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異世界で目指せ発明王(笑)  作者: 朝倉一二三
異世界へやって来た?!編

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47話 獣人親子モフモフ尻尾比較

 

 この大陸に住んでいる全種族の人口は、少しずつ増えながらも数千年横ばい状態で約1000万人と言われている。

 無論、戸籍などはないので推定なのだが、日本で言うと、戦国時代初期ぐらいの人口だろうか。

 元世界でも、数千年横ばいだった人口が爆発的に増えたのは戦後になってからだし、医療の発達、そして農業の改革が大きな要因になっているのかもしれない。

 医学といえば――この世界にも、治癒魔法というものがあるが、魔法の治療を受けられるのは限られた人だけだ。


 数多くの国が乱立していて、大統一されていないこの大陸で一番大きな国は、ファーレーンと仲が悪いカミヨ大帝国で、人口約200万、その内約100万人が帝都に住んでいる。

 その次が、ファーレーンやファルキシムのような人口10~20万人クラスの中規模都市国家が約40国。

 その他は、人口1万以下の小国と、国になっていない村や町で占められている。

 仲が悪いと言っても、商人による貿易は行われているので、完全な断交状態ではない。

 人の行き来も比較的できるようだ。

 

 ただ、俺のような帝国から名指しで非難されている人間は、おそらく帝国領内に入った瞬間に捕縛される可能性が高い。

 無論、見つかった場合だが。

 

 国家予算規模は、中規模都市国家が日本円で約20~30億円相当、ファーレーンのような景気が良くて豊な国で約50億円相当、金貨にして2万5千枚。

 小さな国では国家予算が日本円で1億円程度というのも珍しくない。

 このくらいの小国では、俺のような月給金貨3枚という見習い真学師でも雇うのは難しいのだが、そこは金では動かない真学師。

 わざわざ貧乏国家へ入り込んで、好き勝手をやる真学師もいるらしい。

 格安で真学師が雇えるということで、小国としても多少無理な願いでも聞き入れてしまう。

 そこにつけ込んでいるわけだ。

 

 中には、山小屋へ毎日食事を運んでくれて、俺に干渉しなければ仕事はする、みたいな変わり者の真学師もいるらしい。

 だが、あまりに酷い素行不良の真学師がいたらどうなるのか?

 その場合は、その真学師の雇い国からの要請で、他の国の真学師が制裁に動くことになるが、実際に戦闘等になることはなく、事前に話し合いでなんとかなってしまうようだ。

 まあ、悪行が広まってしまうと、他の国で雇ってくれるところがなくなってしまうので、さすがにそこまで酷い真学師はいないというが、たまに雇い国がなくなり、単独で商売したり、無頼の用心棒みたいな事をしている真学師崩れもいるらしい。


 そんな変わり者ばかりの真学師の中で、普通に街の人間と交流したりしている、俺のほうが変わり者と言われる始末だ。

 そんな俺は違う世界からやって来た一般人なのだから、当たり前っていえば当たり前。

 でも、元々のそういう素質があったのか、この世界や真学師という職業に毒されはじめている。


 ------◇◇◇------


 滝での修行はその後も度々行われていた。

 最初は、俺を舐めて足を掬われたステラさんだったが、彼女が本気を出せば到底俺が敵う相手ではなく、仕返しと言わんばかりにボコボコ。

 師匠とも手合わせしてみたが、接近できなければまったく手が出ないぐらいに隙がない。

 魔法の詠唱か集中を邪魔する物を何か考えないと……。

 一瞬でも隙を作れれば良いのだ。

 孤児院の改築への手伝いと、そんな修行の日々を繰り返しているうちに、改築工事はほぼ完了に近づいている。

 俺の工房で取り外したガチャポンプも孤児院の井戸に取り付けた。


 しかし、こう綺麗になってしまうと、悪いやつらに目を付けられる可能性がある、けっこう大きな建物を綺麗に改築したって事は金があるって事だからな。

 ここには、マリアさんと子供達しかいないので、ちょっと心配だ。 

 警備を雇った方がいいのだが……そんな悩みに頭を悩ませていると、


 丁度、ニムの弟ニケが、孤児院へ遊びに来ていたので、飴玉を一つあげて、警備に使えそうな人材がいないか聞いてみた。

 

