42話 小銭も積もればテルル山
工作師見習いになったラルクは、毎日工房へ通ってきて、仕事を仕込まれている。
慣れない仕事なので、最初は中々に大変そうだが、基本的に物を作るのが好きなようなので、工作師は天職なのかもしれない。
ラルクの両親へ挨拶へ行ったラジルさんの話によると、両親は大変喜んでいたそうだ。
最初は、何かの冗談か詐欺かと思ったらしいが、そんなに心配ならとお城まで案内されて、大変恐縮していたらしい。
ラルクの両親と話をしたラジルさんも、彼の両親はしっかりした人物だという感想を持ったと言っていた。
そんなラルクだが、暇を見て俺の工房へもちょくちょく顔を出すようになった。
俺の作る物や、俺の持っている工作機械に興味があるようで、俺の持っていたマルチツールとかを興味深く観察した結果、もっと凄い物があると思ったのかもしれない。
「俺の工房にある物も、工作師工房にある物も基本的にはそんなに変わらないぞ?」
「いいえ、凄く興味があります。 こんなに凄い工作機械はみた事がありませんし……、コレはなんですか?」
ラルクは、旋盤に取り付けている鏡を使った測定器具に興味を持ったようだ。
「コレは、旋盤に銜えた材料の振れを計る器具だよ。 この鏡に光を当てると、壁に光が反射するだろ?」
旋盤に円筒形の材料を銜えて、測定器をセットして、円筒を回すと壁に映った光が動く。
「光が動くって事は、円筒の中心が振れてるって事さ。 そして、こうやって調整をすると、光の振れが無くなる」
「――という事は、振れが無くなったって事ですね」
「ご明察」
工作師の職人達は、勘でやっているが、目に見えるというのは意外と大事だ。
パッと目で見て振れてると解るのは大きい。
人間の感覚のみだと、体調に左右されたりする事もあるしな。
う~ん、やっぱりラルクは頭の回転が速いな。 これで魔法が使えれば真学師にもなれるんじゃね?
そう思い、ラルクに簡単な燃焼の理を教えてみたが、すぐに理解したようだ。
ならばと――彼は魔法にも興味有り有りのようだったので、理の魔法の概念も教えて、魔法を試させてみたが発動しなかった。
残念。
師匠から魔法を習った時に聞いた話だと――理を理解していれば、魔法が発動するみたいな事を言っていたが……。
やはり他のファクターがあるようだ。
そりゃ、理を理解しただけで魔法が使えるなら、日本人が来れば全員魔法使いだからな。
師匠は物心ついた時から魔法が使えていたようなので、それが当たり前だと思っているのかもしれないなぁ。
しかしそれなら、何故俺は魔法が使えるのであろうか?
これは、まだ謎だ。
俺の工房で、ラルクに工作機械の説明を続けている。
「あと、俺の旋盤で変わってるのは自動送り装置かね」
「それは?」
ラルクに旋盤の自動送り装置のギアをセットして、動かしてみせた。
「こうやってギアをセットすると、旋盤の主軸と移動台が連動するんだよ。 これを使ってネジなどを正確に刻む事ができる」
俺は、旋盤へ銜えたままの材料を4回ほど送って、ネジを刻んでみせる。
「この装置の良いところは、これで作ったネジはみんな同じ形になるんだよ。 つまり、どのネジを持ってきても使えるって事」
「凄い!」
この世界の機械は、全部一品もので、故障したり壊れたからといって、別の機械の部品を持ってきて取り付けるとかいう事はできない。
「個人的には、この世界の長さや重さの単位を全部統一して、誰が作った機械でも部品でもどこへ持っていっても使えるようにしたいね」
「素晴らしいです!」
「でも、こんな事を工作師工房で演説したりするなよ?」
「どうしてですか? 素晴らしい事なのに」
「工作師工房の責任者はラジルさんで、ラジルさんにはラジルさんの考えがあるからさ。 君はまだ見習いだし、若い。 若輩が波風立てるような事を言うのを嫌う人もいると思うしな」
