一話あたりの文字数を最適化して高い評価を得よう!【訂正版】
【はじめに】
「小説家になろう」で小説を書いている作家さんならば、一話あたりの文字数をどのくらいにしたらいいのかは悩みどころでしょう。実際、一話あたりの文字数をどの程度にすべきかを主張する論評は、探せば割とあります。
しかし「読みやすいから○○文字程度にすべき」といった根拠のない主観的な主張ばかりで、客観的に捉えたものはあまりありません。
また「小説家になろう」のデータを解析している方々も散見されますが、数値を漫然と計算しているものが多く、目的に沿った適切なデータ解析をしている方は見当たりませんでした。一応断っておきますが、私の解析では平均などの統計的な計算は一切行っていません。それだけで十分に傾向は把握できるからです。
そこで既に行われているかもしれませんが、短編と連載のそれぞれに分けて、一話あたりの最適な文字数をデータから探ってみました。比較的信頼できるデータが得られたと自負しております(前回は色々と不備がありました、すみません)。
今回データの取得方法としては、「小説家になろう」の詳細検索を用いました。また総合評価ポイントを客観的な指標として用いました(訪問者数は検索結果に表示されないので採用しませんでした)。使用したデータに該当する作品がなるべく分からないように、データの収集時期・期間については非公開とさせて頂きます。
【短編 ※この章はデータの不備があったため、ページ後半に訂正版を掲載しております。そちらを御覧ください。こちらの掲載内容は無視して下さい】
前回はある期間に投稿された作品を全て集計しましたが、この場合、高評価の作品数が極端に少なくなってしまうという問題がありました。
そこで今回は、ある期間に投稿された高評価作品を上から順に集計しました。グラフを図1に示します。
図1
かなり中途半端な気がしますが、私はここで力尽きました。ただし、10000字以下は中間層が高く、20000字以上になると上位だけが高い評価を得ている印象があります。
これをより詳しく調べるため、文字数ごとのポイント分布を集計したグラフを図2に示します。 このデータは、各文字数に近い文字数で書かれた全短編(100~300作品程度)を集計しました。
図2
この図から、2000字程度の作品は、中央値から上位75%までのポイントが他の文字数より高いことが分かります。一方、6000~10000字で中央値がピークになります。またこの時、文字数が多いほど上位75%までのポイントは徐々に増加しています。これらの値は20000字になると減少しています。
また最大値は該当作品がバレる恐れがあるため伏せていますが、その代わり、各文字数での平均総合評価ポイントを図2下に示しました。各文字数の最大値の大小関係はおよそこれと一致しています。
これを見ると最大ポイントは8000字でピークを迎えることが分かります。一方、2000字での最大ポイントは8000字の1/10でした。
これらの結果から、私は短編は2000字程度で書くべきであると結論づけたいと思います。
その理由は、最大ポイントが8000字近くでピークになることです。素直に考えれば、6000~10000字で書けばいいのではと思われるかもしれません。しかし私としてはオススメしたくありません。
その理由は、中央値が2000~10000字では7~10ポイントと、およそ一定になっていることです。恐らく評価者は一人で、【文章評価、ストーリー評価】が【4, 3】から【5, 5】になっている作品が多いと思われます。この差はたった一人の評価者の価値観に依存するので、ほぼ誤差範囲ではないでしょうか。
この中間値が一定の範囲においては、文字数と作品内容の分布に大きな偏りは無いと考えられます。文字数と作品内容の分布については数値化が難しいですが、もし文字数が多いほど内容が良ければ、中央値も文字数にしたがって大きく増加するはずですが、そのような傾向は見られません。
このことから、2000~10000字では文字数が多いほど内容に関わらず半数以上の上位がポイントを集めやすいと推測できます。
これは、作品数が少ないために評価者のポイントが特定作品に集中しやすいためだと考えられます。この原因としては、読了時間が長くなるため時間を無駄にする高リスクを背負いたくない読者層が高評価作品に流入している可能性、高評価作品を評価することで評論家面をする読者層が一定数存在する可能性が挙げられます。
