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異世界で目指せ発明王(笑)  作者: 朝倉一二三
異世界へやって来た?!編

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78話 おほっ、ウ○ンまであるぜ!


 ――ある日、殿下に呼び出しを受けた。

 殿下は、いつもの執務室ではなくて会議室だという。


 いつも殿下がいる執務室を通りすぎて、長い廊下を大部屋の会議室へ向かう。

 ノックして、会議室に入ると、ちょっと派手な服装をした面々がテーブルを囲んでいる。

 その中に、何人か見た顔――ファーレーンの隣国、商業都市ファルキシムの商人、ミラルの顔も見える。

 ――ということは、ここにいるのは、同盟各国の商人だろう。


「殿下、お呼びでございますか?」

「うむ、そこに座るがよい」


 殿下の顔がいつに増して、渋い。 こりゃ、非常に拙い事が起こっているらしい。


 殿下が上座に座っているので、俺は一番下座に座る――といっても、この世界には上座も下座も無いのだが。

 座った所すぐ近くに、ミラルがいた。

「ミラルさん、何の集まりですか? 帝国の特許取り決め無視のお話でしょうか」

「それもあるのですが……」

 ミラルは、ちょっと困った表情を浮かべている。

 

「勝手に、偽物を作って売られたんじゃ、真面目に商売やってる連中はお手上げになってしまいますよね。 ここら辺ではなんて言うか解りませんが、私の故郷には――悪貨は良貨を駆逐するって言葉があるんですが」

「まさに、それだ!」

 殿下が、声を荒らげる。

 

「それって、まさか贋金にせがねですか?」

 それを聞いた、一同の顔が曇りまくってしまった。

 

 この大陸では、金本位制で金貨が通貨経済の基本となっている。

 金貨と言っても、統一金貨があるわけではなくて、金鉱山を持っている国家が独自に発行しているものだ。

 そんなわけで、金貨と言っても色んな種類がある。

 大きさが違うので、レートがちょっとずつ違っているが、ファーレーン金貨と帝国金貨はほぼ同じ大きさ、レートは1:1である。


 ちなみに、ファーレーンの金貨は1枚――直径3ミル(センチ)、重さ30カナル、銀の混入は25%まで、つまり18K()

 18Kと言っても、正確な測定機器があるわけではなくて、全部鋳造職人の長年のカンで行われている。

 純金だと柔らかすぎで貨幣の体を成さず、銀が多いと価値を落とす。

 長年金貨を貨幣として使ってきて、丁度いい硬さと金の含有量が18Kということなのだろう。


 カナルは重さの単位だが、元世界のグラムとどのぐらい違うか不明。

 このように色々な取り決めがなされている金貨だが、昔からの古代金貨なども流通しているので、当てはまらない物も結構ある。

 

  しかし、贋金といっても、本当に悪意を持った偽物なのか、それとも単に質の悪い金貨が出回っているのかがイマイチわからない。


「どんな贋金なのでしょう? 鉛に金を被せた物とか?」

「そこまで酷いと、受け取る方も解ってしまうのですが、銀の比率がかなり多い物が混じるようになりまして……」

 

 商人の1人が、現状を語ってくれた。

 そして、テーブルの上に出された帝国金貨が2種類。 片方が贋金だという。

 一緒に出された、帝国金貨を手に取ってみても双方の重さは解らない印象。

 だが、厚みを比べてみると――。


 厚い。 


「ははぁ、金の含有量が少なくなると軽くなりますからね。 金貨の重さを合わせるために、厚みを増しているのか」

「お察しの通りで……」

「となると、悪意があって故意にやっているということになりますね。 しかし、贋金というよりは帝国の金貨の質が落ちているだけということなのでは?」

「それだけではなくて、他国の金貨でも質の悪い物が出回り始めてまして」

「ああ、となると間違いなく贋金だなぁ。 何処かの国がやっているのか、それともそういう大規模犯罪をやる集団がいるのか……」

「証拠はない」

 殿下が贋金にせがねという金貨を見つめて、一言。

 

「証拠はありませんけど、一番怪しいのは帝国……」

「そうだ」

「となると、手っ取り早いのは、帝国金貨の取引禁止でしょうか」

「うむ」


 交換比率を2:1にする案等も出たり、様々な議題で会議が続けられたが、俺には贋金の見分け方を考えて欲しいという話が出た。


「それは、比重を測れば良いんですよ」

 俺が元世界の知識から、一案を提示する。

 

