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噂の動物屋敷  作者: 鵠っち
日常~動物屋敷へ~
7/50

美樹の家にて(3/4) お互いに

 今話タイトルは、「美樹の家にて(3/4) お互いに」です。

 お互いに……、なんなのでしょうか。

 美樹の家に戻ると、ちょうどよく美樹の母が出迎えてくれた。

「未来くん、ご飯を食べていかない? お家にはもう連絡してあるから」

「ありがとうお母さん。じゃあ、お言葉に甘えて」

「母さん、相変わらずやることが速いわね」

「ありがとう美樹ちゃん。そんなに褒めてくれるのなら、お母さん、これからも頑張っちゃう!」

「母さん。そこは、褒めてくれるならじゃなくて、喜んでもらえるなら、って言うところじゃない?」

 心なしか、美樹の声はいつもより嬉しそうである。

「いいじゃないか、美樹。そんな細かいことは」

「未来也くんが言うなら……仕方ないか。で、今日のお夕飯はなに?」

「美樹ちゃんと未来くんの好物の、シチューを作ってみましたー」

 二人の好物は、森家ではシチュー、加古家ではカレーということになっている。これは、美樹の母の得意な料理と、未来也の母の得意な料理である。この二人の共通点は市販のルーを使わないことである。

「ごちそうさま。今日もおいしかったです」

 食事が終わってしばらく談笑していると、美樹の母は思い出したように話題を変えた。

「そうだ、未来くん。今日は泊まっていかない? さっきお夕食を、って電話したときに一緒に話しておいたから」

「そういうことなら、お言葉に甘えて。一晩よろしくな、美樹」

「全然問題ないわ、未来也くん。ええと、未来也くんの着替えも用意しておかないと」

 美樹は顔を赤くして、なんてことはもちろんなく、慌てることもない。いつも通りである。

「それじゃあ未来也くん、部屋に戻って用意しなきゃ」

「お風呂が沸いたら呼びに行きますからね」

「ではお母さん。のちほど」

 二人がダイニングを後にしたのを確認して、美樹の母は呟く。

「なんであの二人、付き合ってるとかないのかしら……。気にしているのは親だけだっていうの?」

 こんなことを聞かれたら二人に嫌われるだろう、と根拠のない確信があった。


「あら、お風呂沸いてる。……そういえばさっきスイッチ入れたんだっけ」

 先にお風呂の用意をしていたのをすっかり忘れていた美樹の母は、すぐに二人を呼びに行った。

「あら、洗濯して縮んだのかしら?」

 戸を開けると、下着姿の未来也がいた。どうやら服が合わないようだ。

「この間はぴったりだったからな」

 服が縮んだのではなく、数ヶ月来ない間に背が伸びたからである。

「お風呂入れるわよ……って、どうしたの、未来くん?」

「あ、お母さん。なんだか服が合わなくなってしまったみたいで」

「うーん……、背が伸びた? ちょっときつそうねぇ……」

 新たに取り出した服を着てみると、これも丈が少し足りない。

「まあ、しょうがないから今夜はそれで我慢してちょうだい?」

「はぁ、僕はそのつもりなんですけど……」

「それじゃあカッコ悪いじゃない」

「美樹ちゃん……」「美樹……」

 未来也は我慢できるが、美樹はお気に召さないようだ。

 毎日未来也くんを見ているのに、こんなことにも気づかないなんて……、と自己嫌悪中の美樹だが、毎日見ているからこそ、身長の変化は分かり難いものである。

「もうちょっと着やすそうなやつを自分で探してるから、美樹は先にお風呂に入ってきなよ」

「なに言ってるのよ? 未来也くんも一緒に入るの」

「パーカーかトレーナーを出しておいてあげるから、入ってきちゃいなさい」

「だって。いくよ、未来也くん」

 普通なら止めるところだろうが、二人にとってはこれが普通でありいつも通りである。それを不思議に思わないのは、美樹の母も二人に感覚を狂わさされているのかもしれない。