「ニケ、獣人でさ~強いんだけど、仕事がなくて暇そうにしている奴はいないか?」

「え? う~ん、ウチの母ちゃん?」

 飴玉を舐めながら、答えるニケ。


「ん? ニケの母ちゃんって強いのか?」

「元傭兵だよ。 強いに決まっているじゃん」

「それじゃな、ニケの母ちゃんに、この孤児院の用心棒を、暇なときになってくれないか? って聞いてみてくれよ」

「ここのか~?」

 ニケはあまり乗り気じゃないみたいだ。


「なんだ、気が進まないのか?」

「だって、俺の遊び場に母ちゃんがいるとなぁ……」

 ああ、なるほどな。 子供の遊び場に親がいたんじゃ、無茶出来なくなるからな。


「ここには、マリアさんと子供しかいないんだぞ、頼むよ。 建物が綺麗になったから金があると踏んで、悪いやつらが集まってくる可能性があるだろ?」

「う~ん、解った。 友達に何かあると、俺も嫌だし」

 ニケは渋々了承したようだ。


 その後、俺の話を聞いた殿下から、それならその孤児院を公立の学校第1号にしてはどうかという話をされた。

 マリアさんは読み書きもソロバン(計算)もできるというし、先生としても申し分ない。

 公立になって予算がつけば、警備を雇う金の心配もしなくてもいいから、万々歳だが、まだ反対派を説得できていないから、予算はついていない。

 あくまでも仮状態だ。

 しかし、そんな話が決まりそうになれば、益々警備の必要性が増してくる。

 公立学校反対派から嫌がらせが始まるかもしれないからだ。



 この孤児院が公立の学校になりそうだという話をするために、マリアさんの孤児院へ訪れると、ニムとニケの母親という人が来ていた。

 見た目もガッチリと肩幅も広いが、長めのスカートと前掛けをして、肝っ玉母ちゃんという言葉ピッタリのキジトラの獣人だ。

 でも、前掛けとかしてなくて、鎧とかを着ていたら、モロ戦士って感じだな。


「こんにちは。 真学師のショウだ、よろしく」

「ニムとニケの母親で、ニニだよ。 ニムからいつも話は聞いているよ。 よろしくね」

「ニニさんか。 それで、どうだい、ここの警備というか用心棒の話なんだけど。 無論時間があればの話なんだが」

「さん付けなんてよしてくれ。 ニニで良いよ。 まあ、今は傭兵を引退して、仕事はしてないからねぇ。 問題ないんだけどさ。 確かにここは子供しかいないから、不安だねぇ」

「そうなんだよ。 悪い虫は、ちょっとでも金の臭いがすると、すぐに寄ってくるからな。 やってくれるかな?」

「いいよ、任しておきなよ。 引退してこの歳になると、仕事なんてないからね」


 獣人の寿命は人種より短くて、40~45歳ぐらいらしい。 そのかわり、見た目殆ど歳を取ったようには見えない。

 ニニはニムの歳からすると、35歳前後だろう。 人間ならまだまだ働き盛りだが、獣人から見れば、初老ともいえる。


 そんな事を考えながら、ニニをじっと見ていると、彼女が話し掛けてきた。


「真学師様は、ガキを3人も生んだ、オバサンに興味があるのかい?」

「いやぁ、ニムも美人だけど、ニニも美人だなと思ってさ」

「あらやだ、もう本当に? ちょっと期待しちゃうんだけど」

 そう言って、ニニは俺にすり寄ってきた。

 彼女の背中に手を回し、尻尾を撫でて、毛並みを指でなぞる。


「こらぁ! 姉ちゃんだけじゃなくて、母ちゃんまでたぶらかすつもりか~!」

 ニケが俺に小キックを入れてきた。

「ハハ、冗談だよ冗談」


 しかし、ちょっと長めの毛並みがあるので、解らなかったが、まるで筋肉の鎧だ。

 このままベアハッグ(鯖折り)されたら、確実に背骨が折れる予感がする。

 それに、俺がでた、尻尾が凄い。


「ニムの尻尾は鞭みたいだったけど、ニニの尻尾はまるで鋼だな」

「さすが、真学師様は目のつけどころが違うねぇ。 獣人同士、強さを見るにはまず尻尾を見ろって言われるのさ」

「尻尾で強さが解るのかい?」

「ああ、背中、脚、尻、全部の強さが尻尾に出るからねぇ」

「じゃあ、ニニは相当強いんだな」

「いやぁ、大分体力が落ちて、息が続かなくなったよ。 やっぱり、歳だね」

「それじゃ、ニケの強さはどうかな……? ふにゃふにゃだな」

 ニケを捕まえて、尻尾を触ってみるが、やっぱりまだ子供だ。


「や、ヤメロ~、このスケコマシ真学師!」

 ニケは尻尾を持って、俺から逃げ回っている。

 

