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闇の帝王の烏  作者: 海道 香魚
第一章
7/75

烏と商人

お読み下さりありがとうございます。


お暇つぶし程度にお読みいただければ幸いです。



新しい方が出てきます☆




「どうしようね...」


.....


森に囲まれたアギオ家の屋敷を出てから、細細とした獣道をひたすら歩いてきた。足は痛いが、鷲になったヨルにも飛び回り、道案内をして貰っているし、わたしが文句を言うわけにはいかないな。

するといきなり大きな道に突き当たった。馬車が行き交う、大きな道だ。そこの道は何本かに分かれているが、行き先が書いていない。


空に手を挙げて、降りてきて欲しい、とヨルに合図する。すると、数秒の内に風を切る速さでヨルは急降下してきた。

地面に降り立つと同時に猫になって、ぺたっと座り込んだ。

やっぱり疲れてたのね...


「大丈夫、疲れてない?ずっと道案内させてしまったんだもに。

ここなら見通しも良いし、馬車しか通らないわ。少し休憩しない?」


「そうする...少し疲れちゃった。

あ、そういえば、アリス急に立ち止まって、どうしたの?」


「今までは獣道だったけれど、一本道だったから辿りやすかったんだけど...。

でも、ここから道が3つになってて、どれがどこへの道か書いてないのよ...」


ヨルに道の先を見てきて貰うのも悪いし、これ以上酷使したくはない。わたしも少し疲れてしまって、足がこれ以上歩くのを拒否している。


うん、この茂みでゆっくりしてから考えよう。収納魔法でタオルケットを取り出して、その上にヨルと座る。



「どうしようね...」



目の前の道ではガラガラと音を立てながら、何台もの馬車が通る。あれが電車みたいに行き先を書いておいてくれると助かるんだけどなぁ。


わたしたちが座って、談話していると、突然、目の前で小さめの馬車が止まった。 大きめの箱や荷物が積んであるのが見えるので、多分、商人の馬車だろう。こんなところで止まるなんて、何かあったのだろうか。大丈夫かしらね?、なんてヨルと言っていると、かなりかっこいい青年が馬車から降りてきた。そしてその青年は何故か、わたしたちの方へ向かってくる。向こう側の道からはあまり茂みの中は見えないようになっているのに、視力いいのかしら…


「そこのお嬢さん、どうかしたの?」


深い紫色の髪に、水色の瞳の優しげな青年が話しかけてきた。歳は二十代半ばくらいだろうか。

わたしに、話しかけてくれているのよね? イケメンすぎて眩しいな...


「王都まで行きたいのですが、迷子になってしまって。」


「そっか…。王都までなら、俺も行くところなんだ。良かったら一緒どうかな。」



人攫いのような甘い誘いだ。このかっこいいお兄さんが嘘をついていなければ、ぜひご一緒したい。


どうしよう。今のわたしでは、悪意なんて肌で感じ取れないし、魔法とかで確認もできない。


「ニャーァオ」


猫のヨルが足元で、

鳴きながら頷いている。


あ、信用して大丈夫ってことね。


「お、お願いします。」




わたしはお兄さんのあとに続いて、ヨルを抱えて馬車へ乗り込んだ。ヨルとわたしは初めての馬車だった。つい、落ち着きなく周りを眺めてしまう。座っていると大きく揺れたり、思ったより早くて、2人してはしゃいだ。


初めての馬車に興奮して、お兄さんにお礼を言うのを忘れてた…



「わたしはアリス、この子はヨルよ。

お兄さん、わたしたちを乗せてくれてありがとう。」


「俺はいつもは森に住んでいてね、目が凄く良いんだ。俺はリオ、見ての通り、商人だよ。」


にこっと微笑んだリオさん。



いい人なのか、偽善者なのか。



それは分からないが、わたしたちを王都へ乗せてくれるのは本当にありがたい。



「そういえば、アリスちゃんはどうしてあんなところに居たんだい?」


やっぱり、それ気になるよね。


「わたし、家族とのいざこざで、家を出なければ行けなくなったんです。

それでとりあえず王都に行って働こうと思って...。」



ほとんど嘘は言っていない。

王都では無いところで、働こうとは思っているし。



わたしが話していると、大きな白い門が見えてくる。

これが王都への入口なんだ...!

王都を囲む壁も白と金の装飾で統一され、まるで天国に来たかのような美しさを感じさせる。



「身分証明をお見せ下さい。」


門番が1人1人の身分証明を魔法でチェックしている。なるほど、機械ではなくて、魔法でチェックするのね…


あっ。わたし、身分証明無い...

えっどうしよう。

「無くした」、で通じるだろうか。



わたしたちの馬車の番がやってくる。



「身分証明をお見せ下さい。」



「あの...」


わたしが無くしました、と言う直前にリオさんがわたしの言葉を遮った。


「俺はあるんですけど、妹が馬車の休憩したところに置き忘れてしまった様なんです。

新しいのを、妹に作ってもらってもいいですか?」


「分かりました。少し時間がかかりますので、ご了承ください。

妹さん、ここに自分の分かるところだけでいいから、書いてくださいね。」



リオさん、心を読む能力でも持っているにだろうか。

そして身分証明って自己申告制なんだ...もっと魔法で何かすると思ってた…。



「はい、妹さん。これがあなたの身分証明になるからね。王都では常に持っていなくちゃいけないから、もう失くしたりしないようにね。

お兄さんに渡しておくのがいいかもしれないね。」


「門番のお兄さん、ありがとう...」


「どういたしまして。」



白い門をくぐり抜けてしまうと、変な緊張からやっと解放された。一時は身分証明のことで汗が止まらなかったが、リオさんのお陰で、すぐに作ってもらえた。



「リオさん、本当にありがとう...」



「アリスちゃんを見ていると、昔の自分を見ているみたいでさ。」


リオさんもやんちゃしてたってことかな?このふわふわした優しげな話し方から、想像もつかないけれど…



「リオさん、たくさんお世話になりました。頑張ってお仕事探しにいってきます!」



「ああ、アリスちゃん!お仕事のことなんだけど、俺たちと一緒に商人をしないか?」

4月から、更新ペースが遅くなります。

ご了承ください...涙



馬車の中で、リオさんとヨルは少しライバルみたいな雰囲気の火花が散っていました。

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