無理なのでは?」


「ユウキさんも分かってきましたね。そう、無理なんです。何にしても自分でやりたいから。意外と目立ちたがりですし。そして、大人しかったら大人しかったで心配しなくてはいけませんからね。ふふふ──」


 ユウキは急に何もないところで立ち止まる。

 どうしたのかと前の2人が振り返る。


「……2人とも今のを雅に直接言わないのですか?」


 投げかけられた質問に、振り返った2人は同じことを言うのだった。

「「恥ずかしいから言わない」」と。



 ♢



 (みやび)を探して移動してきた先で、慌ただしく動くプレイヤーたちを見つけた。


 スマホを片手に散っていく集団。彼女たちは知らないが、彼らはこの渋谷で勧誘活動を行う少年たちだ。

 仲間を増やす目的は不明だが、現在彼らは勧誘活動ではなく脅威の排除を目的に動いている。


「女1人だ。そのまま追い込め。ナメてるのか、魔法も使わないつもりのようだし、すぐに終わる」


 誰を探しているのかはすぐに分かった。

 スマホを片手に持ち指示を出している事からも、いろいろと知っていそう。

 3人は頷き合い、一番腕の立つ者が行動に移す。


「──動くな。声もあげるな」


 正面からピタリと首で止めたれた刀。

 後ろからも足音がするが振り返る事はできない。

 刀を持つ彼女は余計な行動をした瞬間、その刀を振るうだろうから。


「ユウキさんナイス! あとは私が……おい、今の電話。誰を何処に追い込むのか教えろ。必要ない事を喋ったら、テメェをぶっ殺して他のやつに聞く」


 背後から突き付けられた硬いもの。

 カチリと音がしたのを聞いた少年は息を飲む。

 突き付けられたものが銃であると分かったからだ。


「優しく聞いてるうちに答えろ」


 されている側からしたら何ひとつ優しくないが、事がことだけに容赦はないだろう。

 情報を守るために刀も銃も受けるのか否か。


「3……2……1……」


 カウントダウンは冷静さを奪う。


「──分かった! 言うから! その武器をしまってくれ!」


「喋るのが先だ。言え」


「実は……──くそっ!」


 少年は最も愚かな行動に出た。

 一瞬で魔法は発動できた。両手にそれぞれ武器があれば、2人いても対応できるはずだと思ったから。


「馬鹿が……」


 少年は青い弾切れの銃を持つ、後ろの少女に向き直る。攻撃を受けた場合、銃の方が痛みが多いと考えたからだ。刀は1回でも、銃は弾数が続く限り撃たれ続ける。


 しかし、実際には銃に弾はなく、逆に背後になった刀は1回であっても銃よりダメージは大きかった。


「……ぐっ……」


 脇腹に一撃。銃弾よりはるかに強力な一撃を受けた。

 意識があるのがおかしいと感じるくらいのダメージ。


「はい、さよならー。これは借りておきますね。終わったら、お友達に返しておきますので」


 ポンと肩に手を置かれた。一撃でダメージは限界となっていて、少年はフィールドから消える。

 後に残るのは触れた少女への経験値とスマートフォン。


「今の方のフレンドの位置情報ゲットです! 野郎たちの動きを見る限り、これが雅さんだと思われます。それと、私たちもフレンド登録した方がいいですわね」


 要らなくなったスマホは、次に出くわすお友達に返却される。その際、お友達も経験値となりフィールドから消えるわけだが……。


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