チームワーク ③
魔法に属性を付け足し、不利すら打ち消すことができる雲母。対する雅には風の魔法しかない。
「諦めたらどうだい? ミヤビちゃん1人では無理だ」
勝っているものは何も無い。
これでは勝利は訪れない。
だが、これを諦める理由にはしないし、諦めはしない。
「みんなは来る。絶対に来る!」
凍りつき身動きを封じられている雅以外の3人。
各個撃破が雲母の目的。目的を達成するには、残る1人を撃破するか、諦めさせるか。
「こないよ。仮に来たとしてもユウキは魔力切れ。どの道、キミらの負けだ」
拘束が成功している時点で、雲母に勝ちは見えている。
「だったら、──あたしが勝つだけだ!」
ヘリポートより外で、空中で闘っている2人。
雅は3人から雲母を引き離し。雲母は3人から雅を引き離したかったから、こうなることに不思議はない。
「ミヤビちゃん。キミは1人で闘ってる今の方が強い。足手まといがいた時より、ずっと動きが良くなった」
繰り出される攻撃を受けての感想。
観察し、得た結論。
「そんなことない……」
「あるよ。ボスキャラとの闘いも、最後は1人だったじゃないか。キミの魔法は誰かのための魔法ではない」
今の雅には力の制御が欠けている。
誰かがいては十分に力を振るえない。
傷つけなくてもいいものまで傷つけてしまう。
「チームとしても個人としても修行不足。諦めなさい。素直に言う事を聞いて、時間をかけて力をつけろよ」
真っ当な、反論の余地のない言葉。
「今は無理だ。キミもユウキも、いくらだって強くなれる。初心者2人も同様にだ。ボスキャラに挑むのはやめて、強化合宿に戻るべきだ」
「──嫌だ。強化合宿は続けるよ。でも、ボスキャラにも挑むし、というか倒すし」
悟す言葉も意味をなさない。
雅は決めた事を曲げるつもりがない。
「やはり2、3日動けないようにするしかないか……」
「やってみろ! ──旋風」
放たれる風の魔法。
切り刻むはずの沢山の風は全てことごとく、物理的に破壊される。
「手持ちの魔法では無理だと言ったろう……。見苦しいだけだ」
「うるさいぞ怪獣め。自分だって、あたしに触れないじゃん!」
これも事実。距離を保ちながら闘う雅に、雲母は近寄れないでいる。ある要因により詰めきれない。
「その靴だけは未知数だ。飛んでいるわけではなく、滑っていると表現した方がいいな。空中で、こうも自在に動かれてはね。上手く近寄れない」
自分の有利な空に出ればと考えた雅だが、雲母にも足場を生成しての空中移動が可能だった。
それでも距離は縮まらずにいる。
「しかし、ずっと動いていなくてはいけないし、消費も安くはないな。いつまでもつ? いつまでそうしていられる?」
「──あと5分くらい!」
「言っちゃうんだ、それ。時間切れも近いか……それを待つのもなんだな」
何もない空間に手を入れ、取り出されたモノ。
ユウキと同じ方法。保管場所から出し入れする魔法。
そしてストレージから取り出される、真っ青な古い型の銃。
「何……それ……」
雅は感じたことのない力を感じた。
手のひらに収まるくらいの小さな銃から感じる、得体の知れない力を。
「なんだろうな」
雅に答えることなく引き金は引かれる。
「──撃ちやがった!」
でも、弾の軌道は見えていた。
「私のスタイルとは合わないんだが、遠距離型と闘うには役に立つんだ」
難なく弾丸を回避した雅だが、避けた弾には仕掛けがあり弾け飛ぶ。そして周囲を凍らせる。青い雫と同じように。
一瞬のうちに散布された効力の範囲内の全てを。
「そんなふうに凍って動かなくなるからな」
左足が凍りつきバランスを失った雅に、飛び続けるのは無理になってしまった。
「足が──」
「降参しな。落ちたら死ぬぞ」
「ぐぬぬぬぬ……──いやだ!」
落下を止めることはできずにいるが、嫌だと口にする。手を使い風を発生させ浮き上がる。
「機動力も削いだのに諦めが悪い。じゃあ、しょうがない」
新たに3回引き金が引かれる。
飛び出した弾は青いものではなく、銀色の弾丸。
「──痛い! 撃たれたーー、死ぬーーっ!」
「死にゃしない。死ぬほど痛いけどな」
♢
「冷たい……冷たくて死にそうです」
「このくらいで死ぬか!」
脱出の算段はついた。あとの手はずも決定された。
「シノ。冷静さを欠いては、出来ることも出来ませんよ。冷静にです」
「わかってるよ……」
志乃の左手に光が灯る。
握られたエッグが使用されたのだ。
「生成には時間が必要なようですね。その間に貴女は最終確認をしておきましょう」
志乃は目を閉じ、うなだれてしまう。
「これは寝ているのでしょうか?」
「おそらく違いますね。意識だけが、内部に入っているのでしょう」
不相応なものを願った代償。
魔法の強化ではなく、新たな得物を作り出す代償というところだろう。
「シノはその盾を欲したわけではなく、願えばやってくれると聞いたと言っていました。誰がやってくれるのでしょう? 不思議に思いませんか?」
存在自体が不思議な卵。
その用途は異なってしまっているが、作り出した男にはそのくらいは許容範囲。
……エッグを使用した際の、僅かな空白の時間を紹介しよう。
♢40.5♢
『やあやあ、呼び立ててすまないね!』
真っ白な長い髪の、赤い眼をした男? らしいヤツが目の前にいた。
声が男だから男だと思うけど、無言だったら女に見える。
『ボクは男だよ。というかボクたちは男しかいない。理由はね。適合率とか、渇望とか、────────etc.』
長い……。1人で喋ってる。
これは永遠と続くのか?
『……およ? そんな話をしにきたわけじゃなかったね。ごめんごめん! クセでね』
「なんなんだ、オマエ」
『あっ、自己紹介もまだだったね。カムイと言います。仲良くしてね?』
「……無理だろう。いろいろと無理がある」
なんなんだろう。
このテンションの高いヤツは……。雅みたいだ。
『ふむふむ、それがキミの願いか……。友達のためか。素晴らしい理由だ! ボクはとても感動したよ! だから、キミの望みを叶えよう』
「筒抜けなのか?」
『当たり前だろ? だって、ここはキミの中だ。そんなことより、何がいいだろう。今あるのは盾だろう? ……剣、槍? 弓は意味ないし、 状況を打破するかつ、みんなの役に立ちたいか……』
知らないヤツに口に出して言われるとか、ハズッ!
──あっ、これも筒抜けか!
『大事だよ。友達っていうのはね。何も恥ずかしことなんてない。うんうん、良い子だ。特別にスペシャルなモノを約束しよう! 足りない魔力はツケにしておくよ』
「意外と良いヤツ?」
『そうでもない。何万、何十万人と殺してきたからね。ボクは悪いヤツだよ。良いヤツだとか、信用できるヤツだとか思ってはダメだ』
信用はできない。胡散臭いもん。
『んーーっ、正直者だね! しかし、人間らしい。予定とは違った使い方になっているが、これはこれで面白い! となれば、ボクはボクとしてやるだけだ』
いちいち、長い……。