「これ! 真学師様になんて事言うのさ! 真学師様のお気に入りになれれば、一生食うに困らないって言うのに」

「一生ってのはちょっと言い過ぎかもな。 でも、傭兵の仕事ってのは大変かい?」

「そりゃ、余程の戦闘バカじゃない限り、金があればあんな仕事は誰もやらないよ。 今日食う飯にも困って……ああ、思い出しちまった……」

「悪い、悪い。 ん?」

 いままで気が付かなかったが、ニニの足元に小さい尻尾が見えている。 それとも、今の会話の最中に、忍んできたのだろうか。


「なんだ?」 

 ニニの足元に回り込んでみると、小さな獣人の女の子がニニの脚にしがみついている。


 なに? この可愛い生き物。 ヤバすぎだ。 6~7歳ぐらいかな?

「お名前は?」

 女の子に問いかけてみる。


「ニア……」

「ニアちゃんか、甘いの食べるかな?」

 ニアに飴玉を差し出すと、俺の手からパッととり、口の中へ放り込んだ。

 

 おおっ、なんか凄い早業だったぞ。 目にも留まらぬ早業とはこの事か!

 獲物を取るみたいな動作だった。


 そのまま飴玉を舐めて笑顔のニアの手をとると、彼女が逃げる素振りを見せないので、そのまま抱きあげた。

 うぉ~、モフモフだよ。

 可愛過ぎる。

 元世界でこんな事をしたら、即通報だ。 でも、異世界ならOK……でもないが、とりあえずはOK。


「ニアちゃん、知らない人から、美味しいものをあげるからと言われても、ついて行っちゃダメだぞ」

「うん」

「あ~、可愛い、このまま持って帰っちゃダメかな?」

「あと5年ほど、待っていただけると良いんですけどね~」 

 ニニのマジレスだ。 いや、マジレスされても困るんだけど……。


「あ~! この変態真学師、妹を離せ! 母ちゃんは、なんでこいつの味方なんだよ」

「バカ言いな! ニムの後にニアまでお城に入れたら、万々歳じゃないか」

「くそ~、母ちゃんは騙されてるんだ」 


「なんて事言うんだ。 おっ、ニアちゃんの尻尾は、ニケより力強いぞ! こりゃ、もうニケより強いって事か?」

「うるせぇ~!」 

 ニアを抱っこしたままの俺を追い回すニケ。 

 ニアの毛並みを堪能たんのうした後に、ニアを静かに降ろした。


「ふう、あまりに可愛過ぎて、危うく人の道を踏み外すところだったぜ」

「踏み外しても、よござんしたのに」

「ハハハ……」 

 俺は笑ってるが、母親のニニは真顔だ。

 この世界、女性の地位はちょっと低い。

 手っとり早くとなると、やはり金持ちの男を捕まえるのが早道って事で、適当な男を見つけると、女性からの積極的アタックが凄い。

 やったらこっちのもんみたいな感じもあるから、迂闊に手を出せない。

 まあ、重婚もありなので、経済力があればそれも問題はないのだが……。


 とりあえず、俺は魔法と物を作りたいだけなんだよなぁ。

 もちろん、男だから女性と仲良くしたいのは、山々なのだけど。

 


 元傭兵だったというニニに、竹製の防具の事を聞いてみたが、帝国との戦いでそんなのを見た事があるそうだ。

 ただ、あくまで鉄製の防具を買えない下兵の間に合わせの防具という感じだったらしい。


「なんだ、竹製防具は、案外と枯れた技術だったか。 それじゃ発明にならないなぁ」

 

