66話 凄く便利な遺物
金属探知機で離れの横の畑を調べていたら、何やら怪しげな反応が――。
掘り起こしてみると、錆びついた鉄の扉が出てきた。
分厚い、狭いが両開きの扉だ。
イメージ的には洋服タンスの扉を思い出すが、取手もノブも無いのでどうやって開けるか……。
とりあえず、扉が開くようにスペースを堀り返して、昼飯を食うのに一休みする。
朝に掘り始めたのに、もう昼だ。
丁度、離れの陰になっているので、穴掘り作業は誰にもバレてないな。
もしも、秘密の通路とかで宝物庫とかに繋がったりしたら……ウヒヒ。
ちょっとゲスな笑いを浮かべてしまうが、まさかお城の地下にそれはないだろう――と思う。
もしかして、地下ダンジョンへの入り口でとんでもないモンスターとかが?
う~む、ありえる。
さて、どうやって扉を開けるかと、色々と思案していたのだが。
石組み崩せば良いじゃん。
これで解決した。
扉が固定されてる石組みを少々崩して、重量軽減の魔法で扉をスライドさせると扉を固定している閂が抜けた。
どうせ、なにもなかったら埋め戻してしまうんだから、壊しても問題ないよな。
こんな所に埋まってたってことは、誰も覚えている人も居ないって事なんだから。
扉を半分外して、中を見ると真っ暗の中に下り階段が続いている。
しかし、これは迂闊に入れないぞ、何か罠とかあるかもしれないし、古い洞窟にはガスや二酸化炭素が溜まってたりすることもある。
入るにはそれなりの準備をしないと。
------◇◇◇------
探索には何が必要かな?
まずは、ランプ、魔石電灯か。
罠探知には金属探知機が良いかもしれない。 罠を動かすのに歯車とか使ってるだろうし。
しかし、通路の両側に罠が潜んでいる感じはしないな。
罠を動かすカラクリを仕込むには、バックに膨大なスペースが必要になるからだ。
ランプを持って入り、火が消えれば酸欠状態なのかも判別できるだろう。
後は、ガスか。
そういえば、元世界の鉱山ではガス探知にカナリアを使ったとかいう話があったな。
小鳥捕まえてくるか……。
そう決めると、自作の竹籠に蓋をして、それを鳥カゴにして鳥を捕まえに行く。
以前は苦労していた鳥の捕獲も魔法で簡単に出来るようになった。
街から離れた場所にある切り株に小麦を少々地面に蒔いて待っていると、セキレイを少し大きくした姿を思わせる尾の長い小鳥がやって来た。
その小鳥に重量増大の魔法を掛けると動けなくなるので、そのまま手づかみでゲット!
2羽捕まえて、籠に入れて帰ってきたら、俺がニムに捕まった。
「ショウ様、その鳥食うにゃ?」
「食わないぞ、ちょっと実験に使うだけだ」
「それが終わったら食うにゃ?」
ニムが小鳥をじ~っと見ている。 見てる見てる穴が開く程見ている。 どうやら食いたいようだ。
「わかった、わかった。 実験が終わったらやるから食え」
「ホントにゃ!?」
ニムは晩飯が出来たと喜んでいるが、こんな小鳥2羽じゃ足りないんじゃないのか?
作業が終わったら、小鳥は逃がしてやろうと思っていたが、ニムの晩飯になることが確定した。
ちょっと可哀相だが、この世界の掟だ。
鳥と言えば、ゴムの木林に住み着いているライナスがいるが、あいつは俺のペットだからニムには食うなと言ってある。
獣人は動物は皆食い物だと思ってる節があるからな。
さて、道具は揃った。
錆びついた扉の前に立った俺は、決死の覚悟でダイブを敢行する。
左手には灯油ランプ、右手には金属探知機、頭には魔石電灯、そして背中にはガス探知用の小鳥と、フルアーマーショウ!
いきま~す!
チャララ~チャラララ~! お城の地下に隠されたダンジョンに眠る秘宝を追え!
我々川○探検隊は、前人未到のダンジョンに眠る秘宝の情報を得て、決死の探索を敢行した。
現場に着いた我々を出迎えたのは、錆びついた巨大な扉。
これは、この遺跡の所有者が施した結界なのか?
