モンスター
♢25♢
向かってくるプレイヤーたちを、ユッキーが片っ端からぶっ倒し。志乃ちゃんがそれなりに、亜李栖ちゃんはかなりを経験値として進んでいる。
新宿にいるプレイヤーたちは、そこそこ強い奴らだったらしい。何故なら、さっき亜李栖ちゃんのレベルが上がった。
レベルが上がると、本人およびその周辺のアプリ上に表記される。アプリはプレイヤーの位置を把握しているわけだから、そのくらいの機能は普通にあるのだろう。
「あれからひっきりなしに現れるな。こんなに人がいるもんなのか?」
「亜李栖のレベルアップが大々的に表示されたから仕方ないといえば仕方ない……──つーか、雲母さんも何かやってくれよ!」
「やだよ。私は暴力とか嫌いなんだ。シノこそ、ちゃんと飛んでくる魔法を防いでくれよ?」
「──やってるだろ! そして、雅! お前もなんかしろよ!」
「やだよ。あたしは暴力とか嫌いなんだ。だから、志乃ちゃん守ってね?」
「2人ともさっきからなんなんだーー!」
志乃ちゃんが盾でガードし、ユッキーと亜李栖ちゃんが斬り刻む。そんな戦闘スタイルが確立された。
狙われるのはプレイヤー。つまり志乃ちゃんだ。
前に出ている亜李栖ちゃんも狙われてはいるが、聖剣のサビになってみんな消えていく。
ユッキーは無双状態。一番前で斬り続けてる。あっ、峰打ちでだよ?
「それにしても魔法か。初歩とはいえ、こうバンバン飛んできてはな。ちょっとウザいな」
「ただの球だけど。ウザいね」
プレイヤーとしてはレベルが高い人たちらしい。
自分の色の魔力をそのまま飛ばすだけとはいえ、これは魔法だ。
近接は武器で。遠距離は魔法で戦えるし。
単独ではなくチームでそれをやってくる。
戦い慣れてる。そんな印象だ。
「みんな新宿で何やってんだろうね?」
「流行りなんじゃないか? ここのフィールドが。レア素材があるとか、レアモンスターとかいるんじゃないか?」
「おぉー、レア素材! 強い武器とか作れるのかな?!」
「──いや、武器はもう作ってるわ!」
そっかー、ははははっ。
雲母さんと2人そんな話をして歩いていたら、
「──お前ら、いつまでふざけてんだ!」
そう本気で志乃ちゃんに怒られた。
「別にふざけてはいないんだがな……なぁ?」
「そうだねー、道中余計な消費をしたくないだけなんだけどね」
雲母さんはなんやかんや魔法を使っているし、あたしは天叢雲剣をブッパしないといけないからさ。余計な力は使いたくない。
ユッキーと亜李栖ちゃんが戦ってるしいいと思うんだけどな。
「しかし、ウザいのも事実ではある」
「どうするの?」
……なんだろう。嫌な予感がするね。
『アリス、ユウキも戻ってこい。面倒だから一掃する』
あたしたちにも聞こえてはいる、雲母さんの声。
これはチーム内全員と話すことが可能になる魔法。
魔法使いじゃないとダメだけど。
「ミヤビちゃんは、近くのプレイヤーを一箇所に集めろ」
「どうやって? 手品?」
「得意な力技でだ。空域で範囲を絞って、風で引き寄せろ。そこがいい」
そことは駐車場。そこそこ広い駐車場である。
「……障害物は?」
引き寄せるのはいいけど、ぶつかったら止まるよ。
建物をブチ抜いて引き寄せるのは、流石に無理だと思う。
「何も地面を引きずる必要はないだろう。こう、浮かせて引っ張れよ」
「なに、その雑な作戦。雅、そんなんでいけんのか?!」
「まぁ、やってみよう!」
♢
水神 雲母。彼女の指示した通りに雅は行動した。
「空域制御」
自分から半径にして200メートルほどを、範囲として箱を作成。範囲内に含まれる人間かつプレイヤーを確認。
この時点で、雅は以前をはるかに上回る性能を発揮している。これほどの範囲を支配することは、これまで出来なかったのだから。
「まずは浮かせてー」
足で地面を踏み、縦に力を及ばせる。
押し付ける風ではなく、暖かく上へ登る風にしてプレイヤーたちを持ち上げる。
