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第2話 覚醒

4月19日

城南大学

「KEEP OUT 」のテープが張られ、物騒な雰囲気が立ち込めている。

そこの校門の前で寝ているサラリーマンがいた。

「おい君!起きなさい!」

そのサラリーマンに警官が声をかけた。

「…ん、ここどこだよ…?」

寝ぼけ顔で警官に話しかけた若いサラリーマン。

竜胆文目(りんどうあやめ)

名前がアレだが男だ。


城南大学構内

多くの警官が出入りを続けていた。

しかしその中はブルーシートで覆われ、報道機関のヘリからの撮影も禁止されていた。

「おい見てみろ第二発見者。」

1人の鑑識がそばにいた第二発見者、もとい最初に現場に到着した刑事に話しかけた。

「この人間。名前は佐々木忠雄。この前の政権交代まで官僚やってて、その後所在がわからかったんだとさ。そしてこれ…」

「これって、どれなんですか?」

鑑識が佐々木の胸部を刑事に見せた。

「この抉られ方、何か凶器を使った痕跡とかもないのに心臓まで到達している。それに…」

「それに…?」

確かに大野はわかっていた。しかし頭の中には、?としか浮かばない。

「アオミドロのこの部分。胸部の組織の一部が人間のモノじゃないってことがさっき回したとこでわかった。」

「それじゃあ何の組織なんですか?」


「植物…」

「…?」

「このあたりの細胞に細胞壁があった。人間じゃ考えられないだろ…」



「…それで…そう言えば宇多原刑事は?」

刑事は急に話題を変えた。

「…あぁ、あいつだったらどっかいったぞ。」


覆面パトカー車内

「宇多原、お前もそろそろあっちに挨拶しないといかんって思ってな。」

宇多原と係長が「あっち」に向かっていた。

「係長ー!」

と、係長に向かって一声かけた。

「…おぉ!ちょっと頼みたいことがある。関係者の聞き込みに行ってくれないか?」

「いや、係長…」

「十分足りてるだろ。聞き込み担当だって無駄に動員してんだぞ。ま、頼んだ。」

「はぁ…」



仙堂家

テレビのニュースを見て水琴の父は水琴を呼んだ。

「おい水琴。お前通ってる学校で人殺されたらしいぞ。」

「え…」

ニュースのテロップに流れていたのはどこかで見たことした名前だった。

「この人…」

コンコン

ドアをノックする音が聞こえた。

「すいません。警察の者です。」

この事件についてだろう。ありのままのことを話せばいいだろう。

「はい。」

ドアを開けた。

そこには貫禄というものが無さそうな、若めの青年が立っていた。

そう、さっきまで構内で現場検証をしていたあの刑事だ。

「どちらさんですかー!今食器洗ってるところなので。」

母が声をかけた。

「警視庁捜査一課第二係の大野誠です。昨日の事件についてお話ししていただけませんか。」

「あの…」

そこで話さずに、どうぞ中に入って下さい。と、言いたかったが、彼は話し続けた。

「今日は休校になったのでいくらでも話してくださっても構いません…」

「あの…中に入っても良いですよ。」


交番

「だから何だって事情聴取受けなきゃなんないんだよ!」

文目は事情聴取を受けていた。

「ちゃんと話せばいいんだから、昨日は何やってたの?」

「記憶がないって言ってんだよ!」

「どこから?」

警官は馬鹿にするように言った。

「新橋のSL広場。5時くらい。」

「はぁ?あんなとこで何があったんだ!」

「ああもう…」

「てかなんでジャケットの右腕んとこだけボロボロなんだ!」

「あの部長…」

「何だ!」

彼の部下と思われる男から呼ばれた。

「逃げるなよ!絶対逃げるなよ!」

警官がその場を後にした。

「上の方からです。」

「何だって?」



仙堂家

「それで、山木さんって何でその福士教授に呼ばれたかわかりませんか?」

「いやそれは…」

「水琴、ちゃんと話すんだぞ

水琴と大野の話は続いていた。

「うーん、まぁそこそこの情報はいただいたので、そろそろ終わります。では。」

そう言って大野は出て行った。


ドアを閉めた大野の携帯が鳴った。

「はい大野です。宇多原。」

「ホシがだいたい定まった。まず戻ってきてくれ。」

「わかった。」


警視庁捜査一課第二係

大野は早足で戻ってきた。

「大野か、待ってたぞ。では始めるぞ。」

そこには係長と俊哉だけがいた。

まず俊哉、宇多原俊哉が、ここまでの捜査のまとめを始めた。

「まず被害者の山木陽助はアスファルトに上半身を埋められている状態で発見されました。顔面は激しく損傷しており、服装とポケットに入っていたスマートフォンで身元が判明しました。このような不可解な死に方はやはりあの仕業でしかないと思い、私達以外は集めませんでした。」