「比重ですか? それは……」

「論より証拠、ちょっと機材を持ってきます」


 俺は、自分の工房へ戻り、金貨や銀貨、地金と棒はかりを持って戻ってきた。

 そして、テーブルの上で、棒はかりを使って金属の比重を測ってみせる。


「まず、普通に金属の重さを測ります。 そして次に、金属を水に沈めて測り、ある式に当てはめて計算すれば、金属の比重が計算出来ます」

 俺が、黒板プレートに数値と式を書くと、商人達が一斉にソロバンを出して計算し始め、パチパチと珠を弾く音が室内に響く。

「さすが、皆さん商人ですねぇ。 割り算も達者でございますね」

「そりゃ、売上の平均を出したりと割り算は使いますから。 真学師様が作ったこのソロバンで、何処でも計算ができるようになりましたよ」

 皆、ソロバンが便利だと賛辞の声を上げた。

 ちょっと話が脱線したが、ここに集められた各国の金貨の比重が測られて、黒板プレートに記入されていく。


「こいつも測っていただけないか?」

 そう言って、初老の商人が金の塊を差し出してきた。

 

 穴が開いているので、普段は紐を通して首に掛けているのだろう。


 比重を測ると、かなり重い。

「これはいい金ですね。 純金ですか」

「その通りです。 金は金を呼ぶと言いますからな。 商人は金を呼ぶようにと、金を身につけるのが普通なのですぞ」


 黒板プレートに純金と純銀、双方の数値、帝国金貨の数値、ファーレーン金貨の数値と並ぶ。


「この数値からみると、帝国金貨は金の含有量が5割以下という事になりますね」

「おお……」 「これは酷い」 「まさに……」

 商人達は、知り合い同士で、ひそひそ話をしている。

 銀が半分も入っていれば、色が薄くなりそうな気もするんだが、ぱっと見そんなに違和感は無い。

 まじまじと見比べてみれば、そう言われてみると薄いかな? と感じられるぐらいの色合いだ。


「ちょっと面倒ではありますが、怪しい金貨はこうやって測って確かめる以外に無いのでは?」

「う~む」

 商人達は皆腕を組み、下を向き、上を向き――そして、首を傾げ考えこんでしまった。

 そんな商人達を後目に、俺は自分の工房から持ってきた金貨を測ってみた。

 

「この金貨は、帝国から私を狙ってきた公爵の首を刎ねた時に閣下のふところから分捕った物ですよ」

「なんと」

 商人達の驚く声を聞きながら、金貨の比重を測ってみると――。

 


 やっぱり、金の含有量が半分以下……。

 くそおおおっ! ふざけやがって。

 贋金とか北の将軍様とかカリ○ストロ公爵のゴー○札かよ。


 思わず叫んでツッコミを入れそうになったのを抑えて、殿下に疑問をていする。


「殿下、こんな通貨を流通させて、大貴族とも言われる公爵が持っていたということは、帝国のきんが尽きかけているのでは?」

「うむ」

「あ! ということは――帝国からせしめたあの身代金も、もしかして……」

「妾が、なぜこんなに落ち込んでいるのか、解ったであろう」

これ(帝国金貨)、どう致します?」

「潰して、鋳造し直す。 それしかあるまい」


 金貨の質を維持して、ファーレーン金貨、ファルキシム金貨なら大丈夫という信用を勝ち取らなければ、貨幣価値が暴落して物価が上昇する。

 つまり、インフレだ。


「まあ、価値がゼロになったわけではありませんが、2/3ぐらいになってしまいますか」

「やむを得ん」


「真学師様、帝国金貨の取引をやめたらどうなるでしょう?」

 そう聞いてきたのはミラルだ。

 

「帝国金貨の質が悪いという話が広まって、金貨の価値が落ちるでしょうな。 ひょっとすると、銀貨や銅貨も――と疑心暗鬼になって物の価値が上昇し、銅貨1枚で買えた物が、2枚5枚と増える」

「それでも、ないポケットからは金貨は出ませんよね」

「帝国が緊縮財政に転じてくれれば良いのですが、無いポケットから金貨を捻り出すために、ふだを振り出すかもしれません」

「札とな?」

 会話を聞いていた殿下が疑問を口に出す。

 

