作戦会議 ②
タワーマンションにはL字型の高級なソファーがあるんだ。テレビがあり、その前にこれまた高級そうなテーブルがあり、このソファーがある。
ちなみにご飯はダイニング部分で食べている。つまり、ここはリビングダイニングというやつだと思う。
前置きはこれでいいだろう。
作戦会議が行われている現在、あたしはある事が気になってしまって集中できない。
まずソファーに座っている順を説明すると、ユッキー、フウちゃん、志乃ちゃん、姉、あたし、亜李栖ちゃん。となっている。
何故だかフウちゃんが、ものすごーく警戒してしまっている。あたしたち端の2人を。
そのくせ志乃ちゃんにはべったりしているという、謎の状況になっている。
あたしは何とか、ユッキーとフウちゃんの間に入る方法はないものかと、それを真剣に考えている。
よしよしがマズかったのか? はたまた別な要因か……謎だ。
マジギレした志乃ちゃんを怖がるなら理解できるけど、優しくよしよししただけのあたしたちが警戒される理由はないと思う。
「……話聞いてないな。ミヤビちゃん。正直に言えよ。今の聞いてたか?」
「聞いてたよ?」
本当は何も聞いてない。
雲母さんが喋っていたとしか分からない。
「じゃあ、何でフウを連れてきたのか言ってみろ」
可愛いからじゃないのだろうか?
重苦しい作戦会議の空間に可愛さをプラスして、場の空気を和ませたりするためだ。間違いない!
「可愛いから!」
「──そんなわけないだろうが!」
「──いてっ!? 隣にいるからって叩くなよ!」
「緊張感のカケラもないな! どんだけチビ助に夢中なんだ。アリス、お前もだぞ!」
ついでに亜李栖ちゃんも注意を受ける。
しかし、叩かれたのはあたしだけ。不公平だ!
「はい。申し訳ありません。雅さんもこれ以上、フウちゃんに嫌われたくなかったら真面目にやりましょう」
すごく普通なことを言われた……。
これは切り替えて真面目にやった方がいいようだ。
「あたしも真面目にやります」
無策では黒ブタマンに負けてしまうしね。
同じヤツに2回負けるとかあり得ないから。
「今までは真面目にやってなかったと自白しわけだが、まぁいい。大事なのはここからだ。チビ助、用意するから手伝え」
「そいつらに近づきたくないからイヤだ。フウはここから動く気はない!」
「じゃあ席替えだな。ミヤビちゃんとアリスを、ユウキとシノと入れ替えよう」
「──えっ。そ、そんなことしないよね?」
何それ。是非やろう。
あたしは願ったり叶ったりだよ。
「そんな事はさせないし、仮にもしあいつらが何かしそうになったら、またブン殴ってやるから大丈夫だ」
「しの……。わかった。しのが言うならやる!」
志乃ちゃんめーー!
自分だけ懐かれてズルいぞ。
あーーっ! フウちゃんもそんな……。
ユッキーにしたみたいに抱きついちゃうの?
