月曜日の放課後
今話タイトルは「月曜日の放課後」です。
悠って実は……。
放課後。
「未来也、呉葉。ちょっといいか?」
悠が唐突に二人を呼び止めた。美樹と夕日は首をかしげている。
「今から?」
先に呉葉が聞いたので、未来也はしばらく黙っておくことにした。
「急ぐ用ではないけど、先に聞いておこうかと思って」
どうやら今から話をしたいらしい。
「分かったわ。未来也くんは?」
「僕も大丈夫だ」
「で、悠くん。どのくらいかかるんだ?」
夕日は呉葉と同じ部に所属している。
「三十分……もっとかかるかもしれない」
「じゃあキミちゃん、私はここで待ってるから」
美樹は自分の部が休みのときは、未来也の部に顔を出している。
「ああ、わかった。じゃあ後で」
未来也と呉葉は、悠に促されて人通りの少ない、昇降口すぐにある職員室のわきの階段の踊り場へ向かった。
「…………なんだけど、興味ないかい?」
悠は自分の住む町の噂話が気になっているようで。二組のいつも何かを提案しているほうに相談してみた。が、実は、いつも色々と決めているのは未来也ではなく美樹で、呉葉ではなく夕日である。
「夕日に相談してみないと……」
「こっちも美樹に聞いてみないとな。それから呉葉、美樹と仲が悪いようだけど、大丈夫なのか?」
未来也はそこが一番心配だったりする。
悠が美樹をこの場に誘わなかったのも、それが心配だったからで、夕日を誘わなかったのは、美樹に疎外感を与えないためである。
「大丈夫よ。ほら、喧嘩するほど仲がいいなんていうじゃない」
「それって、普通は当人奥地から出る言葉ではないと思うんだけど……」
「でも、あたしは美樹ちゃんのこと、嫌いなわけじゃないのよ?」
「だったら何故、口を開くと言い合いになるんだ?」
「う~ん、なんでかしらね?」
どうやら理由はないようだ。若干キャラがかぶっていることに対する無意識下での抵抗だろうか。だとしたら、未来也と夕日も中が悪いはずだが、そんなことはない。
「まあ、なんというか……、決定権はこっちだと思ったのにな」
「あたしは、愛する人をがんじがらめにするようなことはしないわ」
「僕が提案することが多いようにみえるだろうけど、だいたい美樹が決めてる」
見通しの甘い悠であったが、少し疑問が残る。
「あれ? でも、いつもそのまま通ってるよね」
「まあ、美樹が嫌がりそうなことは、まず提案しないからな」
「あたしは夕日が決めてくれないと、まず何もできないわ」
話し合いはとりあえず終わり、教室に戻ってきたのは予定通り三十分後。時間を計っている人がいれば、正確に三十分で戻ってきたことに舌を巻いていただろう。
「お待たせ、二人とも」
「あっ、悠くん。三十分ぴったりだね。さすが」
「え、夕日さん、時計を見ていないのに分かるの?」
美樹と夕日の仲はいたって普通である。よって、話しながら待っていたのだ。そして、美樹は話しているうちに、呉葉とも仲良くできそうだな、と思っていた。実は、夕日によって誘導された結果である。
ちなみに、夕日の位置から時計を見るには振り返らなければならないが、話をしている間に一度も振り返ってはいない。
「僕たちは母さまから体内時計を仕込まれているからね。三時間計っても五秒も狂わないと思うよ?」
「……悠もついでに仕込まれているのか?」
「いや、僕は見よう見まねだよ。昔から知ってるっていっても、あまり会ったことはなかったしね。一時間くらいなら秒単位で計れるけど」
「永井くんも、なんだかすごい特技をもっていたのね……」
未来也くらいしか気づいていないが、美樹は少し落ち込んでいたそうだ。
帰り道。双子。
「そういえば、悠くんの話ってなんだったの?」
「みんなで『音木』の屋敷に行ってみよう、ですって」
「止めたほうがいいんじゃない?」
「ええ、帰ったら母さまに報告ね」
帰り道。未来也と美樹。
「……ということらしいんだ。行ってみないか?」
「面白そうね! 是非行ってみましょう!」
「でも美樹、呉葉も一緒かもしれないけど、大丈夫か?」
「呉葉ちゃんとは、本当は私も仲良くしたいのよ。ちょうどいい機会じゃない」
未来也と美樹は行くことに決めたようだ。
悠って『音木』邸に近いところに住んでいるんですね。
ってことは、あの人の……。
呉葉と夕日のほうは、その人の……。
さて、月曜日ですが、美樹の部活はお休み。活動日は水曜と木曜です。
この学校は、先生の数より部の数が多いので、ローテーションで複数の部を見ています。先生が2つ3つの部の掛け持ちは当たり前です。
前話後書きで「今話は短くなります」と書いた気がしますが、間違いでした。ごめんなさい。
今話は前話と同じくらいの文字数です。
次話、次々話は短いです。(ちゃんとNPC(ノートパソコン)を確認しました)2013.3.22 17:15