一体この先には何が隠されているというのか?
スタッフ全員の顔に期待と不安の表情が浮かぶ。
扉を開けて覗く暗闇を垣間見たその時、またその深淵からの視線のような物を感じてゾクリとした!
確かにこの奥には何かが潜んでいるようである――。
深淵へと続く階段を降りる我々に遅いかかる見えない圧力。
その見えざる力に怯え戦慄き、限界に達する――その時、スタッフの1人が大声を上げた!
「おい! あれは何だ!」
スタッフに緊張が走る!
俺が拾い上げたのは、細い棒――のようだが、何かの骨にも見える……。
我々の行き先には一体何が待ち受けているのか!?
チャララ~チャラララ~!
「なんてな、冗談はここらへんで止めておくか」
俺は、川○探検隊ゴッコをしながら、扉の奥にあった階段を降りていく。
金属探知機で周りを調べているが、何も反応は無いようだ。
内部はかび臭く空気は淀んでいるが、ランプは灯ったままだし、背中の鳥さんも元気だ。
おお、怖えぇぇ……。
ガキの時、肝試しのため農業用水を引き込むためのトンネルに潜った時の事が、俺の脳裏にフラッシュバックする。
200mぐらいのトンネルだったのだが、なにもないと解っていても、メチャ怖かった。
辿りついた先にあったのは、鉄格子の嵌った出口だけだったんだがな。
実戦でチャンバラドンパチやったりと、それなりに経験を積んだつもりだったが、恐怖に対する本能の怯えは中々
拭えるものではない。
落ち着け~落ち着け~ヒッヒッフーお前は出来る子だ~。
ガクブルしながら、階段を降りた先にあったのは、ちょっと広い通路? いや細長い部屋か?
全面石組みで、しかも、水が溜まっている。
水は透明だが、股下ぐらいまでありそうだ。
そういえば、ここは城の外周にあるお堀の下辺りか……よく水没しなかったな。
靴を脱ごうと思ったが、何があるか解らんので、そのまま水に入る事にした。
ザバザバと水を分けながら進み、辺りを魔石電灯で照らす。
鳥さんも背中でピーピー鳴いているから、空気も大丈夫だ。
何もないな。 金属探知機の反応も無し。
う~ん、ただのトマソンだったか?
ちょっと気落ちしながらそのまま進むと行き止まり……だが、右側に小さな階段と両開きの扉がある。
お、これは――もしかして、秘密の小部屋か?
扉はちょっと厚めの木製で鉄板で補強してあるが、木の部分は腐りかけているようだ。
鍵が掛かっているようだが、面倒なので破壊することにした。
魔法を展開して圧縮弾を作ると、その赤い光は周りの石壁を照らしだす。
そのままゆっくりと圧縮弾を鍵穴へ誘導して、開放――。
甲高い音と共に、扉の鍵穴部分が丸く吹き飛んだ。
ものすごい反響音が室内にコダマする。
うるせぇぇぇぇ! こんな閉鎖空間でやる事じゃなかったわ。
丸く開いた穴から、魔石電灯を使って部屋の中を照らす。
見た感じでは何もなさそう……。
ゆっくりと重い扉を押して、中を窺うが――ぱっと見何もない。
金属探知機を床に当ててみるが、反応無し。
金属探知機を下に置くと、念の為に重量軽減の魔法を自分に掛けて、部屋に仕掛けられているかもしれない感圧式の罠に備える。
どんだけビビリなんだよと自分でも思うが、恐れを知っているやつが一番長生きするんだよ。
部屋の中に入り、ぐるりと魔石電灯で照らして見回すが、やはり何も無い。
部屋は1m程高い位置になるので、水には浸かっていないが、天井から水が滴っている。
「ふう……ハズレか?」
しかし、暗くて気が付かなかったが、そのまま奥に進むと小さな台があった。
その上には――。
大きさから多分腕輪だろう、リングが3つ。
白い腕輪と、金の腕輪が2個だ。
魔石電灯で照らして周りを確認してみると、金の腕輪の方がちょっと怪しい。
腕輪の置かれている場所がフローティング構造になっている。
これは、腕輪を取ると浮力で台座が浮き上がり、罠が発動する仕掛けかもしれん。
束石が外れて、構造が崩れるとかな。
罠が死んでいる可能性もあるが、念の為にポケットから銅貨を取り出して台座に載せた。
多分、これで大丈夫だろう。
恐る恐る金の腕輪を取って、魔石電灯で照らしてみると、透かし彫りの中々凝った造りで、これは良いものだ。
金なので、当然錆は無い。
そして白い腕輪を――。
「軽っ!」
なんだこれ? 硬いけど、紙みたいな軽さだぞ? 金属なのかセラミックなのか、皆目見当もつかない。
ミスリル? でも、この世界にミスリルとか無いって話だったしなぁ。
なるほど、先程の罠だが、白い輪と金の輪が並んでいれば、普通は先に金の輪に手を出すだろう。
それを見越して金の方に罠があるのか。
ところが、白い腕輪をそのまま左手に通してみると、手首の所で固定して取れなくなってしまった!