「何でもいいから早くやれ。パソコン持ってきて映像を出せ」
「ちょっとまってて」
パタパタと走っていくフウちゃん。
その後ろ姿を黙って見送るあたしたち。
可愛い。見ているだけで癒される。
しかし、見ているだけなんて嫌だ。仲良くなりたい。
「ねぇ、志乃ちゃん。フウちゃんに好かれるのに、なんかコツとかあるのかな。あるなら教えてくれないかな?」
「あんまり構うな。しつこくするな。あと、抱きつこうとするのもやめろ。なでんのもだ。普通にしろ、普通に」
「わかった。実行してみるよ」
なるほど。普通にしていて、ガバッと捕獲するということか。流石だな志乃ちゃんは。
「それは間違ってるからな? 今度は本気でブン殴るぞ」
「……なぜ、あたしが考えていることが?」
「だいたい表情見てれば分かる。ロクでもないこと考えてる時は特にな」
マジか……。
志乃ちゃんがいたら、あたしは悪い事できないらしい。
「よく見ているな。感心、感心」
「あんたも雅たちをけしかけるのをやめろ。ユウキ、次やったら雲母さんをブン殴ってくれ」
「むっ……」
ざまぁ──。と言いたくはあるけど、言ったら殴られそうなのでやめておこう。
「そうですね。先ほどはフウが可哀想でした。雅たちもフウが嫌がる事はやめてください」
ユッキーが少し怒ってる。
妹をいじめられたお姉ちゃんな感じ。
「──やめます。二度としません。だから、嫌いにならないでーーっ。ユッキー」
「もうやらないのであれば、今回は大目に見ます」
「やらないよーー。二度とやらないよーー」
ユッキーに嫌われたら死ぬしかない。
だからもうやらない。
「効果バツグンだな。最初からユウキに頼めば良かった。これからも雅がおかしな事したら、ユウキに言おう」
♢
フウちゃんが持ってきたパソコンがテレビに接続される。
映るわけないじゃん。そう思ったんだけど、パソコンの画面がテレビに表示される。
「……テレビって、いつからこんなことになってたの?」
「こんなこと?」
「パソコンの画面がテレビに映ってる」
パソコン持ってないけど、スゲェと思う。
大画面にこうして映し出されているのが。
「ゲーム機の画面がテレビに映るのと同じだよ。HDMIケーブルが繋がればどのテレビでもできるよ」
隣の姉の代わりにパソコンを操作しているフウちゃんが答えた。
「HDMIケーブルとはなんぞや?」
「みやびはローテクな人なの?」
「ハイテクな人ではないから、ローテクな人なんだろう」
「残念なヤツか。みんなは分かるよね?」
1人としてフウちゃんに答えない。
みんな残念なヤツらしい。
「私は分かるぞ。パソコンは仕事でよく使うし、今は携帯にも使うからな。充電器も先がこれになってるぞ」
「1人だけだと……」
姉は分かるらしい。だが、他はやはりダメらしい。
確かに機械に強いイメージは全員にない。
「ゲームとかやらないのか?! 今のJKは!」
またフウちゃんが謎の言葉を発した。
この子は難しい言葉を使いたいのか。そういう年頃なのか。
「志乃ちゃん。JKとはなんぞや?」
「分からない」「私も分かりません」
みんな知らないようだね。
ユッキーに至っては、そもそも興味がないらしい。
「くだらないこと喋ってないで、早くしろ」
「なんで手伝わないくせに偉そうなんだよ!」
そうだね。姉はフウちゃんが率先してやってるのを見たら、普通に座ったからね。
もう丸投げだし、立ち上がる気も無いみたいだし。
「JKって何?」
「女子高生だろ? まさに自分たちじゃないか」
なるほど。
しかし、なんか如何わしい感じがする呼び方。
「用意できたよーー」
「よし、まずはこないだの戦いを見てみよう」
巨大なテレビにデカデカとあたしが映る。
街はボロボロ。世界の終わり感が出ている。
これ、こないだの……。
新宿で戦ったやつだ。
「──どうしたのこれ?!」
「めっちゃ拡散してるよ? フルのやつじゃないけど。みやびは今や人気者だよ」
「知らぬ間に有名人になっていた!」
どうしよう。サインとか求められたら。
考えておかなくちゃ!
ペンも買っておかないとかな。
「みやびー、手だして?」
「握手かい? どうぞどうぞ──」
はっ──、ユッキーと約束したばかりなのに。
フウちゃん。いけない……よ?
「…………えっ?」
フウちゃんは握手せずに、あたしの手首になんか見た事あるやつを装着する。
緑のリストバンドの他に、青いリストバンドも付けられた。それも両手に。
「これでよし! きららー、リストバンド付けたよ?」
「さも私が指示したみたいに言うな。どういうつもりだ、風香」
急に体が重くなった。
それに変な感じだ。力が入らない。
「これは必要なことだよ。悪意はないから勘違いしないでね。フウはこれを見て、みやびカッコいい! って思ってた。でも、みやびではボスキャラに勝てない。だから邪魔したし、リストバンドを付けた。明日戦うのは、みやびじゃない」