 残念。


 俺はマリアさんに、何かあれば俺に連絡をしてくれと、お城のセキュリティー用の魔石を一個渡した。

 魔石を見せれば、すぐに取り次いでもらえるからな。


 ------◇◇◇------


 孤児院の建物も綺麗になって、護衛も雇って、順風満帆、順風満帆と思ったら、早速どこかのチンピラがチョッカイを出してきたらしい。


 マリアさんと子供達に撃退された後に、人数を増やしてやって来たところ――丁度ニアの母親のニニが来ていて、瞬殺だったらしい。

 まあ、瞬殺と言っても、殺してはないのだけど。

 殺しちゃ、誰に頼まれたか尋問できないからな。 

 人数を増やしたりして、何回もくるって事はバックがいるって事だ。

 ニニさんがチンピラを一人捕まえてあると、マリアさんから連絡を受けたので、孤児院へ様子を見にいく事にした。

 

「ニニ、そいつかい捕まえたのは」

 若い男が縛り上げられて、木の下に転がされていた。


「ああ、こんな連中雇って何をしようって言うんだか、全然解らないんだけど」

「ん~、俺はちょっと心当たりがあるんだがなぁ。 おい、お前! 誰に頼まれた」

「そんなの言うもんかよ!」

「お、元気良いな。 ニニ、こいつ貰っていいかな。 魔法の実験台に丁度良い」

「おい! ちょっと魔法ってなんだよ」

「なんだ、あんた知らないのかい? その方は真学師様だよ」

 ニニが、何も知らない若いチンピラをたしなめるように言う。


「待ってくれ! 真学師なんて聞いてねぇよ。 そんなのがいるなら、こんな仕事は受けなかったぜ!」

「なんだ、あんたそんな事も知らないで、仕事を受けたのかい? ここの孤児院は真学師様の肩入れなんだよ」

「おい! 待ってくれ、勘弁してくれ。 そんなつもりはなかったんだよ」

 チンピラは意味不明な弁解をし始めた。

 

「雇い主をサラっと言えば、見逃してやるから、ほとぼり冷めるまでファルキシムにでも逃げりゃいい」

 こんな下っ端を痛めつけてもしょうがない俺は、そんな提案をしてみた。


「ホントか?」

「ああ、約束する」


 このチンピラの雇い主は、ダルゴムという奴で、最近目立ってきた無頼の集団のかしららしい。

 日本風に言えば、ダルゴム一家だが、この世界でもそんな風な表現をするようだ。

 しかし、ダルゴムという無頼者の名前が出て、ニニが反応した。

 

「くそ、あいつらか」

「ニニも知ってるのか?」

「ああ、獣人街との境界線の家を占拠して、そこを根城にしている。 獣人への嫌がらせも結構やってて、色々とイザコザが起きてる」

 獣人街は、西の外れだ。 お城から見ると北西方向になる。


「まったく、こんな孤児院にチョッカイ出して、何をしようってんだい?」

「平民が学校へ行って知恵をつけると、身分の高い人の仕事を取られるとか考える奴がいるんだよ」

「そんなもんかね?」

「仕事するのに、身分は関係ないはずなのにな。 傭兵なら、身分なんて関係なく、強い奴が勝つだろ?」

「その通りさ。 まったくおかしなもんだね」

 ニニも手を広げて、あきれ顔だ。


「ニニ、俺は殿下に報告しなきゃイカン。 もし、ダルゴム一家を詮議せんぎする事になったら協力してくれるか?」

「もちろんさ! やるのかい?! やるんだろ?!」

 もうニニは、る気満々だ。


「ちょっと、待て。 あくまで詮議だぞ」

「真学師様が一緒なら、大手を振ってあいつらぶっ殺せるじゃん! もう久々に腕がなるぜぇ」

「おいおい……」

 ダメだ、話が通じん。


 まあ、協力してくれる事は確かなので、こんな心強い味方はいない。


 ------◇◇◇------


 孤児院の事を報告するために、殿下の執務室を訪れた。

 今日も、関係書類の処理業務に追われている。


「ショウか、如何いかがした」

「それが、先日公立学校の話が出た孤児院へ、早速嫌がらせが始まりまして」

「何? もうか」 

 殿下は椅子から立ちあがった。


「ということは、殿下の見立ても、犯人は公立学校反対派だと?」

「まあ、そうだろう。 まったく解りやすいやつらだ。 それとも、妾を侮っておるのか?」

「殿下はまだお若いですからねぇ。 可能性はございますね」

「くそっ……」

 そう言って、殿下はクルリと背中を向けてしまった。 殿下は若い。 若いゆえに、侮る貴族たちもいるのだろう。


「殿下、そのようなお言葉遣いは……」

「黙れ! ……よし、全て其方に任せる」

「私に任せていただくという事は、どのような結果になっても構わないという事でよろしいですか?」

「無論だ。 だが、面倒だからと言って、周囲を大魔法で焼き払うとかは、するでないぞ」

「誰がするんですか、そんな事を」

「ルビア殿だ……」


 以前、師匠に似たような事件の詮議を頼んだら、面倒になった師匠が、大魔法で辺り一面を焼き払おうとしたらしい。


 師匠……。

 