「紙や木札に――この札を持ってくれば、いつでも金と交換する旨をしたためて、領主や皇帝の印を押す」

「なるほど、証文の裏書みたいなものですな」

「それを金の代わりにすると言うのか」

「しかし、それは確実な交換が出来るという信用が無ければ成り立たないのでは?」

 ミラルの疑問も無理もない。

 

「その通りです。 1回は騙されるでしょうけど、それが紙くず、木くずになった2回目はそうはいきません」

「そんなことになれば、貨幣経済が崩壊して、物々交換の時代へ逆戻りなんて事になりかねませんよ」

「無論、そこまでいく前に、何らかの手は打つと思うのですが。 失政を誤魔化すために外敵を作り上げ、例えば――全部ファーレーンの悪魔が仕組んでいることにして、帝国国民の目を逸らすとか」

 俺は笑って言う。

 

「其方、笑い事ではないぞ」

「もちろん、無慈悲な口だけの攻撃なら良いですが、実際に兵を挙げられたりすると困りますねぇ」

「それが問題なのだ」


 商人の中にも、帝国金貨の流通を禁止すれば、帝国の暴発を危惧する声があった。

 しかし、それを恐れて、質の悪い金貨や贋金を流通させれば、文字通り悪貨が良貨を駆逐する事になりかねない。

 帝国が滅ぶのは自業自得だが、ファーレーン同盟諸国が巻き込まれるわけにはいかないのだ。

 当面は、水棒はかりで比重を測って、金貨の質を確かめる事になったが――。

 

「ショウよ。 もっと簡単に金貨の質を調べる方法はないのか?」

「う~ん、今は思いつかないのでございますが、何か方法があるかもしれません。 思案してみることに致します」

「うむ、其方に任せる」


 ------◇◇◇------

  

 しかし、そうは言ってみたものの、金貨の質なんてどうやって調べりゃ良いんだ。

 う~ん、しばし考える。

 そういえば、元世界で金買取店なんかじゃ、金の含有量を調べるテスターみたいのを使ってる所があったなぁ。

 地金の材質によって電気抵抗値が違うんだから、電流計を作ってテスター代わりにすればいけるか?

 貨幣で使われる地金で一番抵抗が少ないのは銀だ。 次は銅、その次が金だ。


 何とかなりそうな物を思いついたので、試作に取り掛かる。

 電流計の仕組みはモーターと同じだ。

 ただ、モーターにしてしまうと、針がクルクルと回ってしまうので、バネを取り付けて元に戻るようになっている。

 電流が多いと、モーターに掛かるトルクが増すので、針が移動する距離が延びるわけだ。


 ただ、魔石を電池にすると出力が交流なので、永久磁石に針がついて、その周りにコイルが巻かれる、交流モーターと同じ構造になる。

 コレを製作するために磁石が必要なので、鉄白金合金を使う。 これによって多少白金を流出させてしまう事になるが、緊急事態につき仕方ない。


 そんな試作品を作っていると、ステラさんがやってきた。

 

「なに作ってるのっと?」

「金貨の質を調べる、カラクリですよ。 ステラさんも帝国との身代金交渉で、帝国金貨を貰ったでしょう。 かなり質が悪いので、問題になってるんですよ」

「あ~、ミラルが挨拶に来て、彼から聞いたよ」

「殿下が、金貨を潰して鋳造し直すって言ってましたから、一緒にやってもらった方がいいですよ。 そのうち、帝国金貨はここら辺じゃ使えなくなりますから」

「あ~もう~、腹立つぅ」

「もう、帝国は金が無いんですよ、多分」

「金が無いなら、贅沢を止めろっての、ホントに」

「そうですよねぇ。 でも、1回贅沢を覚えると、中々元に戻れないんですよ」


 そんな話に切れたステラさんが、散々俺の所で飲み食いして帰っていった。

 彼女が怒るのも無理はないが、俺に八つ当たりするのは止めてほしいのだが……。


 そんなステラさんの襲撃もあったが、試作品は完成した。

 ノートPC程の大きさで、上には斜めになった水晶ガラスの中にメーター針が入っており、機械の真ん中には調べる金貨を乗せる皿がある。

 メーターの下には、小さなツマミがあるが、これはメータのゼロ位置を調整する物だ。

 今まで作った魔石動力装置と違うところは、他の魔石と干渉を防ぐ虫糸シルク入ケース、そして魔石とコイルをパッケージして、ソケット化したところ。

 これで、魔石の交換が簡単に出来るようになった。

 ソケット化した魔石は、出力を調整して出荷させるつもりだ。

 出力の調整は、コイルの巻き数を加減することによって行う。 大きめの石はコイルの巻き数を少なく、小さめの石は巻き数を増やせばいい。

 