え? なんだこれ? 腕輪は手首の所で固定されて、宙に浮いている。
押しても、引いてもびくともしない。
おいおい! ちょっとまて? まさか呪いってやつか? マジか!?
あなたはのろわれてしまった デレデレデレ――。
そんなセリフと音楽が頭の中にリフレインする。
落ち着け、落ち着け、俺!
リングがあった部屋を隅々探してみたが、あったのはリングが3個だけだったので、撤収することにした。
金の腕輪はズボンのポケットに突っ込んだ。
道具を回収して、先に明かりが見える階段を駆け上がる。
「くっ、眩しい!」
外へ出ると、眩しさで目が眩む。
一応外した扉を元の位置に戻して、そのまま、大急ぎで穴を埋め戻して、証拠隠滅!
幸い誰にもバレなかったようだ。
しかし、この腕輪の正当な所有者は殿下のような気がするが……バレたら間違いなく拾得物横領罪だな。
でも、この世界には拾得物横領罪は無いし、忘れさられた遺物を発見したんだから、俺の物にしちゃう事にする。
ダンジョンで宝箱開けたようなもんだろ。
――と、思う。 ――のはず。 多分。 きっと。
土木工事をしたので、汗まみれになってしまった。
とりあえず、用済みになった鳥さん達をニムに渡す。
その後、俺の工房に戻り、上半身を脱いで身体を拭きながら、左手首に固定されてしまった腕輪を調べる。
アレコレ調べると。腕輪の周囲に小さな2つの突起があり、それを指で押さえるようにして引き抜くと、リングがぬけた。
ふう、呪いじゃなくて一安心。
寿命が縮むぜぇ。
手にとると、やはり軽い。 そして硬い。 刃物で傷も付かない。
はてさて、これは一体何なのか? この世界にマジックアイテムとかエンチャントアイテムは無いという話だったんだがなぁ。
こんなに硬くて軽い物質なんて、元世界でもなかったろう。 しかも腕に接触することなく浮かんでいる。
こんなの一体どうやって作る?
しかも何故お城の地下に?
俺の作った物をオーバーテクノロジーだとか言って悦に入ってたけど、こっちのほうが余程オーバーテクノロジーだぞ?
とりあえず、害はないようなので、飾りとして左手首に嵌める。
う~む、宙に浮く腕輪とか、夢で憧れたRPGの魔法使いっぽいね。
そんなアイテムゲットに浮かれていたが、いつまでも上半身裸は拙い。
シャツと上着を着たところで、師匠とステラさんが入ってきた。
ステラさんはしばらく顔を見なかったが、どこかに出かけていたようだ。
「ステラさん、街に変な噂流したのステラさんでしょ?」
「え~? なんの事だか解らないなぁ」
ニヤニヤしやがって、明らかにとぼけている。
「殿下にも話したでしょ?」
「だって、私に酷いことしたの事実じゃん! ショウだって、私のウ〇〇で虫がデカくなったとか変な噂流したでしょ!」
ニヤニヤから一転怒り出す。
「だって、事実じゃないですか」
「ショウ、ちょっとその事で聞きたい事があるのですが」
師匠が口を挟もうとするが――。
「ルビアは黙ってろ! 縛り上げて、私の身体を弄んだでしょ!」
「なんで、そういう話になるんですか? アレが弄んだというなら、私なんてもっと弄ばれてるんですけど?」
「ふぐっ! 私に対する愛はないのかぁ!?」
「だから、ありませんって」
「アィィ!」
ヒステリックな奇声を上げたステラさんが何か魔法の詠唱に入る。
いつもならここでステラさんの蹴りが飛んでくるのだが、この頃俺が蹴りを普通に躱すので攻撃方法を変更したようだ。
「ちょっとステラさん!」
着替えたばかりで、何も装備を持ってない。 紙鉄砲もないし、圧縮弾を作るのにちょっと距離が近い――。
というので、直接制止に行こうと一歩踏み出した瞬間!