 ステラさんは、わざと騒ぎを大きくして、ゲラゲラと笑ってそうだしなぁ。

 この手の処理をする人材がいなくて、俺にお鉢が回ってきてるのか。

 まあ、これも仕事だ。


「殿下、これについて、一つお願いがございます」

「なんだ」

「詮議の際、戦力としてニムをお貸しいただきたい」

「そんな事か。 好きにするがよい」

かしこまりました。 殿下の御心のままに」


 ------◇◇◇------


 後日、孤児院へ集まり打ち合わせをする。

 面子は、俺とマリアさん、ニニとニムだ。

 俺は竹製の防具を装備して完全武装。 ちょっと頼りない気もするが、某少佐が言ってるように、当たらなければどうという事はないのだ。

 ニニもニムも黒い革製の鎧を着て、武装をしている。


「また、この鎧を着る事になるなんて、思わなかったよ」

 ニニが自分の鎧姿を確認しながら、そんな事を言う。


「しかし、ニムは良いのか? 気が進まないなら、断っても良いんだぞ?」

「なんでにゃ? もう楽しみで、昨日は寝られなかったにゃ!」 


 遠足かよ……。


「そうだよなぁニム、好きな男と一緒に戦えるなんて、戦士冥利、女冥利に尽きるってもんだよなぁ。 あたしも久々に濡れてきちまったよ」

 いやいや、ちょっと生生しくてイカン。 っていうか、戦うの前提なのは勘弁してくれ。


「あくまで詮議、取り調べだからな、俺が手を出すまで、やるんじゃないぞ」

「「解ってるって」にゃ!」


 本当に大丈夫なんだろうな。

 マリアさんにも、彼女の精神感応を使って手伝ってもらう事にした。

 彼女の精神感応はかなり凄いからな、魔法じゃないからカウンター出来ないし。 

 これを生かさない手は無い。

 マリアさんには、以前俺がステラさんから貰った白いローブを被ってもらい、隠れて現場を窺っててもらう。

 危ないところに踏み込むので――彼女に『危なくなったら逃げてくれ』 と言い聞かせるが、意外な返答を貰う。

 話を聞くと、相手が1人~2人なら、精神感応を使い相手のトラウマにアクセスしたり、フラッシュバックを起こさせたりと、精神的なダメージを与える事も出来るらしい。


 なにそれこわい。

 

 出陣に先駆け、俺の使う武器と魔法の説明をする。 いきなり使ってびっくりしたり巻き込まれるとまずいからな。

 

「これが閃光玉だ。 使うと光を出して、目眩めくらましをする。 使うときは、俺が『フラッシュ!』 って唱えるから。 そうしたら、目を瞑るか、背中を向けてくれ」


 試しに、閃光玉フラッシュバンを投げてみることにした。


「いいか、フラッシュ!」

 投げると、2~3秒、パッと明るい光を放つ玉――ニニは掌をかざして、光をさえぎっている。


「お、結構明るいねぇ」 

「そうだ、部屋の中とかは暗いから、一瞬でも動きを止める効果があると思う」


 準備万端、いっちょ行ってみますか。

 

「フフフ……腕が鳴るにゃ~」

 完全に戦闘モードになっている獣人親子を先頭に、そのダルゴム一家まで案内してもらう。

 マリアさんは白いローブを深く被って、俺の後ろをついてきているが――なんでマリアさんが一緒なのかは、この獣人親子は不思議には思ってないらしい。

 獣人ってのはそこら辺には頭が回らないみたいだ。

 『もうひたすらに前しか見ない』 この言葉が獣人の行動原理を表している。


 それはそうと、穏便に済めばいいが、まあ無理だろうなぁ……。

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