「でも」
「工作師工房は沢山の人が働いているし、工作師以外にも沢山の職人がいる。 そう簡単には変えられないんだよ。 せっかくお城勤めになったのに、騒ぎを起こしたんじゃ、君の両親だって悲しむぞ?」
そう、元世界でもメートル法なんて国際規格をせっかく作ったのに、インチとかフィートとかポンドとかわけ解らん単位を頑に使い続ける国もあったしな。
バイクはミリ規格、バイクでもハーレはインチ規格、自転車はインチ規格とかわけ解らん。
ホームセンターへいっても、ミリネジとインチネジが普通に売ってるし、1/2インチとか3/8インチとか5/16インチとかなんなんだよ。
――とまぁ、こんな異世界で愚痴を言っても詮無い事だが。
「はい……」
俺に窘められてラルクは非常に残念そうだが、賢い子だ。 そんなに無茶はせんだろう。
「まあ、一番簡単なのは、君が親方になれば、好き放題できるぞ」
俺は笑ってみせたのだが、ラルクは必死に否定した。
「そんなの無理です!」
「無理かどうかはやってみないとな。 親方は無理でも、君がラジルさんの右腕ぐらいになれば、ラジルさんも話を聞いてくれるかもしれないぞ」
この世界も元世界も、ここら辺はあまり変わりは無い。
悲しいけどこれが現実なのよね ってやつだ。
組織として沢山の人が動いている、そう簡単には世の中は変えられない。
どうしてもやりたければ、権力を持つ事だ。
でも、殿下の鶴の一声があったとしても、何千年もやってきてる慣習は簡単には変わらんだろうなぁ……。
「はは、俺の戯言は話半分に聞いて、頭の片隅にでも置いててくれ。 適当で嘘つきだって殿下にいつも言われてるしな」
暗い工房から外に出て、玄関の前でラルクと工作談義の花を咲かせていると、殿下がやってきた。
「ショウ! 其方に問いたい事があるのだが?」
「ライラ殿下にはご機嫌麗しく……」
「あまり麗しくはないぞ?」
一応、ラルクがいるので、形式ばった挨拶をするのだが――ヤバい、殿下のご機嫌が斜めだ。
俺の隣の、ラルクも片膝をついて、頭を垂れた。
「この子は、今度工作師の見習いとなったラルクです」
「こ、国王陛下におかれましては……」
――とラルクが肩苦しい挨拶をしようとしたところで殿下は止めた。
「この身はまだ国王ではないが……。 おお、其方がそうか……ラジルから聞いておるぞ、期待しておる故仕事に励むように」
「ありがたき幸せ……」
ラルクは緊張してガチガチだ。 一応、ラジルさんから、基本的な礼儀作法をたたき込まれたのだろう。
「それよりもだ! 其方に聞きたい事がある!」
「なんでございましょう?」
「近頃街で、妙な玩具が流行っているそうではないか」
「妙と申しますと?」
「クルクルと回って空を飛ぶ玩具らしい。 これの出所を其方は知らぬか? 妾はそんな珍妙な物を作れるという者を一人しか知らぬのだが?」
ああ、竹とんぼだ。 こりゃ、マズったな――なんとか誤魔化さないと……。
「ああ、わかりました。 アレを作ったのは、そこにいるラルクです」
「其方が?」
殿下は驚いて、ラルクの方を見たが、ラルクはまだ膝をついたままだ。
「おそれ多くも申し上げます。 確かに僕が作りました物が元になっていると思いますが、理はショウ様から教えていただきました」
「ほう? ショウ?」
「あ~なんだよ、せっかく振ったんだから、自分の手柄にすれば良いのに」
「親方から、良いこと悪いこと、包み隠さず全て報告するように言われました。 嘘の報告は国を滅ぼす元になると」
「うむ! その通りだな。 ラジルや其方のような忠臣がいるのを、妾は誇りに思う」
「こ、光栄の至りでございます……」
ラルクの姿勢に殿下はお褒めの言葉を授けたのだが、矛先が俺に向かってきた。
「それに引き換えこの者は……どういう事か釈明するつもりはあるのか?」
