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闇の帝王の烏  作者: 海道 香魚
第一章
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烏の姉の嘆き

お読み下さりありがとうございます。

Twitterを始めましたが使い方がよくわかっておりません...

ブクマ・評価 ありがとうございます!

励みになっております…


今回はアリスのお姉さん、

レーマ視点の回です


ねぇ、

なんであなたばかりなの?


.....


私、レーマ・アギオ には3つ年上の兄と、3つ年下の妹がいます


私は白銀の髪と緑色の瞳を持ち、お父様に非常によく似た顔立ちだと言われます。


家族も召使いたちも、私を見て、女神のように美しいと声をそろえて可愛がり、甘やかしてくれました。

幼い頃は、それはとてもむず痒いもので、かわいらしく恥じらいつつも、非常に嬉しくもありました。


だって、

みんな私を見てくれるんですもの。


お兄様も、お父様も、そして今では病に伏せたお母様も、私を常に見てくれていました。


ただ、「異様」な妹が生まれてから、その状況は一変しました。



私の家、アギオ家は「純白の使徒」と呼ばれる、最も高位に位置する貴族です。

私たちの御先祖様、このお家を一代で築き上げた メリス様を、太陽神の使いとして信仰する方達もいらっしゃる程の尊い血筋なのです。

血筋だけでなく、信頼を守る為に、アギオ家は代々、「白銀の髪色を持つこと」を守り、貫いてきました。

生まれる子供が白銀であるように、婚約できる相手も白銀の髪を持っていなければいけない、内獣の毛色も白に近くなければいけない、など 様々な規則まであるのです。


...にも関わらず、妹のアリスィアの髪色は、夜の闇を閉じ込めたような黒でした。



窓の外の大きな樹木の枝に、ちょこん、と黒い鳥が止まっているのが見えました。



「まるでカラスみたい...」



この瞬間から私たちの家族は壊れ始めました。



まず疑われてしまったのはお母様です。

不貞行為を疑われましたが、常に侍女を傍に置いていて、そんなことをできるはずがないと召使いたちは証言しました。


その次に嫁に来た母の家族です。希に、遠い親戚の血が出てしまう、なんてこともあります。ただ、お母様に黒い髪色を持つ親戚なんていませんでした。


誰が隠しているのか...

誰が嘘をついているのか…


お父様はお母様を信用できなくなったのか、最低限の会話しかしなくなりました。すぐに自室へこもろうとする姿は誰が見ても、お母様を嫌っているようにしか見えませんでした。


そんなお父様の態度に、


「わたくしの身の潔白を信じてくださらなかった...きっともう、わたくしは愛されていないのでしょう。」


と、お母様は...

精神もお身体も病まれました。


私は寂しくて、召使いたちに甘え、侍女たちに我儘を言うようになりました。


お兄様様は私と3つしか変わらないのにも関わらず、お家のことを考えて勉学に真摯に励んでおられました。

今考えてみれば、懸命に現実を見ないようにしていたのでしょう。


だって目の前で、毎日幸せだった家族が壊れていくんですもの...


私たちのお家柄上、我儘は言えませんし、助けを求める側では無く、救いを与える側なのです。

そんな家を継ぐ立場のお兄様は私には計り知れない程の圧力がお父様から掛かっているのです。


そんなある日、珍しく、お父様がお兄様と私を部屋に呼びました。


「 厄介な(アリス)の存在は外に漏らせば、アギオ家の巫女としての信頼は地に落ちるだろう。

あの子を屋敷の一番端にある物置に閉じ込めておくことにした。

絶対に外に出してはいけない、口外してもいけない、分かったか?」


お父様は厳しい口調で言い終えると、すぐに退出を促しました。

お兄様や私の目も見ず、彼女(カラス)のことばかり考えているようです。


偉い魔法使いたちを呼び、物置の音や魔力が外に漏れないようにしたり、このことを外に漏らそうとすれば死ぬ魔法 を家族を含めた屋敷にいる全員にかけたりしました。



.....


そんな恐ろしく成り果てたお父様の部屋を一度だけ、盗み聞きしたことがあります。

本当はただ、お父様のお声を聞きたかっただけなのですが。


この声は召使いたちをまとめ上げる、執事長でしょうか、とドアの横に座りこみました。

あの時、引き返していれば良かったのに...


「当主様、そんなにお悩みでございましたら、消してしまうことも可能でございますよ」


「いや、消してはいけない...

彼女(カラス) はメリス様と同じ瞳の色をしているんだ.,,

一代にしてこの家を築き上げたお方と同じ、伝説の "繁栄の瞳" なんだ。

お前だって思っただろう?」


メリス様は彼女の黄金の瞳によって、このアギオ家に繁栄をもたらした、という伝説をお父様は語りました。


たしかに、玄関ホールに飾ってある、大きなメリス様の肖像画を見ると、黄金の瞳が繊細に美しく色を放っていました。



その時のわたしは、「繁栄」の意味をあまり理解せず、"御先祖様と目の色が同じ" というだけでお父様に構って貰っている、と誤解しました。


口を開けば、彼女(カラス)のことばかり...



(ねぇ、なんであなたばかりなの!)



お昼頃、数週間に一度、彼女(カラス)の部屋を訪れては冷たく当たり、嫌味ったらしく罵りました。


あなたのせいでお母様がおかしくなったのよ。ずっとあなたを産んでしまったことを後悔しているわ!


お前なんていなくなってしまえ!



お兄様と私の...

悲しみや寂しさ、全ての不満の矛先が彼女(カラス)へ向きました。


ただ、その不満は彼女(カラス)に吐き出したからと言って、無くなってくれるものではありません。


カラスのことをお父様が話している所を見れば、また、ふつふつと何とも言えない感情が私を怒らせるのです。



元はと言えば、盗み聞きをしてしまった私が、悪いのです。あれさえ聞かなければ、不自然なの苛立ちもこみ上げてこなかったでしょう。カラスを見ただけで、罵るなんて行為までいかなかったでしょう。



カラスがいる限り、私たちは、私の家族は、カラスに囚われてしまうのでしょう。



お兄様も私も怒鳴り散らすことを躊躇しないのだから、もう壊れてきたのでしょうね。



どこか目の届かない所に

行かないだろうか...




「なら、カラスを鳥籠(やしき)から逃がしてしまえばいいのよ。」



私はどこからともなく、そんなことを考えつきました。



消してはいけない、

ならば...

逃がす、のは大丈夫でしょう?




そうすれば、私たちのことをまたお父様は見てくれるでしょうか。


お母様は元気になってくれるでしょうか。


お兄様は笑ってくれるようになるでしょうか。



私はお兄様に相談しました。

カラスをここから追い出したい、と。


お兄様は何も聞かずに、

「すぐに行動に移そう」

と言ってくださいました。


お兄様も同じ思いを抱えていたのですね…




お兄様と私は、次の日の朝、


カラスを逃がす事にしました。


お読み下さりありがとうございます


補足:

兄 エーリオン、母親似

姉 レーマ、父親似

妹 アリスィア、どっちにも似てる

となっております


アリスのお姉さんは大変な美人ですが焼きもち焼きな所があり、

大変なお兄様っ子でもあります。


お兄さんとどちらの視点で書こうか悩みました...

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