人気者 ②
あたしがプレイヤーたちから狙われ、思うように進めないでいたら、更に事態は良くない方へと向かってしまった。
見える範囲全てに湧き出した黒いヤツら。
ふわふわの話からすると、大量のモンスターが現れた! らしい。
確認できる種類はプルプルしているやつ。四足歩行しているやつ。あと……ペンギン?
「アレはペンギンかな? クチバシと羽はあるけど飛ばないし」
「ペンギンはあんなデカくない。それにあんな足も手もしてない! 能天気なこと言ってないで、邪魔だから退がってろ」
ペンギンの身長は志乃ちゃんくらい。
だいたい165センチくらいだと思う。
手は羽のような形。ギザギザしていて、鋭い爪。
足の爪も鋭い感じ。ひっ掻かれたら痛そう。
「せめてペンギンに撃つんだった……」
ミヤビちゃんはもう弾切れ。
全弾撃ち尽くしてもプルプルには効果なかった。
あたしは物理攻撃力は皆無だし、本当に邪魔でしかない。
「ピエロはゼリーみたいなやつは潰してた。こいつでもやれっかな?」
志乃ちゃんは大楯を振り回す。
近寄ってくるプルプルは斬れはしないがビチャとなり地面に落ちる。
これで近距離のモンスターはいなくなった。
そしたら籠手の手の方に盾を持ち替えて、更に振り回す。なんか……志乃ちゃんの手が伸びているように見える。
「ロケットパンチ? いつのまにロボになったの?」
気のせいではない。伸びている。
あの籠手は絶対金属だったのに伸びている。
「切り離してないだろ。伸びてるのは握ってる部分だけだ」
何それ……。
振動を発生するだけでも意味不明なのに、指先が伸びるの?
何を見て志乃ちゃんはこんなの作ったのか。謎だ。
「つまりこんな使い方もできる。ふせてろ」
「……?」
言われたように屈んだら、こっちに走ってくるペンギンたちに伸びた指が刺さる。
伸びる距離は5メートルくらい。鉄の指はペンギンを貫通し繋げていく。
10匹くらい串刺しにしたところで、
「────おらっ!」
っという掛け声と共にぶん回して、辺りのモンスターたちにぶつける。
遠心力プラス、土属性の膂力。
モンスターでできた即席ハンマーがブン回される。
志乃ちゃんもまあまあヒドい。
「ふぅ──、これで近くのは全部倒したな。亜李栖たちの方にいくぞ」
そしてあの籠手はこわい。
伸びるのもこわい。鉄なのもこわい。
アレは防具ではなく紛れもなく武器だ。
「うん。向こうは心配なさそうだけどね」
モンスターたちによって分断されたあたしたちだけど、当然あの2人はモンスターたちにも容赦など無い。
「とりゃゃゃゃゃゃ────」
水柱は10メートルは立ち上がるようになっている。水かけ遊びから、鈍器にレベルアップしている。
切断できないので刃物とは言えないけど、鈍器は鈍器で凶器だから……。
「……ふふふふっ……もう少し。あと少しでイメージ通りの一撃が撃てそうです。ふふふふっ……」
今のでモンスターたちの包囲の一箇所に風穴が空いた。
邪悪な聖剣使いの亜李栖ちゃんによる一撃が道を切り開く。
「雅が先に行きなさい。殿は私が務めます。ほら、──早く!」
無数の四足歩行モンスターを、一瞬で斬り捨ててユッキーが現れた。
ユッキーの刀は普通のものなのに。エッグによる魔法と変わらない。
使う人間が優れていれば魔法の有無は関係ない。
あたしもユッキーのように武器が使えたらな……。
「……雅?」
「はい。役立たずから先に避難します」
みんなごめんね。肝心な時に役に立たなくて。
やっぱり今日は来るんじゃなかったのかな。
お留守番してた方が良かったかな。
「シノ。雅を引っ張っていってください。アリスは討ちもらした分をお願いします」
「──任せろ」「──お任せを!」
ユッキーを助けるどころか逆に助けられている。
情けなくて涙出そう。
使える気がした魔法も、結局は使えない。
「ドレスコード。起動──」
そしてユッキーを消耗させている。
