オルテッド・リアランスの生涯
二章のラスボスとして登場したオルテッド・リアランス。彼はかつて、ルイス・バジェットとライバル関係にあった研究者だった。ただ表面上はライバルとはいえ、実際のところはルイスの目も眩むような才能に嫉妬が積み重なるばかりの日々だった。彼はルイスに勝てないとどこかで思いながらも、足掻き続けた。そんなある日、運悪く些細な失態がきっかけで責任を取る形となり、彼は研究機関から追放されてしまう。
実は自身もあらゆる武器に精通した武人であり、兵器開発を得意とした彼は、次の一手として、その方面でのビジネスを画策する。そんな折、圧倒的な力を持つワルターと出会ってしまったのが転機となった。彼はワルターの支援を受けて、エストティアの勢力を二分する内乱を誘発し、双方に兵器を売り出すマッチポンプによって大きな権力と財を築き上げたのである。
彼はそうして築き上げた財の一部を、かつての自分のような恵まれない研究者の援助資金としたり、兵器開発において大量の雇用を生み出した。また、社会的弱者を雇い上げ、兵として訓練させもした。
破滅的快楽者であるワルターの力を利用しながら、裏では蔑み、ただひたすら自らの研究欲と社会発展のために邁進した。潤沢な資金をもって、彼は存分に好きな研究を推し進めた。エストティア内乱によってさらに科学技術は大きく進歩し、それが後のナトゥラやヒュミテの開発にも繋がっていくこととなる。
彼によって苦しんだ者が多い一方で、少なからず救われた者がいたことも確かだった。彼には彼なりの「悪の美学」があったのである。
内乱の最終局面にて、ユナとオルテッドはエストケージにて決戦を繰り広げ、最後はユナが彼の心臓を撃ち抜くことで決着した。
死んだと思われていた彼は、実の所、ごく一時的な復活を遂げたワルターの手によって【逆転】され、蘇らされていた。しかしある程度時間が経っていたためか、身体機能の完全な復活にまでは至らず、肉体を機械化し、脳のみを機体と接続することによって生き延びた。
それから数十年間は、少子化やエネルギー枯渇の問題等で閉塞感に満ちたエストティアの状況を打破すべく、宇宙進出を唱える政治団体の援助に影から乗り出す。地道な援助活動は功を奏し、エストティアは宇宙侵略戦争を始める。
しかし、それが取り返しの付かない失敗であった。行き過ぎた戦争の過熱は誰にも止められなくなり、やがてダイラー星系列を刺激してしまったエストティアは、星が壊滅するほどの徹底的な総攻撃を受けてしまう。
主戦派の仲間内で宇宙戦争の責任を追及された彼は、機械化されているために寿命が長いのをいいことに、システムの維持管理のみを無理やり押し付けられるという形で処罰を受けた。そして、システムが存続する限り逆らうことの出来ないように、再生させたエストケージに幽閉され、身体はシステムに従うようプログラムで縛りつけられてしまう。かつての仲間に裏切られてしまったのだった。
その後、勝手に仲間が足を引っ張り合ったり、しまいにはコールドスリープに失敗して自滅してしまい。ただ一人の生き残りになってしまった彼は、かつてのライバル、ルイスが造り上げたナトゥラが繁栄しては無駄に滅ぼされ、リセットされていく様を、二千年も繰り返し延々と眺め続けることになる。
宇宙要塞エストケージという名の監獄に幽閉され、することもない彼は、母星と自分の運命を滅茶苦茶にしたダイラー星系列へいつか復讐することを生きる目的とした。そして、仮にそんなものを用意したとしても武力の差で焼け石に水だと知りつつも、せめて一矢報いるためにと量産型バラギオンの開発に乗り出す。
ただ、あまりに長い時間を孤独に過ごすうち、彼はすっかり疲れてしまった。復讐すらもはやどうでもよくなり、ただ自由になりたいと願うようになっていた。しかし、組み込まれたプログラムによってシステムの維持管理を強制され、自殺することは出来ない。バラギオンがいる限り、勝手な行動をとることも出来ない。
時は流れ。オリジナルのバラギオンが動き出した隙を見計らって、彼は実に二千年ぶりにやっとエルンティアの空気を味わうことが出来た。
しかし、そこはもはや彼の生きるべき世界ではなかった。かつての彼が愛した世界はそこになかった。既に世界はナトゥラとヒュミテのものだった。
自分に詰め寄るプラトーを前にしたとき、彼は旧時代最後の人間として、ナトゥラとヒュミテの敵であり続けることを選んだ。自らを倒されるべき悪役と定義したのだ。
最期はあくまで旧時代の人間としての矜持を貫いて、あえて致命的な欠点のある消滅兵器を使用し、負けたときは潔く己の手で人生の幕を下ろした。自殺の出来ない彼は、ユウを利用して止めを刺してもらったのである。
最後の最後にかつての自分を知る者と出会い、人間同士での勝負が出来たことは、彼にとっても幸せなことだったのかもしれない。ユウが看取った彼の顔は、どこか安らかであった。