「未来也くん、背中ながすわ」

「ありがとう。終わったら美樹の背中流すよ」

「ええ。お願い」

 お風呂場で反響しているせいか、美樹の声が弾んで聞こえる。

「……お互いに成長したよな」

「なぁに? 急に」

「今日、悠に昔の話をしたじゃないか。もう、昔みたいにバシャバシャ掛け合いっこできるど、お風呂が広くないよな」

「まぁ、……そうね。昔はもっと広く感じたわね」

 今は二人とも流し終わって、一緒に浴槽に浸かっている。肌が触れ合ったりしているが、気にした様子はない。

 お風呂から上がろうと戸を開けると……、

「わ! ご、ごめんなさい!」

 美樹の母が慌てて脱衣所の戸の外に隠れた。

「母さん、そんなに慌てなくていいのに。……ねえ、未来也くん?」

「そうですよ。そんなことで怪我でもしたらつまらないじゃないですか」

「ふ、二人とも裸んぼさんだし、その、……恥ずかしかったりとか、しないの?」

「今更気にすることじゃないわ」「今更気にすることですか?」

 一緒にお風呂に入ることに疑問はなくても、恥ずかしくないということは不思議だった様だ。やっぱり、ちょっとズレている。

 だが、これは、お互いに魅力的に思っていないというわけではなく、お互いにお互いのことが好きで、その気持ちはきちんと伝え合っている。

「……未来くん、冬物だけど、少し大きめのトレーナーと、こっちはちゃんと夏物の、前に長すぎちゃってたスウェットがあったから。それを着てみてね」

「……あったといいつつズボンしか置いていかないのは、どういうつもりなのかしらね」

「まあ、ズボンがないよりはましかな……」

 同じ裸といっても、美樹と二人っきりのときは気にしないが、上だけでも、よその家をうろつくのはためらわれる未来也である。

 美樹は大急ぎで服を着て、未来也のトレーナーを受け取りに行った。

 ……いくら広い家といえど、ちょっと遅い。何事だろうかと考えていると、戻ってきた美樹は顔が少し赤い。どうやら抗議してきたようだ。表情はスッキリしている。

「ありがとう、美樹。ちょっと冷えたから冬物で正解かな」

「ごめんなさい、そんなつもりじゃ……。母さんに抗議してきて、それで、……」

「分かってるよ。そこまで含めてのありがとう、だから」

 美樹の部屋に戻ると、いつも通りお喋りをして過ごす。傍から見れば、ただのラブラブなカップルに違いない。

「未来也くん、もう遅いから寝ましょう?」

「そうだね。明日は何時くらい?」

「そうね。少し早めに五時くらいでどうかしら?」

「五時ね。分かった。おやすみ、美樹」

「おやすみ、未来也くん」

 お互いの手を取り合い眠りに落ちる二人。深夜、様子を見に来た美樹の母によると、二人の寝顔はとても安心しきったものだったそうだ。

 お風呂のシーンがありますが、未来也と美樹の関係は不純なものではありません。(『約束』の内容に関係しています)

 まあ、ちょっと感覚がおかしいところもあったりしますが……。

 ちなみに、未来也と美樹は唇を重ねることは日常です。


 料理については、ぼくのイメージで書いているので、変なところがあっても『どうせ作り話だから』と笑って流してください。ぼくは、まともに料理ができません。

 そのうち、作中に変な(創作(?))料理が出てきますが、くれぐれも真似しないでください。味と材料(費)の保障はしませんので……。

 実際に作ってみてマズくても、文句は受け付けませんので!(登場したら改めて書きます)


 次話タイトル(予定)は、「美樹の家にて(4/4) デート」です。

 未来也と美樹のデートプランとは……?

 まだ文字数を数えていませんが、今話よりは短いはずです。(今話は2,500字をこえました)2013.3.11 23:40

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