仲間
♢24♢
「追うぞ。イかれた奴を放置はできない。行くなと。着いてくるなと言っても、どーせ聞き入れないだろうから全員で行く。これは遊びじゃない。友達感覚で首を突っ込んでいい話じゃない。だから──」
パニックになったスクランブル交差点に、大量のパトカーと救急車がやってきた。
志乃ちゃんのファインプレーで、銃撃事件とはなっていない。
救急車を呼ぶ際に、男性が倒れたとだけ伝えたからだ。銃声はしたけど撃たれた人に傷もないし、弾もなければ銃撃事件にはならないだろう。
パトカーも来たけど、もう犯人はいないし、ずいぶん交差点にいた人々も逃げてしまったしで、てんやわんやでした。
そういうあたしたちも、どさくさに紛れて撤退。
近くの駐車場に車を止めてから、雲母さんに叱られました。
ユッキーは足を痛めたようだけど、やはり外傷がない。雲母さんが魔法で手当てしたので大丈夫。
「ユウキ。どうして男を取り押さえなかった? 1発目で殺傷能力には気づいたはずだ。お前なら、出来たはずだ。あの場で取り押さえることが……」
あたしたちへと違い、怒っていない雲母さん。
「あの瞬間……倒れている人を見た瞬間。何故だか、どうしてもあの人を守らなくてはいけない。そう思いました。そうしたら取り押さえるより、防御に徹してしまって……以前にも同じようなことが……あって……あの時、私は……」
この時からユッキーの様子はおかしかった。
「──やめろ! もういい。結果1発かすっただけで済んだんだ。よかった、よかった!」
雲母さんは何かを誤魔化した……。
「私は男を追いかける。キミたちは……」
「いくよ。絶対にいく」
雲母さんは呆れた顔をしていたけど、予想出来ていたらしく同行を許可されました。
全員であの男をブッチめることになった。
「──だから、こっからは仲間だ。そしてチームだ。求めるのは仲間意識にチームプレーだ。さっきのは、中々上出来だった」
友達ではなく仲間。
1人ではなくチーム。
ユッキーに足りないのはそれなんだと思う。
あたしにもか……。
♢
雲母さんが男の足跡を辿る。
着いた先は固定のではなく、日替わりのゲート。
ここはもう新宿区に入っている。
あいつは、ここに消えていった……。
ユッキーを撃ちやがった分のお返しはしなければならない。発見次第、天叢雲剣をブッパしようと思う。
ゲートの恩恵は志乃ちゃんと亜李栖ちゃんだけ。
残りの、あたしたち3人は生身。だけど、フィールドに入った時からユッキーは武装している。
……あの男に明日は無いかもしれないな。
「裏東京は本当に瓜二つだが、全て魔法で構築されているな。エッグによる武器の生成と同じ原理か……」
「つまり魔力だけあれば直るの?」
「19時きっかりにな。これは仕様のようだな」
19時に直るか。
役立つかもしれないから覚えとこう。
「プレイヤーがちらほらいますが、襲ってはきませんね?」
「女とはいえ5人固まって歩いてれば、迂闊にそんな真似もできないだろ。もし、この状態で襲ってくるようなら、そいつのことは勇者と呼んでやろう」
「……勇者来たけど?」
ほんとだ。武器を構えて5人もくるね。
これは雲母さんが、余計なことを言ったせいだね。
「勇者は5人もいないだろ。アレは違う。ユウキ」
「はい」
様子がおかしい気がするユッキーが刀を振るう。
1人は腹に。1人は背中に一撃を受け、呆気なく倒れる。
あれは痛い……。
ユッキーの刀は魔法ではなく本物。
つまり、ユッキーなら斬れば殺せる。だから峰打ち。
「──強え!」
「反応は2人分しかないのに! こいつマップに映ってない?」
そんなアプリを見てるから……。
「──よそ見してんな!」
──遅っ! もうやられてるよ。
そして言ってるキミも、後ろ後ろ。あーーあ。
「くそ! 1人くらい──」
残る1人は手に持つ剣の他に、懐から銃を取り出す。その狙いはあたしたち4人。
「あたしが防ぐね。バリアー!」
「……ネーミングセンス。今時、バリアーって……」
「バリアーの方がカッコよくない?! 風壁とかダサくない?!」
守ってあげたのに、姉にバカにされました。
「空気を固めて壁にするわけか。箱は要らないのか?」
「空域のこと? ここだと要らないかも。あれも、あたしには必要なことだったんだけどさ」
「成る程。あれも力を使いすぎないように行っていたのか……。しかし、使った方がいいな。いくらか制御がマシになるだろう」
そうなの?
手間かと思ってたんだけどね。なら、そうしよ。
雲母さんは魔法使いらしい。本物のだ。
荒事に慣れてるし、若い衆もたためる。
魔法も一流だし、知識も豊富。非の打ち所がない性能。
そんな人が言うならそうなんだろう。
「シノ、彼らを経験値として消してみてくれ。それもせっかくだし拝見したい」
「あぁ、印のある手で触れる……と」
倒れる男に志乃ちゃんは左手で触れる。
すると触られた方はフィールド内から消える。
「ふむ、この事象には秒数は掛からないらしいな。ゲームを続けることが不可能だと判断して、撤退させているらしい。そして、倒した側には経験値として魔力が蓄積されていくというわけだな。残りも頼む」
「──はいはい! 残りは是非とも私に! レベル上げたいです!」
雲母さんは近かったから、志乃ちゃんに頼んだが、ウズウズしていた亜李栖ちゃんが前に出てきた。
「……ああ、早くな。魔力量が仮初めとはいえ増えれば、それを成長と、レベルアップと言えるわけか。やがて増えた分を許容できるようになり、本当に成長していく」
触れることでプレイヤーから力を奪い、自分のものにしていき、増えた分はやがて本当に自分の力になる。
血となり肉となる。ってやつだね。
「聖剣を作るため。これを完全なものにするために……ふふふふっ」
……あんな人は絶対に聖剣は持たないよね。
魔剣とかの方がイメージに合ってると思う。
「ミヤビちゃんもエッグはあった方がいいな。これもコントロールに役立つな。ユウキ、ストレージからミヤビちゃんの分のエッグくれ」
ユッキーは雲母さんに言われたように、ストレージからエッグを取り出す。
ストレージというのはね……なんなんだろう? 分かんないな。
「ストレージってなに? ユッキーはどっから、それとか、刀とか出してるの?」
「ストレージの意味は貯蔵だよ。貯蔵できる空間があり、そこからいつでも出したりしまったりできる。貯蔵できるのは畳一畳分くらいだが、便利だろう?」
「空間って、ここら辺?」
こう、空中のここら辺なんだろうか?
「違うよ。場所はちゃんとマンションにある。刀持ち歩いてたら捕まるだろ? だから、必要な時だけ取り出せるようにね。ユウキのドレスも一緒だ」
実は手品なのかと思ってた。
もしくは、こう身体に隠しているとか。全然違ったね。
「終わりましたー! 行きましょう。どんどん行きましょう!」
経験値をゲットして、亜李栖ちゃんはご機嫌だ。
「雑魚に時間をくったな。進もう。ミヤビちゃんは、これ持ってな。獲物は考えとけよ……と言っても、しっくりくるやつは思いつかないな」
「うん、武器なんてあたし持てない」
「貧弱アピールか? ……もう通じないからな」
「ちがうよ! イメージできないってことだよ!」
イメージできない。
剣を持つ自分も。盾を持つ自分も。
必要なら魔法で、風で出来るから。
そんなあたしに武器なんて……。
何も思いつかない。