「あ~実は、街の子供達が珍しい木を知っているというので、私の考えた玩具と取引したのでございます。 その木から取れる樹脂は、必ずや国の役に立つと思いましたので」
俺は中庭に植えたゴムの木モドキの説明をした。
「なるほど、国のためと申すか。 しかし、それでは妾に嘘をついた理由にはなっておらぬの? 正直に報告すればよかったではないか?」
「不忠の誹りを免れませんか」
俺は、腰の剣鉈を鞘ごと取ると、片膝をついて殿下に差し出した。
「その心意気や良し」
「忠誠を誓った殿下に討たれる、この身はすでに覚悟完了。 生れて二十余年、今日初めて花と咲き、散って逝けるこの身は本懐でございます」
跪く俺、剣鉈を掲げる殿下の寸劇にラルクはオロオロしている。
「よくぞ言うた。 何か言い残す事はあるか?」
「特に……ああっ! アイスクリームとチョコレート並に美味しいお菓子を思いついたような!(思いついたとは言ってない) 殿下に食していただけなくて、残念でございます」
「な! う、うぐ……」
「ああっ! 殿下が今まで食べた事がないような触感のお菓子も思いついたような!(思いついたとは言ってない) 殿下の喜ぶ、満面の笑みが拝見できなくて残念でございます」
「こ……この、悪魔め……」
「とんでもねぇ、あたしゃ悪魔ですよ」
ゴス!
殿下は俺のスネを蹴り上げると、俺の剣鉈を小川へ放り込んだ。
「ちょっと! 何をなさるんですか?」
弁慶の泣きどころを押さえながら苦しんでいた俺は、慌てて、小川に浸かった剣鉈を拾い上げた。
「ひでぇ」
俺は水に浸かった剣鉈に乾燥の魔法を掛けながら言った。
「殿下がお怒りなのは、 『妾が、大陸中の子供達から小銭を巻き上げて、山積みになった小銭の枚数を数える楽しみを奪いおって!』 ですよね」
「なにやら、その言い方には刺があるように聞こえるが」
「滅相もございません。 しかし、子供の玩具の技術などは開示して、人気取り等に利用したほうがよろしいのでは?」
「其方は甘いの」
「甘いですか?」
「甘い。 ショウが作った水糖以上の甘さだ。 よいか、小銭も積もればテルル山だぞ」
テルル山は、ファーレーンからも見える、北方の最高峰だ。
「それは高うございますな。 約8000スタック以上ですか」
「なに? 其方計ったのか?」
「地面に三角を書いて測量をする方法をお教えいたしましたでしょ? アレを縦に使えば、山の高さも計れるのです」
「なるほど……そうではない! 話を逸らしおって!」
「わかりました。 私が殿下の『大陸中の子供達から小銭を巻き上げて、山積みになった小銭の枚数を数える』 楽しみのために、新しい玩具を何か考えればよろしいわけでございますね」
「だから、その言い方には刺があるであろう?!」
殿下は俺に掴みかかってきた。
「すぐに、殿下が満足なさるような物を、何か考えますので」
「うう……数日中にファルキシムのミラルがくる。 それまでに用意しておけ」
殿下は、諦めたように帰ろうとしたが、クルリと振り向いて、ラルクへ言った。
「その男は悪い見本故、手本にするでないぞ!」
殿下が帰った後、まだラルクは尻餅をついている。
「びっくりしました、ホントにショウ様が切られてしまうのかと思いました」
「まあ、そんな事にはならないよ。 金の卵を産む鳥を、生かさず殺さず世話をしていれば、黙って大金持ちになれるんだ。 少しぐらい言うことを聞かないからと言って、〆て焼き鳥にしたら、大損だろ?」
「はあ……」
「殿下とつき合うなら、あれぐらいは普通だよ」
「僕には無理そうです」
「はは、殿下が俺は悪い見本だと言ったろ? 俺は嘘をついたりするから、面倒なだけで、正直に仕事をこなしていればいい」
「わかりました」
ラルクはなにやら複雑な表情だ。 なんだかとんでもないところへ来てしまったのかと、後悔しているのかもしれないが。
