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 外装魔法 ⑤

「これ、お前がやったんだろ?」


 あたしを助けに来た志乃(しの)ちゃんは、辺りを見てこう言う。

 道路はせり上がり建物は穴だらけ。ガラスなんかは全部割れていて、災害後みたいだからだね。

 亜李栖(ありす)ちゃんは、姉のよこした青いカードと格闘中。


「違うよ。また、悪い雅が顔を出したんだよ」


「……わかった。なら、そいつを出してくれ。やり過ぎだと説教しなくてはいけないからな」


「あたしも怪我してるよ? ほら、ちゃんと見て。こことか肉ないよ?」


 その女より、あたしを心配してくれないんだろうか?

 周りだって19時には直るんだし、やはりあたしが一番重症だと思う。


「それはつまり。悪い雅も、お前だと認めるわけだな?」


「違うよ。別人格というか、イラっとしたら現れるというか……まぁ、そんなんだよ」


「──どうして素直に認めないんだ! 1回ごとこんなことしてたら、大惨事だとわからないのか!」


 言わんとすることは分かるけど、ぶっ壊したって直るし。だいたい脱げてるけど生きてるし、よくない?


「強敵で手加減ができなかったんだ……。あたしもギリギリだったんだよ……」


「確かにひどい怪我だ。ギリギリだったのかもしれない。けど、その服はわざとだろう? そんな綺麗に服だけ切れるわけないからな!」


「…………」


「こいつからが悪いとは思う。だけど、やり過ぎは良くない。プレイヤーじゃないお前は、与える影響もゲーム関係ないんだからやり過ぎるなよ。心配させんな」


 そんなことを言われると、しらを切れなくなる。

 チームだと思ったばかりでの単独行動だったし、あたしだって悪いとは思っているんだ。


「……はい。ごめんなさい。次からはイライラしても脱がせないようにします」


「ぜんぜんわかってないな?!」


 分かってはいる。

 けど、加減が難しいのはどうしようもない。


 制御できないからリストバンド付けられてるし、51パーセントだと無理言われてるし。

 小さく力を出すのは出来ないけど、大きく力を出すのは簡単なんだ。だから、ついやり過ぎた。


 本当はユッキーのように峰打ちにでもできたらいいんだけどね。あたしは剣は使えないし。


「できましたー、この女で試したので大丈夫です。次は(みやび)さんの番ですよー」


 癒しの魔法を実験していた、亜李栖ちゃんが声を上げる。どうやら成功したらしい。


「あれはどうなの? 治す実験をするというのは?」


「亜李栖は常識にとらわれない人なんだ。だからいいんだ……」


「苦しい。志乃ちゃん。それは苦しいと思うよ」


 本気で強くなりたい。もといガチで聖剣を作りたい亜李栖ちゃんはマジだ。

 そのまま使っても癒しの効果があるらしい青いカードを、仕組みから理解したかったらしく、人体実験に乗り出した。


 それに簡単に2つ目のエッグを使用した。

 大きく魔力が増したし、出来ることも増えたらしい。ガチプレイヤーになっていくんだと思う。


「雅さんは私が治しますから、志乃さんは来るときにあった薬局から包帯とか持ってきてください」


「それは泥棒……」


「19時には元に戻るらしいじゃないですか。なら、良くないですか? どのみち暴れた猪たちによってメチャクチャですしね」


 街並みだけじゃなく、建物の中も一緒。

 電気もあるしガスもあるだろう。

 物も存在している。薬局なら薬もあるし包帯なんかもあるだろう。


 本当に東京をそのまま写したような場所だ。

 でも、物を持ち出せはしないだろう。

 物はこの場所と同じモノで出来ているんだろうから。


「薬局に行く必要はないわ。ワタシが治してあげるから」


 パッと地面が光って、突然ふわふわが目の前に現れた。

 これはクソピエロと同じ現れ方……。


「ふわふわ。何でこんなところにいる?」


「ふわふわって何よ。アイリだって言わなかった?」


 言ってた。しかし、そんなことは関係ない。

 親しみを込めて……は違うか。


「愛称だよ。雰囲気がふわふわだから、ふわふわ。あたしは、ふわふわとしか呼ばない!」


「可愛いの、それ?」


「──可愛い!」


 可愛くなくても、ふわふわと呼ぶけど。

