プロローグ(3/3) 音木という家
夕輝の学校の試験が八月な理由は、ぼくの学校の試験が八月、九月だからです。……え? 医大生ではないですよ? 恐れ多いです。
後書きの変換ミス修正 2013.1.28 10:40
本文の読点、三点リーダを入れたり消したり 2013.1.28 10:45
「どうだったよ? 例のお化け屋敷は?」
あれから二日後。友人に聞かれた折に、結構いいところだったと適当に誤魔化し、明日また行ってみるか、と彼は思った。一週間以内の約束だから期限はまだあるが、早く行ったほうが少女も喜んでくれるかな。そう思い、翌日。
あれ、確かこのあたりだったはず……。
この辺りには珍しい大きな屋敷だったので、見間違えるはずもない。では、なぜ見つからないのか。前回は、友人にもらった目撃情報の大雑把な地図でたどり着けた。道すがら辺りにあるものをメモしながら歩いた。なので、たどり着けないはずはないのだが。
「すみません。この辺りに音木さん、というお宅をご存じないでしょうか」
近くの家の前で掃除をしていた主婦に尋ねてみる。
「音木だって! あんたどこから来た!?」
彼は自分が二駅となりの町に住んでいることと、三日前の出来事をかいつまんで話した。
「あんた……、よく無事で……」
その主婦はなにかを思い出したようで顔を青くしている。
「……音木っていう家はね、昔は『動物屋敷』なんて呼ばれていた家さ。あんたは見たんだろ? その家。最後にはデッカイ屋敷に十四、五の娘が一人で住んでいたそうだ。名前は、那子。あんたが見たってのはその子の亡霊かね?
あそこに入って一晩明かそうって人間は、ちょうど一週間すると骨になって見つかるって話さ。
ただね、一人だけ。何年か前に女の子が一人助かっているんだが、その子の名前が『ネコ』って言ったね。音で猫だと思われたのかね? 一緒にいた両親は一週間して骨になって見つかったって話だよ。
だから、……もう近づかないことだね、あんたも」
彼はありがとうございます、とお辞儀をして帰っていった。
――那子ちゃんにか、音子ちゃんにか。あるいは両方か……。気に入られたんだね、少年。
彼が件の主婦に話を聞いた十一日後。彼は肉がついたままの死体となって、警告をくれた主婦に発見された。
数年後。相変わらず動物の声しかやらない納葵音子は、インタビューで一番大切にしているものとして携帯を、それも彼女が小学校に上がるか上がらないかの時に出回った機種を見せ、
「大好きだった……ううん、今でも大好きな、ユーキとの思い出」
と語った。
彼の持ち物のうち、携帯だけは見つかっていない。
お分かりかもしれませんが、音子が持っていた携帯は夕輝の物です。7~8年前の機種が現役って……。夕輝くんは物持ちがいいですね。
前回に引き続き、詳しく書いていませんがこんな設定でした。
・前話(少女の名前)にて夕輝が学生証をもっていた理由……表向きには休学中ということになっています。別の学校(学部)を受けようと受験勉強とかしてました。
・音子が夕輝の携帯を持っている理由……約束から二週間後、夕輝は携帯と交通費だけもって『動物屋敷』を再訪しました。それと、音子は夕輝の家を知りません。
そうそう、夕輝の死体の部分のための『残酷な描写あり』です。
夕輝は過去語りの部分で登場します。
次話からの本編。主役は高校生の男女5人です。ぼくの好きなネタは『名前を間違える』です。読んでいるとちょっと笑えるけど実際にやられるとイラっとしますよね。難しい漢字でも、変な読み方でもないぼくの名前。高校のときに現代社会だったかの先生に睨み返しました。苦笑気味にスルーされましたが……。
微妙なことを言いますが、この『噂の動物屋敷』は、ぼくのなかでは「プロローグ」部分だけでひとつの完結した物語だったりします。
次話からの本編にあたる部分を書き始めたのは、「かけたー! わ~い!」とその後何も書かずにいた約一ヵ月後です。気分的には完全に別作品の予定でしたが、魔が差して『音木』邸を登場させてしまったがために……。自分で楽しむために書き始めたものでしたが、こうして投稿を始めてしまったからにはなんとか形にしたいものです。2013.1.26 17:35