つまり実力よりも過大評価されてしまう環境が、短編の6000~10000字の範囲にあるのではないかということです。
一方、2000字近くの場合、半数から上位75%までのポイントが他の文字数より高くなっています。また最大ポイントが他の文字数より低い特徴があります。これは読了時間が短いことでどの作品でも広く読まれるため、読者の集中が起こりにくく、実力相応の評価を得やすいのだと考えられます。
以上の考察から、文字数が多い短編を書こうとすると、実力相応に評価されないことが予想されます。評価が得られなければ、費やした執筆時間が無駄に感じられてしまい、執筆意欲が削がれてしまう悪循環につながります。
一方、文字数を2000字程度にすれば、実力が上位半数以上であればそれなりの評価が期待でき、執筆意欲の増加につながります。さらに執筆時間も短いため、評価されなかった場合でも時間的・精神的損失は少なくて済みます。10000字の短編を1つ書くよりは、2000字の短編を5つ書く方が合計評価は高くなる確率が高いはずです。この好循環を作り出せれば、次第に執筆能力が養われるでしょう。
以上の理由から、私は短編は2000字程度で書くことをおすすめします。
【連載】
また高評価作品(1000、10000、50000ポイント以上)の作品中での文字数の分布を図3下の表に示しています。
図3
50000ポイント以上の作品に限れば、一話あたり3000~5000字の作品が25~75%に入ることが分かります。1000ポイント、10000ポイント以上でも、およそ同じ文字数で変わりません。
また一話あたりの文字数に対する総合評価ポイントの分布を調べるため、ある一定期間に更新された連載中作品を全て集計し、文字数ごとに区分けしたグラフを図4に示します。一話あたりの文字数でデータを集められないため、投稿割合の少ない6000字以上の作品数はどうしても少なくなってしまいました。
図4
このグラフから、中央値は4000~6000字で最大になることが分かりました。また短編では中央値から上位75%までのポイントが高かった2000字程度では、高い評価は得られない結果となりました。
また6000~10000字では中央値から上位75%までのポイントが高い傾向にありますが、短編のときと同様に、中間値はむしろ4000~6000字より7.5ポイント低くなっています。つまり約一人分の評価が失われていると考えられます。理由としては、やはり一話あたりの文字数が長いほど高評価作品に読者が流入しやすい可能性があります。
連載作品は、読者も一話あたりの長さを求める割合が多いと考えられます。ただし6000字を越えると評価は減少傾向にあります。
真偽の程は知りませんが、人間が集中できる時間は最大でも15分程度と言われています。なろうでは500字で1分の計算なので、最大でも7500字が集中を保てる時間となります。この作者なら内容が良いという確信さえあれば、面白さを十分に感じていなくてもある程度の時間は読書に没頭できるはずです。しかしアマチュア作家の場合は読者にとって内容に不安が残るため、15分に満たない時間でもちょっとしたことで作品は読まれなくなってしまうと考えられます。
文字数が3000~5000字であれば読了時間は6~10分に収まるため、内容に少しミスがあっても読者が一話を最後まで読んでくれる確率が上がり、そこで読み応えを感じてもらえる読者数が増えるのではないでしょうか。
さらにデータは載せませんが、総合評価ポイントと連載数の比例関係は見られませんでした。このことから、二つのことが示唆されます。
一つは、更新によって新着・ランキングに掲載されて読者数が増えても、評価には繋がらないということ。
もう一つは、総文字数は高評価に関係ないということ。
このことから、一話が短くて読みやすく、かつ読み始めてすぐに面白いと分かる作品、分かりやすく言い換えればツカミの上手い作品が高い評価を受けるということが予想されます。
したがって、なろう作家の皆さんが連載で高評価を得るためにすべきことは、思いついた作品の魅力が最初の3000~5000字で伝わるように書くことです。
もちろん書き続ける能力も必要だとは思われますが、一話が短ければ、書き手も無理せずに定期的に更新し続けられるのかもしれません。
さらに誤りを恐れずに言えば、連載を始めて数話で評価が得られなければ、すぐに打ち切ってしまった方がいいかもしれません。これについては私も詳しく分析できていないので、要望があればまた別の機会に分析してみようと思います。