 あたしは一度そう覚えたら、二度と呼び方は変えません。


「女の子なんだから、もっと綺麗に戦いなさい。せっかく可愛いのに、これじゃ台無しよ」


「可愛いとか言うなよー」


 ふわふわは、顔に付いてたらしい砂埃を払い落としてくれる。そして、あたしを可愛いと褒める。照れる。


「──もうそれはいい! アイリだったな……。どうしてこんなところにいる」


 確かに。まるで様子を見ていたみたいに現れたし。


「どうしてって言われてもねぇ。ワタシたちはこの裏東京に住んでるからね〜。ホテルなんて使ってたら、いくらお金があっても足りないわ」


 ……住めるんだ。

 物もあるし住めるのかな?


 プレイヤーとモンスターがいるけど。

 ふわふわも弱くはないだろうし。


「食べ物とかどうしているんですか?」


「表に食べにいくわ。あとはレトルトね。買い出しはジャンケン制でね。みんな何回も行くの嫌だから買い溜めてくる。他の物は……いくらでもあるじゃない」


 どこかのタワーマンションのようだ。

 みんな、自炊という言葉を知らないのかな?


「ふわふわ。ここから物は持ち出せるの?」


 いくらでもある。と言うってことは、実は持ち出しできるのかな?


「それは無理。物はゲートをくぐると消えてしまう。お金とか持ち出されたら困るじゃない? お金以外にも、考えたら際限ないくらい持ち出されたらマズいものはあるわよね〜」


「……そんなのある?」


 例えば。なに?

 持ち出せないって分かったし、あまり聞く意味はないかもしれないけどね。


「えーー、換金できる物とか。あやしいお薬とか。ヤバい──」


「──もうやめろ! そんな黒い話はやめろ!」


 志乃ちゃんが止めるということは、フィクションのような世界の物とかだね。

 そっか。案外身近にもあるんだね……。


「ふわふわ。治すなら治して。ユッキーを探しに行かないといけないから」


「そうだったわね。と、言ってもちゃんと癒しの魔法は掛けてもらうのよ? ワタシがしてあげるのは、無い部分を造ってあげるだけだからね」


「……なんか怖いからやめとくわ。また改造とかされるのはちょっと……」


「志乃。亜李栖。押さえてて」


 ──ガシッと両方から身動きを封じられた。

 志乃ちゃんはともかく、亜李栖ちゃんまで押さえるだと?!


「どうするのかに少し興味が……」


 この子は魔法に侵食されている。

 良くない兆候だよーー。


「──人体実験反対!」


「大丈夫よ〜。それに痩せるわよ?」


「「──えっ!!」」


 痩せるって何? そんなことある……。


「雅は痩せてるけど、脂肪ってあるわよね? それもいらない脂肪。それをこう、集めて無い部分を再建すると……──あら不思議。傷口は無くなりました〜」


「──本当に治った!」


「治ったは治ったけど。とれるとアレだから治癒は掛けてもらいなさい」


「ふわふわは、これを自分に使って胸に脂肪を集めてるんだ……」


 何この魔法。未だかつてないほどズルい。

 だから、食べ放題なんだ。


「どうかしらね。じゃあ帰るわね」


「本当に、雅を治しに来ただけなんだな」


「そうよ。あと……ユッキーがピンチよ。カイアスもいるし、どうなるかしらね」


 カイアスとは誰だろう? あのウサギかな?


「「……カイアスって誰?」」


「あれっ? あいつは名乗ってないの。かき氷屋で一緒だった……」


「──クソピエロだと! あのヤロウ。今度はユッキーにちょっかいかけに行きやがったのか。亜李栖ちゃん、早く治して! ヤツを今度は殺す!」


 ユッキーに何かしてたら殺す。してなくても殺す。


 ♢


 これで良し。

 後は、上手く運ぶように祈るだけ。


 レンがわざわざ出向いたのには理由があるはず。

 それはユッキーに関係する事と考えて間違いない。


 雅たちを行かせれば、さらに確率は上がると思う。

 使わなくては倒せないでしょうから……。

 カイアスには悪いけど……どうしても見たい。


 魔法という技術を隠してきた彼らの持つ、その中で選ばれたものしか得られない力を。何が出てくるのか楽しみね。


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