何かの力でステラさんの身体が吹き飛ばされて、玄関のドアをぶち破り外へ放り出された!
ドアが壊れる音と、ガラスが砕け散る音がお城の中庭に響く。
「あれ?」
玄関から出て、外で倒れてうごめいているステラさんに近寄ろうとすると、彼女が起き上がった。
「こ、このぉ! クソガキャァァァァ!」
ステラさんの怒号と共に、彼女の前に対の光瞬く矢が現れた。
「ステラ! やめなさい!」
師匠の制止を無視して、俺に向かって閃光が放たれる!
俺は咄嗟に、両手を差し出して顔を覆う――。
ステラさんが放った光の矢は、俺に命中すること無く直前で停止して、光る螺旋に分解されて散っていく。
「な!? くそおおっ!」
驚愕の表情をしたステラさんが、再び閃光を放つが、同じ結果を繰り返しただけだった。
「ふぐっ! ううう……」
ステラさんは茫然自失で半泣き状態だ。
「あの? ステラさん?」
俺がステラさんに一歩近づく。
「ショウの××××××××!! 死んじゃえ! アイィィィィィィ!!」
ステラさんは意味不明の奇声を上げると、自分の部屋へ続く廊下めがけ走っていった。
「今まで聞いた事がない、叫び声だったな……」
しかし、なんだ? 魔法を中和? 受け止めたぞ?
自分の起こした現象を事実として把握することが出来ないで、自分の手をまじまじと眺める。
すると、左手首に光る腕輪――。
これか? これなのか?
マジならほんとにマジックアイテムじゃん。 この世界にはそんなの無かったんじゃないの?
俺がアレコレ考えを巡らせ動揺していると、師匠が話しかけてきた。
「ショウ、あなた対魔法が使えるようになったのですね」
「はい? はぁまぁ……なんというか、まだ手探りなんですが」
師匠になんて説明していいかしどろもどろな俺。
それを誤魔化すように、ステラさんの使った魔法について聞いてみると、あれは魔法矢というステラさんの得意技らしい。
ちなみに、人間にマジで直撃すると身体が千切れて吹き飛ぶぐらいの威力らしい。
ちょっと待て糞BBA! 死んじゃうだろ!?
「ふうううん……」
師匠が手を後ろに組んだまま、俺の周りをぐるぐると回り始めた。
「師匠、ステラさんが何か叫んでましたが、なんて言ってたんですか?」
「下品すぎて訳せません」
「ああ」
察した。
どうやら、師匠は感応通信を使っているようだ。
この白い腕輪が、マジで対魔法アイテムなら、師匠の感応通信も遮断できるはずだが……。
試してみるか。
恐る恐る頭の中で禁忌ワードを念じてみるが、師匠は無反応だ。
マジで、感応通信を遮断しているようだ。
やったぁぁぁぁ! これで男子のプライバシーは守られる。 頭の中でオッ○イ連呼しても無問題。
コレで勝つる! 何に勝てるかは分からんが、勝てるのだ。
男ならわかるはず。
そんなこの腕輪だが、後で色々と試して判ったのは無差別に魔法を遮断するのではなくて、選別もできる代物だった。
つまり、必要な感応通信は受ける事も可能って事だ。
いや、便利すぎるだろ。
ぶっちゃけありえない。
壊れたドアを壁に立てかけて、師匠と一緒に部屋に入る。
「これで、私の教えることは無くなりました」
師匠はそんなことを言うが、何も教えてもらってませんけど? 全部、四苦八苦の挙句俺の独学ですよ?
