チームワーク
空域制御──。箱を生成。
内部を掌握。範囲内の気圧を操作。
「先手は譲ろう。どこからでもかかってきたまえ」
全員の位置を確認。対象者の周囲の抵抗減。
敵対者の位置を確認。対象の周囲の抵抗増。
「私が前に出ます。アリスは後ろに」
次にルート作成。残りは自然な流れを維持。
「お任せを!」
第1。第2。第3段階クリア──。
「2人はやる気満々だな。仕方ないか……」
そうだよ、志乃ちゃん。
こうなったらやるしかないんだよ。
「──よし、いこう! 戦闘開始!」
ユッキーが前に、その後ろに亜李栖ちゃん。
あたしは空域を維持しながなら様子見。盾持ちの志乃ちゃんとともに、雲母さんから距離を取って……。
「雅、何かくるぞ!」
一瞬、雲母さんはこっちを見た。
意味があるようには思えなかったけど、今の感じは。
「志乃ちゃん。上だ」
どうやったのかは分からないけど、何か降ってくる。キラキラ光って見える。無数の何かが。
なんだろう……これ。
小さくて尖ってる、まるで針みたいな。
「──水か? 雨にしたって」
針のようなに尖った水が降ってくる。
回避か防御。どっちが正解だ。
広範囲すぎるし、志乃ちゃんの盾を傘みたいにしても防御できないかもしれない。
怪我したら、ボスキャラどころではなくなってしまう。なら、ここは回避が正解。
「志乃ちゃん!」「うぉ──」
志乃ちゃんの手を掴んで後方に緊急回避。
やっぱり針が正しい。落ちたら液体に戻ってる。
「急に引っ張んなよ。ビックリするだろ」
「ごめんね。でもね、回避が正解だよ。怪我したらボスキャラ以前の問題だし。これは雲母さんは本気だね」
ユッキーたちと分断された……。
今いるヘリポートは、今日はそのままだ。
伸びた足場は存在しない。
つまり、四角い範囲しか足場がない。
「また、何かくるぞ……」
まただ。志乃ちゃんの方が反応が早い。
昔からそういうところがあったような気もする。
「魔法の気配がない。どんな仕組みなのかな?」
空域内に異常はない。
何も不自然なところはないのに。
「気配はあるぞ。何かはやってる」
あたしにも分からないのに、志乃ちゃんは分かるのか。勘はいい方だと思ってたんだけどな。
「ユッキーたちに合流しよう」
「まとまってた方がいいか……」
魔法の位置が分からないから、走っての移動は不利。なら、予想を裏切る移動方法をしよう。
「もう1回ごめんね」「わぁ──、飛んでる!」
作っておいた道を使って移動しよう。
足りない分はジャンプして届くようにしよう。
「雅、飛んでる!」
「飛んでないよ。予め作ったレールの上を走ってるんだよ」
「嘘つけ! お前、足動いてないぞ!」
「……じゃあ、滑ってるんだよ」
この靴を使ってね。空域内なら道は自在だし、その道もあたしにしか見えない。
自然の空気の流れにも乗れるし、これは便利──
「──前だ! 前に何かあるぞ!」
「……嘘。何もないよ?」
道は見えてるし、遮るものもない。
流石に気のせいじゃないの?
「「──きゃ」」
なんかにぶつかった?! 何もなかったのに。
そしてマズい……レールから落ちた。
「なんか落ちてるけど?!」
「ごめん。レールから落ちた」
「──なんとかしろ!」
なんとかって言うけどさ。
空中だし、近くに他のレールもないし。
人間2人分の重量を、今の状態で浮き上がらせるのはやめた方がいいな。
始まったばっかなのに、空域内の風を大きく消費してしまう。
「しょうがないなぁ」
「──おい、何すんだよ」
「お姫様抱っこだよ」
志乃ちゃんはこうして捕まえておいてと。
落ちてるけど、下に足がつく前に空域を操作。
短くていいから斜めに足場を作って、そこに乗る!