「アンノウン・スペック…」

アンノウン・スペック。、彼らはこのような不可解な事件を起こす“能力(スペック)”をそう呼んでいた。

「それでその能力を持っていると思われる人物とは?」

その人物とは…

「福士敦成58歳。方法基礎の教授で、佐々木から官僚のパーティーに招待されるなど親交が熱く、さらに、教授の中で唯一連絡が取れないです。」

「じゃあその居場所を特定できるのか?」

係長は宇多原を糾弾した。

「私にいい考えがあります。」


三島商事

昼休みが終わろうとしてた時、文目は課長に遅れてきた理由を話していた。

「うーん…そんな理由でわかるはずもないだろ!というかほんとに覚えてないの?」

「はい…」

「もういい!早く初めて!」

この話を例のOLが聞いていた。

「ねーなんか今日おかしくないあの新人?」

「昨日まではふっっっっっっっっっつーーーーだったけど目立ち始めたんだか目立とうとしてんだかしてないんだか…」


異形の影…

あれは結局なんだったんだ…

人じゃなさそうだったけど人じゃなかったら他の動物とかでもないしモチーフってのはあるかはわからないけどどこか花のような…

「あ、」

PCに綺麗に心の声が打ってあった。

急いでBackSpaceを押した。


仙堂家

水琴は大野が帰った後、自分の部屋でレポートを読み始めた。

我等の思想を実現するため…

このウイルスを製作する…

衝撃的、だった。

このレポートには、恐ろしいものが書いてあったなんて…


新橋駅前SL広場

そして5時。文目はいつも通りいた。

しかし昨日までとは違った好奇心が文目にはあった。

また来たわね…

新橋駅前SL広場

やはりいた。文目はその女に話しかけた。

「おい。お前昨日俺に何した。」

あなたの力を引き出そうとした…でもダメだった…もう一度試したいの、あなたを…

「ううっ…」

激しい痛みが右腕を襲った。

今回は意識があった。






右腕が変わった。


人でない姿に…





警視庁特装開発課

宇多原はある女性に対USSシステムの使用を申請していた。

「テストすらしてないけど、まぁこれがテストって感じで、このカメラ付けといて。」

成瀬結澄

USSシステム。すなわち対アンノウンスペックシステムのプロジェクトチームの一人で、若干23歳ながらもその実力は確かで、そんじょそこらの天才ではなく、「超」がつくほどの天才である。

「で、マニュアル通りに動かなかったら報告しといて。」

「では、ありがとうございます。」



上野こども遊園地

管理人が遊具の点検をしていた。

暗闇の恐怖を忘れようと口笛を吹きながら…

アギャ………

管理人は何かから掴まれ、5mほどの高さまで上がっていた。

そして警官を掴んだ男は言った。

「それでは、この私の『上品な趣味』に付き合ってくれませんか?」

ヒィッ!

警官は頭から思い切り地面に直撃し、まるで鉢植えに植えられているかのようにまっすぐと突き刺さっていた。

オァァァァァァァァァァ!

男の耳に叫び声が入った。

その声の主は文目だった。

しかし違う。

今までの極力表に出さなかった『感情』を、今の文目は思い切り出している。

(いか)る』を爆発させていた。

この時、いったいどのようにして怒ったのか?目の前にいる奴が、人を殺したからか?


この時文目は、「怒る」ことの意味を、忘れていたわけではない。


知らなかったのだ。


「おお昨日の右腕くん。あなたも付き合ってくれませんか?」

昨日?

僅かに残った理性の中で文目はわかった。

昨日の異形の影はアイツだったんだ…

と、いう考えを()めて思い切り飛びかかった。

ウルァァァァァァァァァァァ!


覆面パトカー内

大野と宇多原が乗っていたそのパトカーの前部にはヘルメットのような装備が付いていた。

「これがサーチ機能か。」

大野が物珍しい目で見ている。

「で、どこに?」

「これを見ろ。」

そこに表示されていたのは、

上野こども遊園地

「…?」

「ホシの行動目的が俺にもてんでわからんが、行くぞ。」

宇多原はパトカーを走らせた。


仙堂家

水琴はページを進めた。

これを書いたのはおそらく理系出身の人間か学生だったのだろう。専門用語がびっしりと書かれていた。

そんな中専門用語でなさそうな、不思議な単語が目立っていた。

ウイルスにより人間を一歩越えた存在…

それが…


上野こども遊園地

大野と宇多原がそこに着いた頃、もう決着はついていた。

一人は血を吹き出し倒れ、もう一人はそれを見て立っていた…

大野はその異形の影を見て呟いた。

「人間…なのか?この(ヒト)は…」

この(ヒト)竜胆文目(りんどうあやめ)。名前がアレだが男だ。

この(ヒト)は右腕を異形にしている…


仙堂家

水琴は机の上のレポートを呆然と見つめていた。

その恐ろしいモノを…


僕は何もかもが平穏でまっすぐな人生を送っていました。だけどだんだん曲がっていきそうです。

フラーテル(兄弟)のせいで…


つづく

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