これは精密さなど皆無な力技。
それを可能にしているのは、風神 雅の特殊な力。
風を読む。風を視る。その特殊能力というべきものが、位置と数を把握するのに使われているからだ。
でなければ不要な物を大量に巻き上げてしまっている。
「──引っ張る!」
もう1つの特殊。
雅は、掴むことなど出来ないはずの空気を掴み、自身を中心にくるりと回ってみせる。1回転。
すると浮き上がっているプレイヤーたち全員は、中心点に引き寄せられる。渦巻きのような力を加えられて。
「あとは、上まで来たら叩きつける! ……のは可哀想だから、ふわっと落とします」
突如これにみまわれたプレイヤーたちは訳もわかららないまま、一箇所に集められた。
彼ら彼女らはレベルの上がったばかりの、3になったばかりの雑魚を狩にきた。あるいは、勧誘しようと思ってきた。あるいは、たまたま近くにいた不運なプレイヤーたちだ。
「ごめんね。でも、いい加減ウザいんだ」
そう言った、制服の女の子を見て全員が驚愕する。
この意味不明な現象は魔法だったのだと。
それもプレイヤーでない人間が行なっていたのだと。
「あとよろしく」
そう言い残し、女の子は後退する。
代わりにタバコを咥えた女が前に出て、タバコの火を手元のカードに押し付ける。
そして、空中に飛ばす。
「まあ、なんだ……。もっと精進しな」
そんな言葉のあと、空中の赤いカードが爆炎に変わる。爆発を身体に受け、動けないままでプレイヤーたちは全滅した。
♢
「何すんのかと思ったら、本当に何してんじゃーー! 事前に教えてよ! 志乃ちゃんの陰に隠れなかったらどうなっていたことか!」
ユッキーのような赤いカードが爆発した。
場所を選ばなかったら大変な事態だし、これ下手すると死んでるんじゃないの?
「えー、そんな暇無かったじゃん。それにぃ、一掃できたし良かったでしょ?」
「可愛く言っても誤魔化せない! 惨状がエグすぎる……」
だって見なよ。建物はボロボロになってるし、プレイヤーたちは全員あちらこちらにぶつかって倒れてる……つまり生きているのかな?
「経験値。経験値。ザックザク──」
亜李栖ちゃんが触ると消えてるから、大丈夫みたいだね。雲母さんは加減したのかな?
というか……あの子は容赦ないね。
あれをくらった人たちを躊躇なく消せるんだ……。
「シノ、貴女はいいんですか? アリスが全員消してしまいますよ?」
「今の惨状を見てからはちょっと……」
「そんなものですか」
「うん……」
亜李栖ちゃんがどんどん強くなっていくね。
志乃ちゃんもガンガン防いでいたから、盾の扱いは上達しているけどね。
「もう近くにプレイヤーはいないし、今のをアプリ上で観てたら寄ってこないね。一気に3ダースくらい人が消えたからね」
「なら前進だ。追跡再開するよ」
そして追跡は再開された。
♢
プレイヤーを一掃して安全だと思っていたら、変なのが現れた。黒い四つ脚動物。鼻息から豚かなと思う。
「豚かな?」
「豚ですね」
「豚だろう」
5人中の半数以上を獲得したので豚に決定。
「豚じゃないだろ。大きさを見ろよ。自動車くらいあるぞ? そんなのいません。従って豚じゃない……──来るぞ!」
雲母さんが言うより早く、豚は走り出す。
真っ直ぐ一直線に。
「──うわっ! スピードに乗るの速い! 回避だよ、回避!」
「自動車が突っ込んでくるのと変わらない。ただし、加速は一般車の比ではないし……アレは頑丈みたいだ」
豚は頭から建物にぶつかった。
そのまま走り抜ける。
何にも阻まれずに、ガラスをコンクリートを突き抜けて。
「他にも来るよ! 1、2、3……10匹?! 10匹、真っ直ぐ来る!」
「これが人気の理由か? 建物もぶち破ってくる! 注意しろよ! ミヤビちゃんはチャンネルを使って指示。シノとアリスは一緒に動け。1人になるな」
豚型モンスターが現れた!
周りの壁も意味なし。轢かれたら即死。
ただのクソゲーじゃん……。