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――後日、ファルキシムのミラルが、俺の工房の前へ殿下と共にやってきた。
殿下はこの若い商人を買っているらしい。
玩具という事で興味を持ったのか、ラルクもやってきていた。
俺の顔を見て、ミラルが挨拶をしてくる。
「こんにちは、真学師様。 今日も何か面白い物をみせてくれるようで楽しみでございます」
「お眼鏡に適うと良いのですが」
「いいえ、楽しみにしておりますよ。 真学師様の商品は奇抜な物が多くて、驚きの連続でございますから」
「時に、株式会社の方は順調ですか?」
――祭りの際に提案した、株式会社の事を聞いてみた。
この世界初の株式会社――その顛末がどうなのか興味がある。
「はい、アレも画期的でしたね。 投資を集めやすくなりました」
「投資を集める際に、事業が失敗した時の危険などは説明していますか?」
「もちろんでございます。 後々の処理が面倒になります故」
ふ~む、阿漕な商人ではないみたいだな。
でも、俺は、基本的に商売人はあまり信用していない、金のためなら、親兄弟や国でも売るってのが商人の本質だと思っているからな。
金になるなら、自分の魂だって売る可能性がある。
「ショウ!」
殿下が痺れを切らして、急かしてきた。 機嫌が斜めになる前にやっちまおう。
「子供の玩具という事でしたので、技術も要らず、簡単に作れる物を考えてみました」
タライに皮を張ったリンクを用意して説明を始めた。
「まずは、コマという物でございます。 こうやって、紐を巻いて、回すと」
皮を張ったリンクの上で勢い良く回るコマ。 続いてもう一つ投げ入れた。
殿下とミラルも興味深そうに見ている。
「何個か投げ入れて、喧嘩をさせて遊んだりします。 あ、弾かれましたね。 残った方が勝ちです」
「ほう! なるほど」
「僕も回してみたいです」
ラルクがそう言って回すと、コマが逆さまになって失敗してしまった。
「ラルク、巻き方が反対だな。 その巻き方だと、内側から回さないとダメだ」
殿下とミラルも挑戦しているが、リンクに投げ入れるのが中々難しいらしい。
「続いて剣玉です。 こうやって、皿になっているところへ玉を乗せる遊びですね」
俺は、コツコツコツと連続させて、皿へ乗せてみせる。
「なんだ、簡単そうではないか」
そう言って、殿下が挑むが、一度も乗せられない。
其方、魔法でも使ったのか?! と疑う殿下であるが――無論、使うはずもない。
「僕もやってみたいです」
さすがラルクは、慎重に一番大きい皿を狙うようだ。
「はっ!」
掛け声を共に、剣玉の一番大きな皿に玉が乗ってフラフラするが、なんとか成功させた。
大喜びするラルクの隣で、殿下がぐぬぬ状態になってる。
ラルク、殿下が切れるから、あまりはしゃがないでくれ。
そんな騒ぎを聞きつけて、師匠とステラさんもやってきた。
「あ、ステラ様、お久しぶりでございます」
「よ、ミラルじゃん、儲かってるぅ?」
「ぼちぼちでございます」 「「ハハハハ!」」
一緒に笑うミラルとステラさん。 なんだ、顔見知りか。 ステラさん顔広いなぁ。
「続いて、15パズルです。 これは、ちょっと今日の趣旨に反するかと思いますが、まず数字を読めないとダメで、しかもちょっと難しいので、教養を積んだ大人向けですかね。 こうやって、駒を横に動かして数字を並び換えて遊びます」
これは所謂4×4の15パズルだ。
元世界で売ってるのはプラ製だが、俺のは木製。 駒を並び替えて、カチャカチャとスライドさせてデモンストレーションしていると、ステラさんがやりたいと言い出した。
「私がやるぅ!」
なんだか物凄い真剣な顔をして、カチャカチャとやっている。 ステラさんのこんな真剣顔、初めて見たんですけど。
