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闇の帝王の烏  作者: 海道 香魚
第一章
2/75

烏とドラゴン

サブタイトルがハッキリと決まっているわけではないのでちょくちょく変えてしまう可能性があります…


ご了承下さいませ

あれから無造作に置かれた本を読み続け、様々な知識を得ることが出来た。


とりわけ、闇魔法の歴史や弱点など細かく書いてある本が多く、流石は白魔法の名門だなぁと思わせる。


この国に限らず、闇魔法が使える魔法使いは大変希少な存在なので、闇魔法について教えられる家庭教師などはいないと言っても過言ではない。

その為、闇魔法など希少な魔法などについては本などで学ぶことが多いのだと、歴史の本に綴られていた。


わたしは自分の長い黒髪を撫でた。

きっとこの黒い髪色が表すように、闇魔法の使い手になるのだろう。

普通であれば、悲しみに暮れるのだろうが、わたしは楽しみで仕方がない。

わたしからすると、魔法が使えるだけで本当にすごい...としみじみ感動してしまう。


闇魔法の歴史ははるか昔、国が生まれる前からあったというが、闇魔法に発展があったのは近年のことなのだという。


この国には闇の帝王と呼ばれる、強力な闇の魔法使いがいるらしい。彼のお陰で闇魔法が目まぐるしい進化を遂げたが、

その進化のために行った人体実験や殺人の数々は闇魔法の印象をさらに暗く、強力なものにした。

その力を恐れるこの国に闇魔法を連想させる「黒い色」の差別を加速させてしまったらしい。

だが、彼は国の総力を使っても捕まえることができない。彼は気まぐれで、国から手を出せば、何をされるか分からない。


それは、数十年前に一度、国は闇の帝王の部下を捕まえ、拷問にかけたことがあるという。帝王の居場所を吐かせようとしたらしい。

その次の日に事件は起こった。

王都の横のそれなりに大きかった街の王国民、全員が亡くなった。大人から子供まで、1人残らず闇魔法を使って、毒殺されていたのだ。

その街は彼の部下を捕まえた場所であり、拷問を行った場所であった。

自らの身の危険を感じ、怯えた見張りの騎士は、急いで帝王の部下を解放したのだという。

それから数日後、

闇の帝王は王の前に煙のように現れた。

「私に手を出そうということか? ふふ...

手を出すたびに何人が犠牲になるのだろうな。楽しみだ。」

と笑顔で告げて、

また煙のように消えたという。


それからこの国は闇の帝王の悪行に対して、目を瞑ることを余儀なくされてきた。


そしてそれは今も続いている。


この歴史の本は、いかに闇魔法が悪く恐ろしいものかを説明して終わっている。


闇の帝王だって、部下を助けようとしただけかもしれないのに。


「はぁ...」


ここにある本はあらかた読み尽くしたが、闇魔法は理不尽に貶されている気がしてならなかった。

白魔法にはあんなに美しい言葉で説明がされているのに、...

まるで存在を否定され続けた、わたしのようなのだ。なんだか気分が沈んでしまう。



読んでいた歴史の本を戻し、自分の誕生日までの日数を数える。

...うーん、

後5日後か...長いようで短い...

早く準備を始めなくてはいけないな。


魔法を使えれば脱走なんて容易いのだろうが、あいにく内獣の召喚まで、魔法は使えないようになっている。

内獣が自らの魔力を伝ってこちらの世界に来る、その感覚で"魔力の感覚"が掴めるようになるらしい。

なんとも不思議な話だ。


わたしは持っていく衣類と、必要だと思われるタオルや紙類などを最低限の数にまとめながら数日間を過ごした。


それと同時に食事など、脱走後の計画もあれこれ考える。


数日の間は何か食べ物は狩るしかないかしら... 森にたった1人、しかも幼子が入るには危険すぎる気しかしない。

もし可能であれば、魔法か何かで髪色を変えられれば、6歳と言えど働けるはずだ。働き口を早めに見つけなければ、幼いのですぐに飢えが襲うだろう。


色々考えているうちに要らないものまで詰め込んでいる気がする。


ふむ...この世界には魔法がある...


ファンタジーな世界ならRPGのような収納の魔法もあるのでは...? 「収納魔法」のようなものは本には書いていないが、異空間 というものがあるのは内獣がいる時点で判明しているのだ。


内獣を召喚した日に聞いてみよう。

内獣さんならきっと答えてくれるだろう。

わたしの内獣なんて、家族のだれも興味も無いだろうし…わたしの誕生日すら覚えていないだろうな。

脱走する日を、内獣召喚の1日後にすれば、準備万端な状態で脱走できる。


.....


そんなことをしている内に、あっという間に誕生日が来た。


内獣は6歳の誕生日の夕方以降に現れる。

それまで、誕生日を盛大に祝い、騒ぐのが一般的な過ごし方だ。


わたしは誕生日を朝ご飯と共に1人でひっそりと祝った。いつもと変わらず静かで、和やかな朝だ。やはり誰もわたしの誕生日は覚えていくれていないようだ。

そんなことは気にしないことにしよう。

今日から内獣という親友を得ることが出来るのだから。

ハッピー バースデー トゥ ミー

6歳の誕生日おめでとう、わたし。


脱走して余裕ができたら1人でお祝いし直そうなどと計画をねっていると、あっという間に時間は過ぎた。

もうすぐ日が暮れる頃だ。

わたしの内獣さんはどんなのが来てくれるだろう。


わたしの前世の記憶の動物園を思い返す。

力強い虎や賢い鷲なんてかっこいいなぁ...

大きな蛇や象などでも、神話によく登場する動物だし素敵だな...


もちろんこちらの世界の動物は、わたしは家族の内獣しか見たことはないが、想像を上回る大きさだ。特にお兄様の白狼は人を口に軽々とくわえられそうな大きさだった。 白く凛々しくお兄様の横に立っている白狼を初めて見た時は、年相応に怖いと感じたが、今の私はかっこいい!の一言に尽きる。


このファンタジーの世界なら、ユニコーンやペガサス、ドラゴンも内獣としていてもおかしくない。

ドラゴンか...

少し懐かしい記憶が浮かんだ。

前のわたしが遊んでいたRPGの中ボスの黒いドラゴン。

わたしの一番の推しボスだ。

大きな翼を広げるだけで突風を起こし、灼熱の炎に耐える黒い鱗を持ち、黒い炎を吐くかっこいいドラゴン

攻撃力がすごく高かったな。


窓際でそんなことを考えていると、後ろから声がした。


「お主は我の父上を知っているのか...?」


振り返ると小さな黒いドラゴンがいた。


大きく、真っ黒な鱗に覆われ、頭には立派な螺旋状の角、折りたたんである大きな翼...

美しい黄金の瞳がわたしをのぞき込む。

あの中ボスのドラゴンにそっくりだ。

だが、全体的なサイズは大きなクローゼットくらいで、思い描いていたドラゴンよりとても可愛く見えた。


微笑みながらドラゴンに話しかける。


「あなたは誰かしら」

お読み下さり、ありがとうございます。



☆作者の独り言

ドラゴンはつや消しの黒い色をしていますが、爪はオパールのようにツヤツヤしているイメージです。

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