表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄処女のリゾンデートル『冬眠除夜』  作者: 囃子原めがね
20/20

閉幕 安眠暁を覚えず

 閉幕  安眠暁を覚えず



 十二月三日の朝が訪れようとしていた。

 夜通し行われた一つの物話が終わり、語り手さえ夢に落ちている未明。

 屏風は、ブルッと震えて、一人目を覚ました。

 自分はソファに寄りかかるかたちで寝ていたようだ。座席では鋭利と銀架が抱き合って寝ていて、やはり苦しそうにしている。稔珠も置物のように動かない。

 屏風は軽い鈍痛のある頭を抱えて、台所にノロノロと移動する。二日酔いは軽くある。身体に残っている倦怠感の多くは、寝不足と筋肉痛が原因だ。

 蛇口を捻り、突き刺すような冷水を喉に落とすと意識がシャッキリした。変な体勢で中途半端な時間寝てしまったこともあるだろう、首や背中が痛む。

 昨日、結局どこまで聞いたんだっけ? チーム結成まで行って、安堵の心地で旅立った覚えがあるが、グダグダの脳でもあったので、はてさて怪しいものだ。

「んー、そうして《金族》が生まれた、か……」

 彼女は、その後のシリオたちの話をしなかった。

 蛇足だと思ってか、気分良く終わらしたかったからか。

 だが確かなのは、現在の浅部に《天楼族》という名の組織も、《深森の騎士》も《魔女の火と釜亭》も存在しないということ。そして、稔珠が今ここにいるという事実が、一つの結末を物語っている気がする。

 稔珠が話さなかった。なら、自分らが知るのはそこまででいいのだろう。

 口をすすいで屏風は身体を起こし、視界の右に人影を引っ掛けた。

 出口のところにボンヤリ立っている一人がいた。

「……ん? もう起きたの、稔珠さん、っ!」

 台所から出ていった屏風は、不意打ちにキスをもらった。

 接吻。口吸い。キス? あれ? これって本当にキスなのかな。いやだって、唇と唇が触れているし、だけどっていうか何でだろう、って待て待てえええ?

 脳内が乱麻し、プスンプスンと蒸気を上げるが、ふと口元が離れた。

 えっへへ~、と得意そうな顔の、聞き慣れた声の彼女。

「へ、へ? 稔珠さん? な、何で俺、あれ? 夢でも見て?」

「屏風くんは~、モテなくて~、気が楽~」

 赤面を押さえるこちらに対し、実行犯は涼しい顔して、ソファに突っ伏している銀架に屈み、ホッペチュー。銀架だけじゃなくて、その隣の鋭利にも、床に転がる鼎にも虚呂にもフィリアにも伽藍にもホッペチューを振りまく。

 そしてから、満足げに屏風の前に戻ってくる。

「それじゃ、春までみんなを任せたよ、屏風君」

 その時になって屏風は、彼女の身長が自分とそう変わらないことを知った。

 ポンと肩を叩かれ、すれ違う。酒と醤油の臭いがした。

 振り向いた時にはすでに、どこにも彼女の姿はなかった。

 屏風は叩かれた肩と、とうに冷めている口元をそっと触れた。

「行っちまった、か。おやすみ稔珠さん。くれぐれも、いい夢を」

 時刻は朝の六時。右に左に忙しくも騒がしく、楽しんだ宴会も昨日のこと。

 思い出したように、屏風は仲間を叩き起こしに回る。

 二日酔いや胃潰瘍で苦しんでいる彼らの介錯。部屋の掃除。衣服の洗濯。

 とりあえず今日の仕事は、その辺から始めるとしようか。



 The Metal Maiden's Reason D`etre

 [Sleeping Bell]           ……FIN   


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