「このこの! え~? ホントにコレできるの?」
――とか言い出した。
「できますよ」
やりたそうに、ウズウズしながら、その光景を見ていた師匠であったが――。
「ほら、私に貸してご覧なさい」
「うるせぇ! ルビアは黙ってろ」
師匠が横から口を出し始めるとステラさんが食ってかかる――アカン……完全にエキサイトしてる。
頼む、騒ぎを起こさないでほしい……。
「やったぁ! できたァ!」
ガッツポーズを決めるステラさんから、パズルを奪いとって、今度は師匠がカチャカチャやり始めた。
ホントにもう……。
「このように、真学師でもちょっと苦労しますので、完全に大人向けですね。 でも、賢い子供なら解けるはずです」
「真学師様お二人を見ていると、コレは売れるかもしれないな……」
ミラルがボソボソ独り言を言っている。
「ショウ、これでお終いか?」
「いいえ! 今週のびっくりどっきり機械発進! コレです」
――そう言って俺は、水を張ったタライと船の玩具を一つ工房から持ってきた。
「それは船ですか?」
ミラルが、タライを覗き込みながら尋ねてくる。
「そうです。 まずは船から出ている細管に水を入れます」
細い管なので、水を口に含んで、流し込む。
次に、船の中に蝋燭の火を灯して、螺旋になっている管を暖める――水を張ったタライへ船を浮かべると……。
水の上で、玩具の船が動き出した。
「ん? ショウ! 動いておるぞ! 何故動く? 魔法か?」
「いいえ、これは魔法ではございません。 ちゃんとした理で動いております」
タライの中をスイスイと動く船に、ミラルとラルクも仰天している。
コレは、ポンポン船とかいう外燃機関の模型で――俺がガキの頃、爺さんに作ってもらったのが、初見だった。
爺さんがガキの頃は、こんなのが普通にプラモデルと共に売られていたらしい。
ステラさんと師匠もタライを覗き込んでいる。
「ははぁ、細管の中の水を暖めると出ていく、そこへ冷たい水が入ってくるというのを繰り返して動いているのか」
そんなステラさんの分析に、師匠も頷いている。
動く船に合わせて、ステラさんの長い耳がピコピコ動いているのが、ちょっと可愛い。
「巧くできてるなぁ」
「これは、材料費が掛かりますので、結構高価な玩具になってしまいますねぇ。 お金持ちのお子様専用でしょうか」
「ショウ! これを人が乗れるようには出来ないのか?」
殿下がそんな質問をしてくるが――恐らく、これを動力として利用したいのだろう。
だが、ちょっとそれは難しい。
「いいえ、これは人が乗るのには効率が悪すぎます。 帆船とか人力で漕いだ方が速いですよ?」
「そうか……」
殿下は非常に残念そうだ。 何か画期的な機関に見えたのかもしれない。
まあ、外燃機関自体が、初見だろうしなぁ……。
どうせ、外燃機関を作るなら、蒸気機関の方が遥かに効率が良い。
「私の作った玩具の見本は以上であります」
「う~む解った、どれを商品化するかについては、ミラルに一任する」
殿下は口に手を当て、考える人のポーズだ。
「ショウ……、私この15パズルというのが欲しいのだけど……」
――師匠がそんなことを言ってくる。
「私も! 私も!」
「ステラさんもですか、それはミラルさんに見本で渡すので、後で俺が作りますよ。 急ぐなら、そこのラルクに頼む手もありです」
「そうか、では妾はラルクに製作を頼もうかの」
なんだ、殿下も欲しかったのか。
師匠とステラさんにラルクの紹介がまだだったので、彼を紹介してお開きになった。
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結局、試作で出した玩具は全部商品化されたが、どこぞの物好きが人が乗れるポンポン船を作ったらしい。
当然実用品としては役に立たなかったが、物珍しいので、湖で見せ物として使われているようだ。