最後に、修正点についてアドバイスを頂いた方々、ありがとうございました。レビューも本稿執筆時点で2件頂いております。嬉しい限りです。また多くの方から評価を頂き、感謝しております。
本エッセイが皆様の執筆活動の参考になれば幸いです。
【短編 訂正版】
これまで掲載していたデータに不備が見つかったため、お詫びして訂正します。
エクセル上での関数の範囲指定にミスが有り、短編の文字数ごとのポイント分布のグラフの約2000字の75%の値が間違っておりました。91ではなく正しくは18となります。
そのためグラフは下のようになります。
したがって、前回の私の主張は明らかな誤りであるため撤回させて頂きます。これまで読んで頂いた方々には大変ご迷惑をおかけして申し訳ございません。今後はより一層、データを慎重に取り扱うよう心がけます。
また上のグラフを見ると、6000字から10000字で中央値は最大になり、また75%の値も増えていきます。10000字から20000字の間にピークがあるかもしれません。
おそらく短編の文字数はこのくらいにすると高い評価を得やすいと考えられます。
ただしその理由は判然としません。おおよそ以下の可能性が考えられます。
(1) 6000字から10000字(読了時間では12分から20分)で検索する人が、検索でヒットする作品数に対して多い
(2) 色々な作品の中で、この文字数であれば読みたいと感じて訪問する確率が高い
(3) 短編として、多くもなく少なくもない描写量、ストーリー構成になりやすく、最後まで読まれやすい
(2)の可能性について補足すれば、10000字以上でないと読まない派(以下、便宜的に「一万字派」とします)が多く存在するのかもしれません。
これは個人的な予想ですが、一万字派が優先しているのは、いかに良い作品を探すか、ではなく、いかに効率よく面白い作品を読むか、ではないでしょうか。
このサイトは無料で多くの小説が投稿されているがゆえに、駄目なら次の作品、というザッピングがしやすい環境にあります。
だから広範囲に時間をかけて良さそうな作品を探すより、ある程度の面白さが見込める範囲でとりあえず読む方が、期待値が高いのではないでしょうか。
このため絶対的な評価者数が増え、ある文字数範囲の作品が高評価され、さらに評価者を呼び込む、という循環が形成されやすいのかもしれません。
この推測から言えば、書き手が高評価を得たいのであれば、文字数を調整するだけでなく、内容もキャッチーで分かりやすいものが求められるのだろうと思われます。
例えればYouTuberみたいなものです。
時間は長すぎず、短すぎず。
展開はテンポよく。
強調すべきところを強調。
もっと小説にも導入できる要素があるはずなので、ご自身で研究されてみてはいかがでしょうか。
改めて、今回は大変失礼しました。
<2017/05/20 追記>
データの不備をご指摘頂いたため、内容を訂正しました。
これまでお読み頂いた皆様にはご迷惑をおかけし、大変申し訳ありませんでした。
<2017/01/30 追記>
sugi様より「一万文字の短編でも良作なら問題なし! ~短編作品の文字数について~」(http://ncode.syosetu.com/n8122dt/)というエッセイが公開されております。
ジャンルごとの評価についても分析され、データを丁寧に考察されています。
ぜひこちらもご参考になさって下さい。
<2017/01/28 追記>
内容の修正が完了致しました。短編と連載、ともに内容を前回から大きく変更しています。特に短編については結論も変わりました。
さらに修正点などあれば、遠慮なくお伝え下さい。
<2017/01/25 追記>
頂いた意見を元に、私の方でデータを再検討し、近日中に本稿を改訂させて頂きます。
修正点は以下の2点です。
・短編のデータについて、高評価のサンプル数を十分に増やします。
・連載のデータについて、可能であれば、文字数に対する高評価率のようなものを計算できないか検討してみます。
他にも修正すべき点があれば、ご意見を頂けると嬉しいです。
<2017/01/24 追記>
ふと気になってエゴサしたら否定的な意見も見かけたので、一応私の立場を明確にしておきます。
私としては、実際に何が高評価につながるのかをデータから知りたいだけで、特に自論にこだわりはありません。
むしろピアレビューの精神に基づいて、他の方々からより正確なデータを出して頂きたいです。
議論の発端になれば本望です。