7月29日
♢39♢
おはようございます。ミヤビちゃんです。
今日は起きたら10時過ぎてました。
起きてはきたが、未だに眠いです……。
「──雅。おい、雅! ダメだな」
「夜更かししたんでしょうか? ユウキさん。どうなんでしょう?」
志乃ちゃんと亜李栖ちゃんは、今朝戻ってきたらしい。
ぐっすり寝ていたので知らなかった。
「夜更かしはしていなかったと思います。隣で寝たので間違いないです」
「「…………」」
そう、昨日はユッキーと2人で寝ました。
最初はドキドキして、「──ヤベェ、眠れないぜ!」と思っていたんですが、ユッキーはさっさと寝てしまうし、気づいたら私も寝ていました。
「──ちょっと雅さん! 自分だけで何をしているんですか。そういうことは、私がいる時にしてください!」
「私がいる時ってなんだよ……。それで雅は、また寝れなかったのか? そんなんなら、最初からやんなきゃいいのに」
現在、遅い朝練中。お昼までの予定で、みんなはメニューをこなしています。
「眠い……。もう、帰っていい?」
眠れない時はずっと眠れなかったけど、眠い時はずっと眠い。夏休みらしく二度寝、三度寝としてもいいはずだ。
「いいわけねーだろ! 明日ボスキャラに挑むんだから、少しでも特訓するんだよ!」
「1日じゃ何もできるわけないじゃん。みんなも寝てさ、明日に備えようよ」
どうせなら調子を整えて挑もうよ。
1日は24時間しかないんだよ?
そんな短い時間では何もできません。
「──んっ? 志乃ちゃん。今さ、明日って言わなかった?」
「雅さん。まさか何も聞いてなかったんですか?」
「……何の話。何も聞いた覚えがないけど……」
いつ、そんな話をしたのさ。
あたし完全に初耳なんだけど。
「うつらうつらしてると思ってたが、何も覚えてないとは……。もう、雅なしでやろう」
「なにぃ?! 仲間外れにするなよー、あたしもやるよーー!」
仲間外れ反対。仲間外れなんてしちゃダメだよ。
断固として抗議しなくては──。
「いえ、戦闘となれば雅さんは外せません。むしろ雅さんがキーマンです」
……おや、自分の知らぬ間に頼られるミヤビちゃんになっていたようだ。
いいよ、もっと頼ってくれて。もっと褒めてくれて。
「それもそうだな。怪獣は必要だよな。ウチらには怪獣並みの働きは無理だからな」
「──怪獣とか言うな!」
女の子が怪獣とか言われていいはずがない。
即刻やめさせなくてはいけません。
「褒めてるんだぞ?」
えっ──、褒めてるの。
全然そんな感じしないんだけど、志乃ちゃん的には褒めてるの?
「ニヤニヤしてるからやっぱり違うんだな! 志乃ちゃんの嘘つき!」
姉みたいなことしやがって、そんなところは真似しなくていいのに。
それに、頑張ったらああなったんだよ。だいたいさ、壊したのだって黒ブタマンとクソピエロだよ?
ミヤビちゃんに街を破壊するなんて、できないできない。それなのに怪獣とか言いやがってーー!
「喧嘩している時間はないですよ。いろいろと考えなくてはいけないこともあるんですから」
「アリスの言う通りです。それとも……力を貸してくれると言ったのは嘘だったんですか?」
あうーーっ、ユッキーにそんなこと言われたら……。
いや、こんなことを言わせてしまうなんてダメだ。あたしがダメだ!
「ユウキは、雅の扱いが上手くなってるな」
「ですね。ナチュラルにやってますね」
ユッキーが明日、黒ブタマンを倒したいというのなら、明日倒すだけだ。そうとなれば時間が惜しい。
「よし、やろう。1日で強くなって黒ブタマンをやっつけよう!」
そのための部活的な活動であり、魔法を習っているのだから。コーチがいないけど、あたしで教えられることもある!
「切り替えが早いのはいいが、勢いだけでは勝てないぞ。時間が限られているなら有効に使わなくてわな」
どうらや徹夜作業は終了したらしい。
あれから一度も姿を見せなかった、鬼コーチこと雲母さんが屋上にやってきた。
「ほれ、直したから着てみろ」
徹夜の成果のカードは簡単に投げられ、それを掴んだユッキーはそのまま魔法陣をくぐり変身する。
しかし……やはり変身シーンは見えない。
今日のユッキーはトレーニングウェアだったから、上から着ただけにしか見えない。
やはり解明にはスローモーション機能が必要か。
「防御面に重点を置いた。若干重くなっただろうが……」
「問題ありません。姉さん、ありがとうございます」
少し布地が増えたな。
あたしからの感想はそれだけだ。
違いは、着ているユッキーにしか分からない。
「ならいい。さて、12時まで1時間を切ったな。残り時間はバトってみるか」
ユッキーの試しだね。ならば、ミヤビちゃんの出番でしょ!
「はいはい! あたしがやります!」
「チームだと言ったろ。キミら4人でチームだ。一昨日はなかったものを使って戦えよ」
「……それはつまり?」
「私がボスキャラ役をやってやろう。遠慮なくかかってこい」
雲母さんがボスキャラらしい。
黒ブタマンと同じか、それ以上に強そうだと思うのは気のせいだよね?
「タイム。作戦会議したい!」
「いいぞ。私は顔洗ってくるから」
♢
姉が顔を洗いに下にいった。長くても数分で戻ってくる。
その間では、作戦会議の時間としては短いが、やれることはしなくては。一昨日はなかったものが、今はあるのだから。
「ユッキーと亜李栖ちゃんが前。志乃ちゃんが真ん中。あたしが一番後ろ。この隊列でいくよ。質問は?」
「あとはぶっつけ本番ですね」
「姉の情報が少ないからね。臨機応変に対応しよう。予め武装して、遠慮なくと言ってたし全力でやるよ。ここで負けるようじゃ、ボスキャラには勝てないと思ってね」
ユッキーには雲母さんのことは何も言わないでもらった。情報は多い方がいいけど、実戦にそんなものは無いし、役に立たないかもしれない。
「あたしは、みんなを助けるから」
一昨日、なかったのはチームワークだ。
志乃ちゃんたちはいなかったし、あたしとユッキーは単独プレーだった。
個では届かなくてもみんなでやれば届く。きっとやれる。
「準備はいいかい、小娘共。私は真面目にやる。本当は行かせたくないからな……。口で言ったところで聞き入れないと知ってるから、2、3日動けないようにするつもりだ。そして、その間にアレを殺しにいく」
「うん、やけに素直だからそんなことだと思ってた。だけど、それじゃあユッキーの望みは叶わないから抵抗する。あたしたちも本気でやる」
振り返らなくても分かる。
声を出さなくても分かる。
ここで諦めるような素直な子は1人もいないって。
「決まりだ。学生らしく残りの夏休みを過ごさせてやるよ」
「残念ながら世界を守らなくてはいけないのだ。夏休みしている暇なんてないよ」
あたしにだって背負うものと、背負いたいものがあるんだ。そのための邪魔は押し通る。