この人、凄い人だとは思うけど、先生には全く向かない人だと思う。
そんなことをつらつら考えていると、師匠が俺のベッドに腰掛ける。
「師匠? なんですか?」
俺が不思議に思い、師匠に問う。
師匠はそのままベッドに寝転がり、こんな事を言い出した。
「ステラにやった事を、私にもやって御覧なさい」
「はい? 何を仰ってるかわかりませんが、外へ吹きとばせと仰るのですか?」
「違います、その前の話です」
「ああ」
俺は察した。 街で噂になってるステラさんへの行為の事だ。
「師匠、それは誤解ですよ。 前にステラさんが少しおかしかったじゃないですか? あの時ですよ」
「それで、どうやって縛ったのですか? やって御覧なさい」
「はぁ?」
なんじゃこりゃ、いったいどうすりゃいいんだ……一難去ってまた一難。
殿下もそんな事言ってたな……殿下の次は師匠かよ。
どうしてこうなった?
「……」
「……」
ベッドで向き合い、沈黙する俺と師匠。
もうこういう時は逃げの一手だな。
「師匠、解りました。 その前に折り入って内密なお話が――」
師匠は身体を起こし、身を乗り出す。
「なんでしょう?」
「実は――」
俺は話を始めると見せかけて、ふいに視線を逸し、師匠の視線を工房の奥へ誘導する。
「師匠! アレなんですか?」
「え? 何ですか?」
師匠が身を乗り出して、工房の奥を覗きこんだ刹那、俺は外へ向かって走りだした。
「さいなら~!」
「あ! こらぁ! ショウ! お待ちなさい!」
「待てと言われて待つ奴はいないってね」
そのまま俺は、お城の裏門の所まで走って逃げてきた。
さすが、異世界。 100年前のネタが通用するとは。
あっ! UFO! も多分通用するな。
UFOをドラゴンとかにすりゃいい。
こりゃ少し師匠が冷めるのを待った方がいいな……。
あの人は、熱くなると全く人の話に耳を貸さないからな。
しかし、着替えたばかりなので、装備も何も持ってきてないぞ。
下履きも、ツッカケだ。 金も置いてきてしまったし、どうしようか。
とりあえず、ズボンに着けたままの魔石セットはあるので、お城の出入りは問題ないが……。
後は、左手首の白い腕輪と、ズボンのポケットに突っ込んだままだった、金の腕輪が2個だけだ。
まさか、これを売るわけにいかんしな。
なんだかガキの頃、親父と喧嘩して家出した挙句、森でサバイバルした時を思い出すぜ。
う~ん。
ガキだった自分の行為を思い出し、苦笑いしながら行き先を思案する。
暇つぶしに、マリアの孤児院でも行ってみるか。
------◇◇◇------
街の通りをマリアの孤児院に向かってツッカケをパタパタさせながら歩く。
いつもは、武器やら道具やら満載だから、こんな軽装で歩くのは珍しい。
通りの露店を見ると、店の親父がソロバンを弾いている。
もう巷に出回っているのか。
まあ、実際便利だしな。 便利じゃなきゃ日本で普及するはずもないし。
日本でもPCが普及する前は、会社の経理するなら簿記必須みたいな感じだったようだし。
ネコ車に果物を入れて運んでいる人も見かける。
ネコ車も好評なようだ。
孤児院に併立されている公立学校も評判がよく、2番めの学校が作られる計画が上がっているらしい。
すでに学校で成績優秀な子供は、政務官の下働きとして勤めている子もいる。
下働きをしながら、政務官や政治の勉強をするのだ。
元世界の政治家の秘書みたいな感じだな。
そうなると、苦しくなるのは役に立たない貴族の子息達だ。
いままでは、貴族の倅ってだけで仕事がなんとか与えられることもあったのだが、これからは厳しくなるだろう。
数千年既得権益を貪っていたのだろうが、それも終わる。
殿下も改革を断行すると言ってるし、この世界もそろそろ変わってもいいはずなのだ。
財政が芳しくない貴族領は民営化して、民間からCEOを送り込む。
元世界の第3セクターだが、それでもダメであれば、天領として取り上げ取り潰した後に再配分する。
だが、そんな改革の後、このファーレーンがどうなるかは解らない。
立憲君主制になるのか、議院内閣制になるのか、それはまだ不明だ。
そんなことを考えながら歩いていくと、孤児院が見えてきた。





