惑星エラネルについて
【星】
エラネルは恒星コモラを中心に回る第三惑星であり、自転周期および公転周期は地球とほぼ変わらない。大きさや質量も地球に近い。水が主成分の海と酸素および魔素を主成分とする大気を持ち、魔素による光の散乱の影響で星表面の色は淡いエメラルドグリーンである。青い月が一つ衛星として回っている。
【地理】
エラネルにはメソラ大陸、ゾル大陸、ウェーザ大陸と三つの大陸がある。うち魔法先進国が多いのがメソラ大陸であり、主要八カ国を含む三十七の国が栄えている。ゾル大陸には魔法後進国が多く、大陸を越えての通商などはほとんど行われていない。北に位置するウェーザ大陸はそのままでは人類が生きるには過酷な不毛な地であり、未だこの世界の人類が到達していない暗黒大陸である。
サークリスはメソラ大陸の中央部、主要八カ国の一つセントリア共和国の西側に位置する。近隣には林業の町オルクロック、ラシール大平原などがある。セントリア共和国の首都はダンダーマであり、サークリスとは三つほど町を挟んだところにある。
【文化】
魔素を利用した魔法文化が栄えている。魔法を使えば大抵のことが出来てしまうので機械技術の発達は遅れている。地球で言えば中世や近代が微妙に入り混じったような雰囲気である(建物の作りがルネサンス風だったり、電灯があったりなど)カードキーなど時に現代並みのものも存在する。近年は鉄道や車も現れ始めた。
【生物】
概ね地球の生物に姿形は近いが、一部地球には存在しないような魔法生物が存在する。その代表格が龍族であり、大型の龍と小型の竜に分かれる。彼らは龍語と呼ばれる、普通の人間には唸り声などにしか聞こえない独自の言語を話す。
通常の人間の他に、人間と見た目上は見分けが付かないが、長命のネスラと呼ばれる種族がいる。彼らは普段は森の奥で暮らし、決して人里に出ることはない。非力であり、特殊な時空魔法である転移魔法を操り、動物や木々の声を聴くことが出来る。戒律に厳しい閉鎖的な種族であり、掟を破ったものには容赦しない者たちである。
通常の人間とネスラとの間では子を為すことが可能であり、生まれた子は強い気力とネスラの長命、そして転移魔法を兼ね備えたハーフとなる。ただし、その子供はほとんどの動物や木々の声に耳を傾けることが出来ないため、森に嫌われたとされて忌み子の扱いを受ける。
【魔素・魔力・魔法】
エラネルにおいて大気中で窒素の位置の代わりを占めるのが魔素であり、この世界の根幹を為しているものである。万能元素とも呼ばれる魔素は、使用者の思いのままに姿形を変え、さらにはエネルギーとしても利用できる。高度に濃縮した魔素は、エラネルの空の色と同じエメラルドグリーンを示す。
エラネルの生物は個体差はあれど皆魔素を取り入れて利用出来る性質を持っており、この世界で魔力と言えば通常この能力のことを差し、この世界では魔素を利用しての行為を魔法という。十分に魔法を使いこなせる者は、魔法使いと呼ばれ重宝される。
魔素は普段日光などによってエネルギーを蓄えており、この高エネルギーの状態の魔素を活性魔素と呼ぶ。活性魔素だけが魔法に利用することができ、魔法として役目を果たした魔素はエネルギーを失って元の気体に戻る。再び日光などによってエネルギーが溜まれば、魔素は再利用することが出来る。
活性魔素を自らの内に取り入れることはそれだけ自身のエネルギーを上昇させることになり、身体にかなりの負担がかかる。限界を超えて魔素を使用すれば、最悪死に至る。それを避けるため、この世界の生物は、一度魔素を取り入れた後再度それを取り入れるまで時間をおけるように、魔素を取り入れるチャネルを自発的に閉じる生理機構を備えている。
元よりエラネルの生物ではないユウだけは例外であり、原理上常にチャネルを全開にすることが出来る。ただユウの場合は、無意識的に身を守ろうとする本能が働いて、普段はかなり力がセーブされている。魔素チャネルについても例外ではなく、普段は安全に使える範囲で開いている。
魔法では、取り入れた魔素から直接何かものを作り出すこと、および魔素をエネルギーとして利用し、元からそこにあるものを弄ることが出来る。後者の方が魔素を使う量が少ないため、魔力消費は少ない。魔素からものとして何かを作り出した場合は気体に戻らず、そのものとして魔素が固定される場合がある。この場合、一見して魔素から作られたものとそうでないものとは区別が付かないが、魔法使いが見れば見分けが付く。
魔法として使われた魔素を元に戻すことを魔法解除と呼ぶ。魔素を弄って解除するという魔法解除の性質上、元からそこにあるものを弄って使われた魔法の場合は魔法解除をすることが出来ない。例えば、土魔法による拘束を狙う場合、魔素から直接錠を作り出してロックした場合は簡単に魔法解除が出来るが、地面に手を当てて土にある鉄分から錠を作り出した場合は解除が出来ない。そこで拘束を狙うときは後者のやり方がセオリーになっている。
【魔法の発動様式】
惑星エラネルの魔法は魔素魔法と呼ばれ、魔素を直接利用して発動される。ユウが到達した時代を現代とすれば、現代魔法理論の大部分は失われた魔法大国エデルが完成させたとされている。数ある魔法理論の中でも、最高の魔力エネルギー変換効率を誇る。後に、より高度なプログラムを組むことの出来る魔法術式がアーガス・オズバインによって発明される。これを応用して、魔素集積、魔法イメージから発動までを自動化する術式魔法の研究が進んだ。術式魔法の普及により、魔力のない者でも術式さえ描ければ等しく魔法を利用出来るようになり、魔法文明は空前絶後の発展を遂げることになる。
【魔法の八大属性】
火、雷、水、風、土、氷、光、闇。これらを合わせて魔法の八大属性と呼ぶ。実際は水と氷、光と闇は亜種に当たり、本質的な違いはあまりないので、実質六系統と言えなくもない。これに時空魔法を加えて九大属性ということもある。それぞれの系統の魔法には固有の接頭語が付く。対応を以下に示す。
火――ボル
雷――デル
水――ティル
風――ファル
土――ケル
氷――ヒル
光――アール
闇――キル
重力――グランセル
時空――クロル
【魔法大国エデルとロスト・マジック】
かつてラシール大平原の上空には魔法大国エデルが栄えていた。だがそれは、今から三百年以上前にウィルの手によって一夜で滅ぼされてしまった。この際失われた数々の魔法は、ロスト・マジックとして研究及び復元が為されている。ロスト・マジックの二大系統は光魔法と時空魔法であり、これらは対照的な難しさを持つ魔法として研究者の間では知られている。
【究極の時空魔法】
魔法大国エデルでは、究極の時空魔法が研究されていたという。その名も《クロルエンダー》。遥かな時を超えて、過去や未来へ行くことすらも可能であるという。だが、研究が完成する前にエデルは滅びてしまった。