女の子1人すら満足に守れないとか死にたい……。
「雅、その顔は何ですか……。貴女が魔法を使えないのは分かっていました。しかし、だからといって自分は必要ないだなんて思わないでください。貴女は必要です」
「ユッキー……」
「早く行きなさい。ここは火の海になりますから」
赤いドレスから溢れ出す炎が刀に集まっていく。
それをこの場所一帯にかますつもりのようだ。
「ほら、ユウキに任せろ」
「うん」
ユッキーの魔力量は少ない。
あたしと比べると、あたしはユッキー100人分。
ユッキーはあたしの100分の1しか魔法を使えない。
それなのにあたしは役に立ちもしない。
新宿まで行けてすらいない。ボスキャラまで着いてもいないのに。
「一閃・火天」
ユッキーに魔法を使わせてしまった。
ポーションとこの場所の力を合わせも、あと数回がいいところだろう。
「雅さんを第一に行きますよ。モンスターは私がヤりますから、志乃さんはその他諸々お願いします」
「分かった。お前はしっかりしろ。さっきから気にしすぎだぞ?」
そうは言っても足手まといなのはあたしだけ。
気にするなというのは無理だ。
今日のあたしは何もできていない。
これじゃあ、いなくても変わらない。
♢
モンスターの包囲を抜け、情けなくユッキーだけを残し逃げ出してきた。未だかつてないくらいにショック。
悪い雅になりそう……。
「ありゃ無理だわ。風船追っかけるより、近くのモンスター倒して待ってた方がいいわ」
「──だな。まだ誰も取れてないしな。あのペースじゃ1時間しないで戻ってくるぜ」
人が真剣に悩んでいるのに……。
この軽い。チャラいヤツらは何?
ゾロゾロと連なって歩きやがって。
「……えっ、こいつさっき紹介されてたヤツじゃね?」
そして人をこいつ呼ばわりだと。
こいつら舐めやがってーー。
ぶっ殺してやる! のは無理なんだった……。
「知ってるか? 強いプレイヤー。レベルの高い奴を倒した方が経験値は多いんだ」
急にチャラいやつの手に現れる。黒い塊。
その引き金を引くのに1秒も掛からない。
──銃! マズい……何もできない。
「──いきなり何しようとしてんだ、テメェら! ぶっ殺ろすぞ!」
横のモンスターを倒していた亜李栖ちゃんが飛んできて、そのまま銃を構えた1人が聖剣の餌食になった。
「──前見て歩け!」
志乃ちゃんが盾を構えてあたしの前に立つ。
あぁ、2人にも迷惑をかけている……。
「ごめんなさい。役立たずでごめんなさいーー!」
「──雅?!」「どこいくんですか?!」
役に立ちもしない。いなくても変わらない。
迷惑ばかりかける要らない子は、みんなとはいられない。
「──テメェら邪魔だ!」
「くそっ……追いかけようにも……」
♢
どのくらい走っただろう。
息も続かなくなり、歩くことにした。
「……はぁ……はぁ……ここはどこ?」
来たことがない道。知らないところだ。
大きな道に出て、駅まで行けば帰れるかな?
「ねぇ、志乃ちゃん……」
そうだった。
1人で走ってきてしまったんだった。
どうしよう……みんなが迷子になってしまった。
「こっちだ! 見間違いじゃない。確かにいた」
……なんだろう?
「──いたぞ! 動画のヤツだ。目的は新宿だな? 絶対に行かせるな!」
その無数の銃は何? 人数多くない?
そして誰を狙っているのかな?
キョロキョロしてみたけど辺りには誰もいない。あたししか。
「コイツにボスキャラを倒させるわけにはいかない。アレを倒すのは、最初からやっているオレたちだ!」
そんなの知らないけど。
早い者勝ちじゃないの?
「今日のエッグの入手も必要だが、可能性のあるヤツを消すのも必要だ。やれ!」
まさか……撃ってきたりは……しないよね?
「いやーーっ?! 今日のミヤビちゃんに戦闘力は無いんだぞ! そんな集団で襲ってくんなーー」
走らないと! 撃ち殺される!