 試作品が完成したので、殿下に再び商人達を集めて頂いたのだが、なんと集まった商人は前回の倍以上。

 それだけ、金貨の問題が切実なのだろう。

 会議室に入りきらないので、急遽大広間でのお披露目になった。


「真学師のショウでございます。 さて、皆様お立ち会い。 これが、金貨の混ぜ物を調べる機械であります」

「ほう」 「なんと」 「本当なのか?」

 いろんな声が聞こえてくる。

 

「使い方は簡単でございます。 金貨をここの銅製の皿の上に乗せます」

 銅製の皿には、凸型の出っ張りがついていて、そこに金貨を乗せる作りになっている。


「そして、この錘の付いた金属板を金貨に乗せると――針が動きましたね。 この針が動く量で、金貨の混ぜ物具合を判別することが出来るわけです」

 金属板は片方を固定にされている電極になっており、本体に繋がっている。


「早く、試してみてくれ」

 見ている商人から声が飛ぶ。

 

「承知いたしました」


 俺は、純銀、純金、金貨を次々に機械に乗せていくと、その都度メーターの針がぴょんぴょんと踊る。


「純銀を乗せると、針は右端まで動きまして、純金は左の位置。 つまり、金貨に銀の含まれる割合が多いほど、針が右側に移動するわけです」


 試しに、金貨を乗せると、ファーレーンの金貨は左側で針は止まり、質の悪いという帝国金貨は真ん中より右側へ行ってしまう。

「おおっ」 「なるほど」 「こいつは解りやすい」

 商人達が、それぞれ持ち寄った金貨を、次々に機械に乗せていく。

 予め、水棒はかりや、水天秤で測った物も持ち込んでいるので、性能チェックをして品定めをしているのだろう。

 銅を混入される可能性もあるが、銅を入れると赤みが増すので、色で解るはず。

 

 一通り金貨を試して。機械の性能に満足すると――。


「売ってくれ! 金なら出す!」

「ちょっと皆さん、落ち着いてください。 この機械には、私にしか錬成出来ない金属が使われていまして、ちょっとお高くなりますが」

「それでも構わん!」

 商人にとっては死活問題であるから、必死なのは仕方ないだろう。

 

「それでは、お値段の交渉は殿下にお任せいたします」


 使った材料はあらかじめ殿下に伝えてあるので、殿下の手腕でどこまで値段をつり上げられるかといったところなのだが。

 結局、ついた値段は金貨10枚(200万円)である。

 ちょっと、ぼったくりの印象もあるが、この機械を至急用意しないといけない。

 そのためには細工師、工作師と総出でコレを優先的に仕上げるので、その分の手間賃も含まれている。

 殿下は、帝国金貨で損をした分を取り返そうと必死だ。

 元々、降って湧いたような金なので、殿下は損をしていないはずなのだが、ここら辺は考え方の違いなのか。

 少々驚いたのだが、この機械、帝国の商人からも注文が殺到した。

 帝国の商人達にも死活問題なのだろう。 だが、殿下は当然の如く、帝国の商人達には倍の値段を付けた。

 この機械のパチもんを作ろうとしても、俺しか作れない金属を使ってるから、コピー出来ないしな。

 欲しいのなら、倍の値段でも買うしか無い。


 かくして、帝国の粗悪金貨は排除されることになったが、闇のルートでは足下をみられたレートで取引されている模様。


 まあ、これに関しては自業自得だよな。

 当然物価の上昇をまねき、帝国経済は混乱している。 どんだけ混乱すれば気が済むんだと思うが、まだ国家が成り立ってるのが凄い。

 しかし、これからどうなるかは、全く不明だ。


 商人が言っていたように、帝国が暴発する可能性もある。

 となると、やはり火薬の開発を始めた方がいいのか。


 あまり気が進まないんだがなぁ。


 しかし、実際の戦争になると、帝国軍はファーレーン軍のおよそ10倍だ。

 その総数10万とも言われる軍とまともにぶつかっては数では全く歯が立たないのが現状だ。

 師匠1人で1万人を相手に出来るとか言っていた記憶があるが、当然同じぐらいの実力のステラさんも多分1万……俺はどのくらいかなぁ。

 ファーレーン同盟諸国の軍を全部集めても5万ちょいらしいし。

 

 誰の言葉だったか――戦いは数だよ!