「よし、落下はしなかった。これで、もう1回レールに乗り直して……」
「落っこちると思った……」
「そうなってたら痛いじゃ済まなかったね」
空中に何かいる。
あたしには分からないけど何かがいる。
♢
「姉さん、今のはどういうつもりですか!」
いったいどうして……。
「アイツも、お前を行かせたくないんだろ」
そうなんだろう。
姉さんが指示したわけではないんだろう。
「そこです!」
「──アリス」
いいタイミングです。
ちゃんと私たちの動きを見てましたね。
「生身の人間に躊躇なく剣を振れるか。度胸あるなぁ」
「全然斬れないじゃないですか! 皮膚が鉄なんですか?!」
土の魔法による硬化。大したことのない魔法ですが、それは使う人間による。
剣を受けられるなら、それはもう凶器と変わらないだろう。
「余計なことを考えてるとは、ずいぶんと余裕だな」
アリスの剣を捌きながら、こっちにまで攻撃を?
受けるのはマズイのに避けられない。
「──くっ」
重い……。腕が鉄の塊みたいだ。
これでは、下手すると一撃もらえばお終いですね。
「そんなもんか? それとも……その程度なのか。こないだの方が、──ずっとマシだったぞ!」
雅の魔法が発動しているのに。
動きのキレがさほど落ちない。
「──ユウキさん!」
そして押し負けるどころか、手に痺れまで残って……。
「アリス。キミも人の心配をしてる場合か!」
「きゃあ──」
姉さんは本気だ。
アリスではあの攻撃を全ては捌けない。なら、私が助けなくては。
「一閃」
あの炎があったなら……。
そう思うのは私の弱さだろう。
「──おっと! 少しはやる気を出したか?」
「二閃」
いや、魔法が無いからこそ磨いた技が私にはある。
信じなくてどうする。己を。
そして魔法が無い私に与えてくれた、姉さんのくれた魔法を。
「赤の女王。冠するは火。燃ゆる朱」
ドレスコード起動。
赤の女王の名に恥じぬ火と朱を。
「……それを使わないのは、それも忘れてしまったのかと思っていたよ」
忘れてなどいない。ただ、使う機会がなかっただけだ。
炎を必要とするだけの相手がいなかった。
「二閃・炎炎」
本当は違いますね……。
きっと、心の底では恐れていたのだろう。自分に纏わりつく炎を。
「すごい……」
「少ししか持ちません。隙あらば攻撃を」
長時間の維持は無理だ。
かといって攻めきれるとも思えない。
「──八岐大蛇」
こんな大技まですぐに出してくるなんて。
水には土。しかし……。
「相性で有利を取れ。足りないものはそうして補と、私は教えたはずだが?」
「私は今、ちゃんと自分たちに足りないものを補っています。選択に間違いはないし、このドレスに迷いもない」
「……そうか。なら、遠慮なくいくぞ」
八つ首の水の龍。魔法に込められた力は膨大だし、ただ首を斬ったところで意味もない。
『ユッキー。亜李栖ちゃん。いち、に、さん、で左右に別れて!』
教えられた訳でもないのに、貴女は会話の技術を習得しましたか。
向かい合った回数の方がまだ多い。けど、頼れる者だと知っているし信じられる。
『いち』
なら、その言葉は裏切らない。
「四閃・陽炎」
これなら姉さんといえども注意する。
余所見など、雅の邪魔などさせません。
『に』
♢39.5♢
どうして同じ技を使うのですか?
『カッコいいからだ! それにな。これだけはほめられた!』
そのせいで負けて、笑われてもですか?
『……あいつは性格がわるいんだ。たのむから、優姫はあんなふうにならないでくれよ?』
あれはツンデレだと、──が言っていました。
きっと……好き……なんだと……。
『のーこめんとだ……』