 実際に戦闘が始まったらどうなるか解らん。 戦況次第では同盟国に裏切りがでるかもしれん。

 我が身が一番可愛い。 そりゃ、自分の国のためなら、なんでもやるだろう。

 日本史、世界史見ても、そんなのは烏の鳴かぬ日はあれど――ってやつだ。

 今日もどこかで、世界津津浦浦。

 

 ------◇◇◇------

 

 あまり気は進まねぇが、ここはやるしかないか。


 数日後、俺は覚悟を決めると、火薬の原料を製作するための道具を集めて師匠の家へ向かった。

 道具と言っても、特殊な物は用意していない。

 スコップ、くわとデカイ鍋、わらを切る押切。 桶が5つほど。

 次に石鹸等々。 これは汚い作業確定なので、洗浄用だ。

 作業用に汚れてもそのまま捨てて良いようなボロ服を買ってきた。

 後、木灰と藁が必要だが、コレは師匠の家にある。

 そして、俺の爺さんが()と呼んでいた木板で作った入れ物だ。 こいつで色んな物を混ぜたりするために使う。

 大きさは、1.4m×0.9mと結構大きくて、左官などはこいつで古代コンクリートを混ぜたりしている。


 いつも師匠の家を拠点にしてしまうが、安全でひと目に付かないと言えば、ここしか無い。

 しかし、火薬なんてぁ。 出来上がったブツを見て、師匠や殿下はなんて言うかなぁ。

 まあ、師匠も殿下も聡明な方々だ、解ってくれるだろう。


 ――と思う。 俺の勝手な希望的観測ってやつだが。


 色々と荷物があるので、単身では無理だと判断して馬車をレンタル。 ガタゴトと揺られてゆっくりと師匠の家へ向かう。

 

「あ! 腕輪を忘れたわ……」

 途中で気づいた。


 腕輪に何か面白い機能でもないかと、寝る前にはずして色々と試していたんだが、ベッドの上にある棚に置きっぱなし……。

 まあ、師匠の家で何かヤバい状態になる事はないだろう、多分。

 

 師匠の家に着いたので、駒止こまどめして馬に水をやる。

 馬に餌をやるついでに、家の周りを草刈りをして、青草を確保した。

 小屋から桶を持ってきて、馬に青草を山盛りにやる。 ちょっと忙しくて、かまってやれないからな。 


 1泊2日というわけで、今日はここに泊まる予定だが、師匠に説明するのが面倒なので、師匠には相談していない。

 後で何か言われるかもしれないが、もう口出ししないという話だったので、大丈夫だろう。

 

 そして使う原料だが、まずは森の腐葉土、木灰と藁。 そして、師匠の家に溜まっている糞尿を使う……。

 なんかこの世界にやってきて、ウ○コばかりいじってる気がするが、気のせいだ。

 森の腐葉土、木灰と藁からカリウム。

 トイレの糞尿からアンモニア→窒素。

 そして、腐葉土に含まれている硝酸菌というバクテリアの力を借りて、硝酸カリウム――硝石を作り出す。

 通常なら、数年がかりで発酵させるのだが、今の俺には魔法がある。

 1~2時間発酵促進の魔法を使えば十分だろう……多分。

 あくまで、多分。 なにせ、こんなの実際にやるのは初めてだからな。


 ガキの頃、ネットに初めて触ってみて、エロ以外で中二病を発症してやるのがアングラ情報の検索だ。

 火薬、爆薬、毒、その他ググりまくった。

 わざとグロサイト巡りしてみたりとかな。 サブカル系に凝ってみたりとか、まあ、誰もが通る(黒歴史)ってやつかもしれない。

 硝石については、家畜の糞尿を使う方法もあったはずだが、大量に生成するならそっちのほうが良いかもしれない。

 まあ、何はともあれ、まずはお試しだ。


 俺は作業用ボロ服に着替えると、道具等の準備を整え、硝石の生成にとりかかった。



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